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WEB知識ゼロでメディア編集長へ大抜擢(後編)

WEB知識ゼロでメディア編集長へ大抜擢(後編)

ディップ株式会社は、「バイトル」や「はたらこねっと」をはじめとした求人メディアサイトを運営している会社で、メディアを通じて求職者と仕事の出会いをサポートしています。
今回はディップ株式会社で、求人メディアサイト「バイトル」や「はたらこねっと」の編集長を担当されている笠松利旭さんに、ディップ株式会社に入社して営業職から編集長に就任された経緯と現在のお仕事についてお話を伺いました。

ひまに任せて勝手に「はたらこねっと」を分析

WEB知識ゼロでメディア編集長へ大抜擢(後編)_1

― 前回、サッカー留学から帰国後に社会人生活をスタートされた話や、その後のご経歴などについて伺いました。今回は、ディップ株式会社に入社してから現在のお仕事を担当することになった経緯についてお聞かせください。

ディップ入社後、名古屋で営業結果を出して2年後には東京本社に異動になり、業界内で売上TOP50位くらいまでの大手顧客を担当するチームの課長になりました。そのまま5年くらい営業職を務めていたので約7年、営業として働いていました。
営業の仕事はしていましたが、「いつかは企画職をやりたい」という気持ちはずっとありました。とはいえ、企画職が何をするか分かっていなかったですし、企画職になるための勉強も特にしていませんでした。

― 営業職を7年ご経験されてから希望していた企画職を務めることになったのでしょうか?

はい。初めは求人サービスではなく新しい領域のサービスを立ち上げる話があって、1年間限定の立ち上げメンバーとして声をかけてもらいました。半年間はサービスの立ち上げに奔走したのですが、残念ながら途中でサービス自体を取りやめることになってしまいました。担当していたサービスの立ち上げが中止となり、残り半年間暇を持て余していました。

そんなとき、競合他社の「リクナビ派遣」や「en派遣」の売り上げが伸びてきていたのに、「はたらこねっと」はリーマンショック後の悪い状態から脱却できずにいたんです。競合他社との差がどんどん開いてしまって、当時は社内でも「このサイトダメなんじゃないの?」っていうような雰囲気になっていました。でも私は「そんなのおかしい!勝手にサービスをダメにするなよ」って思っていました。
幸いなことに時間は十分あったので、今までの営業経験などを元に「なぜ業績が低迷しているか?」「どうしたら回復させられるのか?」というのを、勝手に分析レポートして社長に提出しました。そういったことをやる部署は、別であったんですけどね。
でも、それがきっかけで「来年からお前がはたらこねっとの編集長だ。」と任命していただくことができました。

WEB初心者に2億の予算!
メンバー3人だけで全面リニューアル

WEB知識ゼロでメディア編集長へ大抜擢(後編)_2

― 念願かなって、企画職へ本格始動となって良かったですね。けれど、いきなり編集長はすごいですね。

当時は嬉しさよりも、WEBの知識が全くなかったので、本当にヤバイと思いました。WEBのことは何も知らないのにいきなり2億もの大金を任せられて、このサービスを生かすも殺すも自分の責任なのだと。当時はメンバーも私を併せて3人しかいませんでした。全面リニューアルをするにあたり、SEO(検索結果でWebサイトがより多くの人に見てもらえるようにする取り組み)施策をどういう風にするか?WEBサイトをどういう構造にするか?など様々な課題と向き合わなければなりませんでしたが、人員不足や知識不足による破綻の危機感がありました。

最初に手を付けたのは競合のサイトを隅から隅まで見る事と、SEO会社を何社も呼びサイトの課題や改善点を提案してもらって、話を聞きながら自分自身も勉強して、約1ヵ月間でSEOのプロになるくらいのつもりでインプットしました。その後、契約したコンサルタントの力や知見を借りながら、細かいページの構成や施策を含めて、3ヶ月くらいで企画をまとめました。そのおかげで、企画職のスキルや知識をものすごい短期間で吸収できました。

― 編集長就任から、目まぐるしく多忙な日々を過ごされていたのですね。他社にも協力を得ながら企画を形にしていったということですが、実際に企画段階から制作に入って、苦労したことはありますか?

制作については社内にデザイナーがいたり、システム開発についても、内部にプロジェクトマネージャーがいたので、自社内のやりとりがメインでした。当時のことで一番印象に残っているのは、リリース日にサイトが止まって1か月くらいリリースが遅延したことでしょうか。元々期間を詰め込み過ぎていたり、新しい思想のシステム開発を初めて取り入れたりしたことが原因で起きたものなんですけど。
当時はリリース1か月前なのに、まだ応募ができない状態で、バグも1,000個以上出ていました。会社のお金を2億も使わせてもらって、「バグがこの状態ってマズイでしょ!」と一人でキレまくって、チームの空気はとても険悪になっていましたね。皆、自分と同じくらい死ぬ気でやっているのか、サービスの生死に責任をもっているのか、サービスの先に居る求職者やクライアントの顔が浮かばないのかって。半年近く毎日会社に泊まり込んで必死に取り組んでいた分、社内のチームに対しても要求は高かったし厳しかったですね。「どうしてそこまでやるのか」って良く言われますが、私は大手企業の書類選考で落とされてから、心のどこかで恐怖感がつねにあるんだと思います。高校を卒業していないので、結果をださないとご飯を食べていけなくなるとか、家族を養えないみたいな。そういった恐怖心が人一倍強いし、元々負けず嫌いなところもあって、成果を残せないと許せないんです。

― リリース前のトラブルはあったものの、1カ月遅れで無事リリースできたということですが、リニューアル後もしばらくは3名体制で運営していたのでしょうか?

いいえ、少しずつ増えて翌年には10名くらいになっていました。現在はバイトルやその他のチームを加えると約60名くらいでしょうか。
どん底を脱して業界№1になる為に、最先端の新しい企画や取組みをおこなっていこうと。お陰様で、今では「はたらこねっと」は業界№1の売上に成長する事ができました(2017年6月度自社調査)。今後は派遣のみでなく、自分のライフスタイルに合わせて様々な雇用形態の仕事が探せる総合サイトとして成長させていく事になっています。また昨年からは「バイトル」と「バイトルNEXT」の編集長も兼任する事になりました。

現在は60数名のメンバーと一緒に「はたらこねっと」と「バイトル」、「バイトルNEXT」を業界一の価値と売上を生み出すサービスに育てていくために努力しています。振り返ってみると、本当にここ数年大変でしたが、駆け足でいろいろな経験ができて良かったと思います。

食べるために働かなければいけない経験から
得た信念

WEB知識ゼロでメディア編集長へ大抜擢(後編)_3

― リニューアルに携わることによって、いろいろな知識や経験を得たということですが、それまでの経験の中で、今の仕事に生きていることはありますか?

元々もって生まれたものかもしれませんが、相手の気持ちがよくわかるところでしょうか(自分で言うの憚るのですが…)。例えば、いまこの人は悲しんでいるなとか、辛いんだなとか、なぜそう感じているかがなんとなくわかるんです。だから営業職時代もそのことを活かして、相手が望んでいることに対して、応える営業が私の営業スタイルでした。それは企画職に異動してからも変わらなくて、SEOとかスマホ最適化とか、グロースハック(サービスの改善をモニタリングしながら成長させる)とかCRM(顧客満足度やロイヤルティの向上を通して、売上の拡大と収益性の向上を目指す経営戦略)とかAI(コンピュータ上などで人間同様の知能を実現させようという試み)とかサイト解析というような手段にとらわれずに、「ユーザーやクライアントにとっての価値って何だっけ?」と常に考えられる事が、私の一番の強みで特徴なのかもしれませんね。
その目的を達成するために、先ほどような様々な手段や専門知識を駆使する。必要だから学ぶ。という流れですね。これは訪問販売時代から変わっていないですね。

― いろいろ大変なこともあったと思いますが、実際担当されてみて感じたこのお仕事の魅力とは何でしょうか?

一言でいえば「人の生活や人生に関わる。」ところでしょうか。私はブラジルから帰国後、社会人としてどう生きていこうかと悩んだり、希望していた大手企業に書類で落とされてチャンスすら与えてもらえないということを経験してきています。だから自分のやりたい仕事よりも、まずは食べていくために仕事探しをしました。
そして「自分の可能性すら試す機会を得られない」という恐怖心を味わいました。こうした経験から同じような状況にある人の「仕事探しの不満や不便を解消したい」とずっと思っていました。

「はたらこねっと」は、派遣の求人をメインにした求人サイトでしたが、本来の求人サイトの役割は、「多様な人」に「多様な働き方・チャンス」を提供することだと考えています。ただ、いくら私個人が「派遣だけではなく働くチャンスを提供したい」と理想論ばかり言っても、何も変わりません。
けれど今は、サービスの知名度や使ってくれている人や企業も増え、様々な提案をさせていただく機会も増えてきています。求職者の為に求人企業を動かし、一緒になってサービスを充実させていく力を得た状態です。この力を活かして本当に世の中を変えていくようなサービスをつくって行くというフェーズになったと。だから今は、すごくやりがいを感じながら仕事をしています。

活発に意見を言いあえる環境を作り
組織力強化を図りたい

WEB知識ゼロでメディア編集長へ大抜擢(後編)_4

― 企画職になってから、仕事内容も環境も変化があったと思いますが、失敗や経験から学んだことはありますか?

業務上だと失敗したことは、あんまりないですね。様々なアイディアや施策を実施してきましたが、勝率7割でいいというスタンスなので3敗することは織り込み済みです。失敗しても必ずそこから学びます。だから自分的には「失敗は無かった」いという事にしています(笑)
でも人をマネージメントするという点では、失敗したり悩んだりしていますね。直観的にこれはうけるとか、やるべきだと思ったら、トップダウン型でバーっと伝えてしまう性分ですし、私自身今まで寝ずに頑張って一気にインプットして成果を出すみたいなやり方をしてきた人間なので、同じように相手に対しても求めてしまうところがあるんです。けれど人数が増えていろいろなタイプの人たちと一緒に仕事をしていくには、今までのやり方ではダメだという壁にぶち当たっています。マネージメントやコーチングなどの本を読み漁ったりして、なんとか自分を変えていきたいと努力しています。

― マネージメントについて勉強中とのことですが、勉強した知識を活かして実践していることはありますか?

怒らないように、なるべく意見を聞くようにしています。「何でそう思うのか」を聞いたり、どんどん意見が言えるような雰囲気になるよう心がけています。結構、ストレス溜まりますし意識しても全然できません(苦笑)。その度に自己嫌悪して家に戻って反省したり悶々としたりしています。ただそれ以上にメンバーに嫌な思いや辛い思いをさせているんだと思います。(こんな事言っているとどんだけ酷い奴だと思われそうですが…)
事業を成長させていく事、組織を成長させていく事、メンバーを成長させていく事、これらと一緒に自分自身が成長したい、変化したいと思って試行錯誤しています。

― サービス領域が広がったり、新しい取り組みもあったりとお忙しそうですが、お休みの日や仕事が終わった後は、どのように過ごされているのでしょうか?

ほとんど家族と一緒に過ごしています。「はたらこねっと」の編集長になったばかりの頃は、本当に忙しくて家族とゆっくり過ごす時間もとれなかったので、今は毎週、小学6年生と4年生の子供たちと一緒に遊びながら家族で過ごしています。テニスをしたり、山に登ったり、今は好きになった釣りをしてみたり。
妻には本当に感謝しています。忙しくて家族と一緒に過ごせなかった期間も文句を言わず、私の仕事のスタンスを理解して応援してくれましたから。妻のおかげで全力で仕事に取り組め、今があるのだと思っています。

企画職は決して特別な仕事ではない!

WEB知識ゼロでメディア編集長へ大抜擢(後編)_5

― お仕事面では、すでに取り組まれていることもあるかと思いますが、仕事やプライベートで今後挑戦してみたいことはありますか?

仕事面では「はたらこねっと」、「バイトル」の更なる成長はもちろん、「バイトルNEXT」も転職サイト№1にしたいと思っています。私自身がディップに入社する前に苦労してきた事、似たような想いや状況にあるたくさんの求職者に本物の価値を提供していきたいですね。あとは競合他社が手をつけていない領域の新しい事業やサービスに注力していきたいですね。
プライベートではテニスを頑張りたいかな。

― テニスは、大会を目指していたりするのでしょうか?

大会とかは全然考えていないですね。テニス、めちゃくちゃ下手なんで。フォームが安定しなくて上手く打てる時との落差が悔しくて、せめてもう少し上手くなりたいなと負けず嫌いの血が騒いできちゃったんです。地元のテニス協会みたいなところで、毎週日曜の午後に家族で習っているんですが、ここは期間限定なのでちゃんと習いにいこうかと。

― それでは最後に、企画職を目指している方々へメッセージをお願いします。

企画職になるためには、「どうせ、特別な知識とかスキルがないと無理なんだよね…」と思っている人が、結構多くいるように感じます。その人たちに声を大にして伝えたいのは、「相手の気持ちに立って考えて、その気持ちに応えるために何が必要であるかを本気で考えられる事が、まず何より大切」だという事です。様々な専門知識はそれらの解決するための手段に過ぎないので。人や、色々な物事に興味を持てる事、好奇心が強い事が大切です。
実現したい事のために知識が必要な場合は、それに向かって真摯に取り組むことさえできれば、極端な話、知識ゼロでもできちゃう仕事だと思います。

― 「解析ツールが使えるようになりたい」、「AIを活用したい」というよりも、「何の為にそれを使うのか、使う必要があるのか」、「誰にどんな価値を提供する為なのか」という目的意識を忘れずに学んでいけることが大切だと思います。相手の気持ちに立って本気で考えてみたい。そんな仕事の姿勢に賛同してもらえる方がいれば、ぜひ一緒に働いてみたいと思っています!

サービス紹介
ディップ株式会社が運営する「はたらこねっと」は、社員・派遣・パートでお仕事探しをする求職者と求人企業を繋ぐお仕事求人サイトです。
ディップの社員・派遣・パートのお仕事情報「はたらこねっと」(http://www.hatarako.net/)

インタビューを終えて

お仕事に真摯に向き合う姿勢や強い推進力がとても印象的でした。営業職から企画職へ異動した裏では、大変なご苦労があったかと思います。しかし求職者に寄り添ったサービスを手がけたいという強い信念が、新しいことに挑戦し続ける原動力になっているように感じました。

「金目鯛の漁師を経験して分かった自分にあう仕事(前編)|ディップ株式会社 笠松利旭」記事を読む