同一労働同一賃金は派遣社員にどう影響する?

同一労働同一賃金は派遣社員にどう影響する?

同一労働同一賃金は、2020年4月には労働者派遣法、2021年4月からはパートタイム・有期雇用労働法で施行されました。正規雇用労働者と、派遣や有期雇用・パートタイム労働者との待遇差の解消をする目的で制定されています。

「同一労働同一賃金という言葉は聞いたことがあるけれど、具体的にどうなるのかわからない」「実際自分の生活にどういう影響があるのか、気になる」などの疑問を持っている方もいらっしゃるはずです。

今回は同一労働同一賃金がどういう仕組みなのか、派遣社員へのメリットなどを紹介します。

同一労働同一賃金とは

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同一労働同一賃金とは、正規雇用労働者・非正規雇用労働者の間で不合理な待遇差の解消を目指す目的で作られた規定です。

同一労働同一賃金がスタートしたのは、2020年4月(労働者派遣法改正)です。その1年後にパートタイム・有期雇用労働法でも改正が行われました。

改正のきっかけをさかのぼると、平成28年12月に正規雇用労働者・非正規雇用労働者の間にある待遇差がどのような場合に不合理とされるのかを表した、「同一労働同一賃金ガイドライン案」を働き方改革委員会に提出したことでした。

その後平成29年の9月に、労働政策審議会から法律案要綱の答申が行われ、これに基づいて作成された法律案が平成30年4月に国会へ、同年の6月には、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が成立したという流れです。

出典:厚生労働省ホームページ 「同一労働同一賃金ガイドライン」

同じ仕事をしていても正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇が異なる場合、企業は労働者に対して「正社員、あるいは派遣だから」という「雇用形態で賃金が異なる」などの抽象的な説明ではなく、職務内容、職務範囲や配置の変更範囲など具体的な説明をする必要があります。

もし自分が派遣社員として働いているなかで、これは不合理な待遇差ではないかと感じた場合は、上記の説明をまず確認してみるといいでしょう。説明を受けた上で実態に照らして確認をし、不合理な実態がある場合は、派遣先企業に相談してみてください。

同一労働同一賃金の仕組み

では、具体的に同一労働同一賃金をどういった形で決めていくのか、紹介します。待遇は「派遣先均等・均衡方式」と労使協定方式、どちらかの方法で決まります。

派遣先均等・均衡方式

こちらは、派遣社員の就業先の正社員と同等の待遇にする方式です。

労使協定方式

こちらは、派遣会社と派遣社員(労働者の過半数で組織される労働組合もしくは過半数労働者代表)の間で、労使協定を締結して待遇を決めるというものです。

先に紹介した派遣先均等・均衡方式と、労使協定との違いは2つで、1つは待遇の決め方の違いです。
派遣先均等・均衡方式が派遣先企業の待遇に合わせるのに対し、労使協定方式は派遣会社が派遣社員の代表もしくは労働組合と決めるという違いがあります。もちろん、労使協定でも、厚生労働省が毎年定めている「同種の業務に従事する一般労働者の賃金」以上の金額にしなければならないと決まっているので、不当に低くなることは少ないと想定されます。

2つ目は、待遇の所属の違いです。派遣先均等・均衡方式の場合、派遣先企業が変われば待遇も変わりますが、労使協定の場合は派遣会社と労使協定を結んでいるため、同種の業務内容であれば派遣先企業が変わっても待遇が変わらないという特徴があります。

派遣社員へのメリット

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では最後に、同一労働同一賃金が派遣社員にもたらすメリットにはどのようなものがあるのか、考えられることを3つ紹介します。

待遇の改善

まずは、現在の待遇が改善される可能性がある点です。同一労働同一賃金が施行されても、幅広く浸透するには時間がかかります。もっとも、同じ仕事をしているのに、正社員よりも派遣社員の待遇が悪い場合などは、同一労働同一賃金が施行されたことによって待遇についての質問がしやすくなっているはずです。

企業内でも同一労働同一賃金の考えが浸透してきているため、「手当が正社員のみ適用になっているが、これは同じ仕事をしている派遣社員も適用になっていいのではないか」「同様の仕事をしているのだから、研修を派遣社員にも受けさせてもいいのではないか」など待遇の改善についても、議論の機会が増えています。

待遇改善に動きやすくなった点は、派遣社員にとって大きなメリットといえるでしょう。

働き方、仕事の選択肢が広がる

同一労働同一賃金は賃金差だけではなく、手当、福利厚生や教育訓練も含まれています。

派遣社員も同様の仕事をしているにも関わらず、例えば派遣社員だけ交通費が支給されないため、通勤時間が短い場所からしか就業先を選べない。派遣社員だけ結婚や出産祝い金がもらえない、派遣社員だけキャリアアップ教育の研修が受けられないなど、同様の仕事をしていても、派遣社員だけ仕事の選択肢が狭まる可能性もありました。さまざまな待遇改善が可能になることによって、働き方や仕事の選択肢を広げられるというメリットがあります。

仕事のモチベーションアップ

正社員と同様の仕事をしていても賃金は大きく異なる、福利厚生・教育訓練も限定的となると、長期的なモチベーションをキープするのが難しい可能性もあります。

しかし、待遇差が改善されることによって、仕事へのモチベーションがアップし、毎日をより楽しく過ごせるようになるかもしれません。

モチベーションが上がれば仕事に対する向上心もさらに生まれてくるため、将来的なキャリアにも良い影響を及ぼしてくれる可能性もあります。

まとめ

同一労働同一賃金は知っていても、仕組みや派遣社員への影響について具体的にイメージできていない方のために、同一労働同一賃金とは何かとその仕組み、派遣社員への影響を紹介しました。

情報を知っておけば、待遇差に疑問を感じたときにも相談しやすくなるため、今回ご紹介した内容をよくおさえておき、安心して働ける環境で自分のキャリアを磨いていきましょう。

ライター:松崎 祥子 福岡県出身<監修者>
法学部卒業後、大手法律事務所、社会保険労務士事務所に勤務。
コンプライアンス対応業務の経験を活かし、総合保険代理店のカスタマーサポートやマーケティングを行う一方、自らも社会保険労務士・行政書士・AFP・宅地建物取引士の資格を取得する。

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