派遣スタッフでも住宅ローンって組めるの? ローンの審査・条件を解説

派遣スタッフでも住宅ローンって組めるの? ローンの審査・条件を解説

派遣スタッフのなかには、住宅ローンやマイカーローンなどの高額なローンって組めるのかな…と気になっている人もいるのではないでしょうか? ローンを組むには条件があり、その条件さえクリアすれば、派遣スタッフでもローンを組むことは可能です。この記事では、住宅ローンとマイカーローンのローン審査項目や、ローンを検討する際にセルフチェックしたい事項についてまとめます。

住宅ローンを組むための審査・条件項目

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一戸建て住宅やマンションを購入するときは、一括購入は難しいため、ほとんどの人が住宅ローンを組むことになります。住宅ローンは、マイカーローンや教育ローン、カードローンなどのローン商品と比べると、金利が低く設定されています。その理由は、ローンを借入れる条件として、購入する住宅が担保になっているからです。万が一、ローンの返済が滞ったとしても、ローンの貸主である金融機関は住宅の権利を差し押さえることができるため、多額の資金を低金利で貸し出すことができるというわけです。

ただし、住宅ローンを利用するには審査をクリアしなくてはなりません。住宅ローンの審査内容は金融機関によって異なり、完全には公開されていませんが、一般的に次の審査項目が設けられています。

年齢

住宅ローンは返済期間が長期にわたるため、借入時の年齢に加え、最終返済時の年齢も重要です。たとえばみずほ銀行の住宅ローン商品には、「満20歳以上71歳未満で、最終ご返済時の年齢が満81歳未満の方」という条件があります(2020年10月現在)。したがって、たとえば35年の返済期間で住宅ローンを組みたいと考えた場合、45歳までには申し込みをしておく必要があります。ローンの返済期間は月々の返済額に直結しますので、ご自身の年齢で返済期間をどれくらい設定できるのかを確認し、返済額の見込みを把握しておくようにしましょう。

職業(職種・勤務年数)

国土交通省が公開した「令和元年度民間住宅ローンの実態に関する調査」(以下「住宅ローン実態調査」)によると、審査項目に「業種」「雇用形態」「勤続年数」を設けている銀行や信用金庫など(以下「金融機関」)の割合は、それぞれ、業種27.1%、雇用形態76.6%、勤続年数95.6%となっています。また、雇用先の規模を審査項目にしている割合は17.9%にとどまっていることから、業種や勤務先自体よりも、働き方が重視されているといえるでしょう。

さらに住宅ローン実態調査の内容を見ると、雇用形態について、「派遣社員は対象外」と回答したのは、全回答数911件のうち518件となっています。金融機関を選べば、派遣スタッフが住宅ローンの審査をクリアすることは十分に可能といえるでしょう。銀行のなかには「健康保険・厚生年金保険の被保険者であり、雇用保険への加入が確認できること」を条件として、正社員と同様に住宅ローンを申し込めるところもあります。

また、勤務年数の条件については、全回答数1,138件のうち、「3年以上」234件、「2年以上」54件、「1年以上」701件となっています。目安として1年以上の勤務年数があると、多くの金融機関の審査をクリアできると考えられます。退職と再就職の間のブランクの扱いなど、金融機関によって勤務年数の審査内容は違いますが、転職したばかりで住宅ローンを申し込める銀行もあります。

年収

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住宅ローン実態調査において審査項目に「年収」を挙げている金融機関の割合は95.7%に上りますが、そのほとんどは年収100万円~200万円以上を条件としています。国税庁の「平成30年分民間給与実態統計調査結果について」を参考にすると、平成30年の「正社員・正職員以外」の年収平均額は179万円ですから、年収の金額としては問題ないと考えられます。

ただし、ローン審査の際に求められる年収は借入金額に応じて変動します。その理由は、年収に占めるすべての借入の年間返済額の割合(総返済負担率)を一定以内に収めることが条件になっているからです。つまり、年収が多いほど借りられるローンが多くなり、年収が低ければ必要な金額を借りられなくなる可能性があります。

注意したいのは、年収によって総返済負担率の条件そのものが厳しくなるケースです。たとえば35年間の固定金利の住宅ローンとして知られる「フラット35」の場合、年収400万円未満の方は「30%以下」、年収400万円以上の方は「35%以下」が総返済負担率の基準となっています。年収300万円の方であれば、年間の返済額を90万円以内に収めなくてはいけません。

現在の借入状況

先ほど説明した総返済負担率は、年収に占める“すべての”借入の年間返済額の割合です。住宅ローン以外に、教育ローンやマイカーローンなどを組んでいた場合、それらの金額も含めて総返済負担率を計算することになります。住宅ローンを申し込む時点で、他に多くの借入があった場合、住宅ローンとして十分な金額を借りられないかもしれません。

また、自宅を買い替える場合、元の自宅にローンが残っていると総返済負担率に影響する点に注意が必要です。ただし、自宅を売却した代金でローンを完済できる見込みがあれば、売却予定の住宅のローン残高は考慮せずに審査をする金融機関もありますので、不動産仲介業者などと相談するようにしましょう。

過去の借入状況(信用情報)

住宅ローンの審査の際、必ずチェックされるのが「信用情報」です。信用情報とは、クレジットやローンの契約や申し込み、支払い情報などに関する情報のことで、クレジット会社やローンを扱う金融機関が顧客の信用を判断するための材料とされています。

信用情報は、複数の信用情報機関に登録されており、ローンの申し込みを受けた銀行などは信用情報機関に照会をおこない、ローン申込者の信用情報を把握することができます。この結果、過去にクレジットの返済が滞った履歴が残っていたりすると、住宅ローンの審査に影響します。

担保評価

住宅ローンは、他のローン商品に比べると、多額かつ長期間にわたって資金を借りることができます。こうしたことが可能になるのは、住宅ローンの対象となる土地や建物を担保とすることができるからです。したがって、住宅ローン審査においては、その物件がローンの金額に見合った担保価値があるのかが問われます。住宅ローン実態調査においても、担保評価を審査項目に挙げている割合は98.2%に上っています。

健康状態

住宅ローンを利用するにあたり、一般的に「団体信用生命保険」への加入が求められます。団体信用生命保険とは、ローンの申込者がローン返済中に死亡した場合に、その時点で残っているローン返済を免除するものです。この団体信用生命保険に加入するには健康状態を告知しなくてはいけません。

健康状態に問題があり、団体信用生命保険に加入できないと、住宅ローンを組めないケースがあるため、住宅ローンは健康なうちに申し込む必要があります。なお、住宅ローン実態調査では、審査項目に「健康状態」を挙げた割合が98.5%で、その大半が「団体信用生命保険加入が必須」と回答しています。

以上の条件をまとめると、住宅ローン審査において重視されるのは職業や年収そのものというわけではなく、返済能力が重視されていると考えられます。派遣スタッフであっても、正社員と同様に審査を受けられる金融機関は少なくありません。

マイカーローンを組むための審査・条件項目

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住宅の次に、大きな買い物になるのがマイカーではないでしょうか。マイカーを一括で購入するのが難しい場合、マイカーローンを利用することになりますが、やはり条件があり、審査をクリアする必要があります。マイカーローンを組む際の一般的な審査項目は次のとおりです。

・職業
・年収
・借入状況(現在と過去の履歴)

このように、マイカーローンの審査項目は住宅ローンの審査項目と重複します。ただ、住宅と比べると借入金額が少なくなる一方、返済期間は10年以内に設定することが一般的なため、月々の返済額によって求められる年収が変わります。基本的には、年収の3割程度がマイカーローンとして借入れることができる金額です。車の価格は車種により差がありますから、借りられる金額を踏まえて車を選ぶようにしましょう。

銀行のマイカーローンの審査が通らない場合、ディーラー経由で資金を借入れるディーラー系ローンも選択肢になります。ディーラー系のローンは銀行より金利が高い傾向にありますが、信販会社を通してローンを組むため、銀行のカーローンよりも審査が通りやすいと考えられます。また、ディーラー系ローンは、車を購入するディーラーを通じて申し込みをするため、ワンストップで手続きができる点もメリットです。

なお、ディーラー型ローンには、「残価設定型」というタイプのものがあります。これは、車を一定期間使用した後の推定下取り額を車両価格から差し引き、残りを分割払いするというものです。車両価格そのものを借りるローンよりも月々の返済額を抑えられますが、返済完了後に継続使用するのか、買い替えや売却をするのかによって、トータルの負担額が変わってきますので、利用する際は慎重に考えたほうがいいでしょう。

派遣スタッフもローンは組める! 勤続年数、年収、現状をチェックしてみよう

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ここまで説明したとおり、派遣スタッフとして働いていても、勤続年数と年収に見合う購入条件の物件や車であればローンを組むことは可能です。あらためて、ローンの審査項目を踏まえて、ローンの申し込みをする際には、次のような点をセルフチェックしておきましょう。

勤続年数と年収で返済能力を自己分析

銀行のサイトのなかには、簡易的なローンのシミュレーションが用意されています。ここに借入金額や返済期間、金利などの情報を入力すると、月々の返済額を簡単に把握できます。また、逆に月々に返済できる金額などを入力して、ローンの借入可能額をシミュレーションできるサイトもあります。こうしたシミュレーションを活用して、購入する物件や車の価格と、年収のバランスが取れているかを見るようにしましょう。

また、金融機関によっては、勤続年数について「1年以内でも申し込み可能」などと条件を明らかにしているところもあります。ご自身が申し込もうとする金融機関の条件を調べ、勤続年数に問題がないかを確認することをお勧めします。

借入予定先の銀行で口座を持つ

銀行によっては、その銀行の口座を持ち、取引実績があることがローン審査に好影響となる場合もあります。住宅ローン実態調査で「申込人との取引状況」を審査項目にしている割合は42.6%と、決して多くはありませんが、審査項目になっている金融機関もあることは認識しておきましょう。

頭金を貯金しておく

ローンを借りるときに頭金を入れることで、金利の負担額が減る効果があります。加えて、頭金を入れると借入金額が減ることから、総返済負担率の面からローン審査に通りやすくなります。ローン審査に不安がある方は、あらかじめ貯金をして、全額の借入ではなく無理のない借入金額を申し込むようにしましょう。ただし、特に自宅の購入時には引っ越しや家具、工事などの費用がかかるものです。こうした支払いに不足することのないように、頭金の金額は慎重に決めるようにしてください。

クレジットやキャッシングを清算する

ローン審査の際に信用情報がチェックされるため、支払いの延滞や破産などの履歴があるとローン審査に落ちる可能性が高くなります。ローンを組もうとしているときにクレジットやキャッシングの残高が残っていたら、返済期日までに確実に清算しておくようにしましょう。

なお、信用情報機関に登録される信用情報は永久に残るものではありません。基本的に5年で履歴が消えるため、過去に延滞などの問題があったとしても、時間を置くことでローンを組めるようになります。ご自身の信用情報は信用情報機関に開示請求をすれば確認できますので、不安のある方は確認したうえでローン審査に臨むといいでしょう。日本にある個人信用情報機関は、「全国銀行個人信用情報センター(KSC)」「株式会社シー・アイ・シー(CIC)」「株式会社日本信用情報機構(JICC)」の3つです。これらの信用情報機関のホームページには、信用情報の開示請求の手順が掲載されています。

審査項目をクリアすれば派遣スタッフもローンを組める!

いかがでしたでしょうか。マイホームやマイカーのために多額のローンを組むには、定められた審査項目をクリアする必要があります。ただし、審査で問われるのは返済能力や過去の借入履歴、現在の借入状況などが主です。派遣スタッフがローンを組む場合は、こうした状況を客観的に把握し、無理なく返済できる条件でローンを申し込むようにしましょう。

ライター:小林義崇(ライター/元国税専門官)
2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、相続税調査や確定申告対応などに従事。2017年にフリーライターに転身。著書に「すみません、金利ってなんですか?」(サンマーク出版)、「確定申告 得なのはどっち?」(河出書房新社)がある。

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