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OKRとは? 仕組みやメリット、成功に導くポイント、MBOやKPIとの違いをわかりやすく紹介

OKRとは? 仕組みやメリット、成功に導くポイント、MBOやKPIとの違いをわかりやすく紹介

OKRは、GoogleやFacebookなどでも導入されている目標設定、管理の方法です。近年注目されているOKRについて、本記事では概要はじめ、仕組み、MBOやKPIとの違い、導入方法、メリット・デメリット、注意点など紹介していきます。

 

OKRとは

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OKRとは、高い目標を達成するための目標管理法のことを指します。

たとえば、「昨年度よりも売り上げをアップさせる」といった大きな目標を設定し、その目標を達成するために必要な「新規取引先を何件獲得する」といった、数値で測定できる成果指標をいくつか設定して管理します。これだけでは従来の目標管理とさほど変わらないように見えるでしょう。しかし、OKRの特徴は、個人と企業の目標をリンクさせて、目標設定→進捗確認→評価の流れを高い頻度でおこなうことにあります。

目標は、達成できる少し上のレベルを設定して挑戦心をかき立てます。そして、企業と従業員が同じ目標に向かって一丸となり、それぞれがやるべきことを明確に意識して、一定のペースで挑戦し続ける。さらに、従来の管理手法よりも高い頻度で、進捗確認・評価をおこなっていくという特徴がOKRにはあります。

 

OKRの仕組み

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OKRは、「Objectives and Key Results」の略で、Objectives は「目標」、KR(Key Results)は「主要な結果」を意味します。
OKRは、まず会社全体の「Objectives(目標)」を設定し、その目標を達成するために必要な「Key Results(主要な結果)」を設定します。

■Objectives(目標)の設定の仕方
Objectivesは、従業員が挑戦したい、達成したいと思えるようなものがよいとされています。また、重要度が高く、それでいてシンプルで覚えやすいものにすることで、会社全体の優先順位を明確にします。また、OKRは目標サイクルが1ヶ月から四半期(3ヶ月)と短いので、フレキシブルな調整・変更が可能です。

■Key Results(主要な結果)の設定の仕方
Key Resultsは、何をすれば目標を達成できるのかを数値で表す定量的な成果指標です。1つのObjectiveに対して3~5つ程度設定します。「新規取引先を10件獲得する」「売り上げを25%アップさせる」「ネットショップのアクセス数を月間3万人に増やす」など具体的な数値を入れると、どのくらい達成したかを計測しやすいでしょう。

ここで重要なのは、Key Resultsは「頑張れば達成できるかもしれない」という、少し上のレベルで設定することです。これにより適度な緊張感とやる気を維持します。そのうえで、60~70%達成すれば成功とみなします。

また、OKRで定める目標は、必ずしも数字である必要はありません。「社会に貢献する新しい事業を生み出す企業になる」など、従業員の意欲を向上させるための目標を設定するケースもあります。

■OKRの例
① Objectives(目標):〇〇業界でシェアNo1になる
Key Results(主要な結果):既存顧客のリピート率◯%、問い合わせ率を10%アップさせる、新商品アイデアの募集

② Objectives(目標):認知度調査におけるNo.1の獲得
Key Results(主要な結果):新たなWebメディアの開設、プロモーションを増やして製品名を浸透させる、ネットショップのアクセス数を月間5万人に増やす

③ Objectives(目標):地球環境の改善を目指し、脱炭素に取り組む
Key Results(主要な結果):再生可能エネルギーの採用60%の達成、自社のカーボンニュートラルを3年以内に実現


 

OKRとMBO、KPIの違い

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目標管理といえば、MBOやKPIのほうがなじみ深い人も多いでしょう。そのため設定や管理方法を混同してしまわないようにOKRとの明確な違いを解説します。

・OKR…Objective and Key Result(目標と主要な結果)
・MBO…Management By Objectives(目標管理)
・KPI…Key Performance Indicator(重要業績評価指標)

OKRとMBOの違い
MBOは「Management By Objective(目標管理)」の略で、半年から1年毎に業績に基づいて従業員を評価する仕組みです。基本的には、上司と部下がコミュニケーションを取りながら目標を設定し、定量的・定性的な基準をもとに評価をします。

OKRよりも目標の達成期間が長く、評価の指標に数値だけでない定性的なものを取り入れたり、会社全体で管理したりするのではなく、あくまで個人で管理する点がOKRとの違いです。

OKRとKPIの違い
KPIは、「Key Performance Indicator(重要業績評価指標)」の略で、最終的な目標を達成するために必要な数値指標です。最終的な目標までにクリアすべき数値を、過去の数値データを参考にして割り出します。

OKRのKey Resultsが60~70%の達成をゴールとしているのに対し、KPIは最終的な目標までの進捗確認が目的なので、100%の達成が求められる現実的な数値を設定します。

OKRの導入方法

では、具体的にどのようにしてOKRを導入していけばよいかを見ていきましょう。
OKRの導入に際しては、企業と個人の目標をリンクさせる必要があるため、以下の順番で設定するのが一般的です。

会社

部署(チーム)

個人

① 企業のOKRを立てる

したがって、まずは、企業全体の事業目標と経営理念を明確にしましょう。そのうえで、会社全体の「Objectives(目標)」を設定し、その目標を達成するために必要な「Key Results(主要な結果)」を設定することを通じて、その企業としてのOKRを立てます。

② 部署(チーム)や部門でのOKRを立てる
次に、各部署(チーム)が、会社のKey Resultsを達成するための目標設定をおこないます。このときも、まずはObjectivesを設定してから、複数のKey Resultを設定します。

③ 従業員個人のOKRを立てる
最後に、従業員一人ひとりが、同じように部署(チーム)のKey Resultを達成するために、Objectivesと複数のKey Resultsを設定します。

この順番で設定することで、会社のObjectivesから従業員のKey Resultが地続きでつながり、個人の成果が会社にどう貢献するかが明確になります。

OKRのメリット

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では、OKRを設定するとどのようなメリットがあるのでしょうか。

■取り組みの優先順位を明確にできる
OKRを設定することによって、企業と各部署(チーム)、各従業員の足並みをそろえることができるため、「どんな目標を追いかければよいのかわからない」と従業員が迷うことなく、企業の理想とする優先順位で事業に取り組むことができるでしょう。

■企業の目標や事業の方向性を共有できる
OKRは、会社、部署(チーム)、個人の目標がすべて地続きで、自分がどこに向かって何をすればよいのか、それが会社のどのような利益につながるかが明確です。同じ目標を共有しているため、チーム内や、会社内のチーム同士での仲間意識が強まり、コミュニケーションも活発になるでしょう。

■高いモチベーションを発揮できる
会社全体で目標を共有しているため、従業員一人ひとりの成果が、会社にどう貢献しているのかを実感しやすく、満足度を得やすいといわれます。「この目標でよいのか」と迷うことなく、限られた目標に取り組めるので、集中して高いモチベーションを発揮することができるでしょう。

OKRのデメリット

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OKRには、次のようなデメリットがあります。導入を検討している企業はデメリットも把握しておきましょう。

■会社・チーム・個人で目標に整合性がない場合がある
OKRは、会社の目標と個人の目標が地続きでつながっていることが重要です。そのため、たとえば会社のOKRとチームのOKRの関連性が薄かったりすると、優先順位が食い違ったり、従業員個々の成果が会社にどう貢献しているのかが見えにくかったりして、個々の力が十分に発揮されない場合があります。

■不十分なKey Resultsになる場合がある
Key Resultsは、従業員が「少し頑張れば達成できそう」というレベルが適切です。100%達成できそうなものだと、挑戦心がかき立てられず、手を抜いてしまう可能性があります。また、到底達成できなさそうな難しいものを設定すると、モチベーションが低下してしまいます。

OKRを成功に導くポイント

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以上のことを踏まえて、どのような点に留意すれば、うまくOKRを導入できるのでしょうか。

■長期的な計画を立てながら進める
OKR導入時には、社員を巻き込むための説明や、社内規則変更など仕組みの整備に、時間や労力がとられます。また、運用を開始してからも、定期的な進捗確認や評価が必要となります。したがって、事前の準備期間も含めた長期的な計画を立てながら導入を検討する必要があります。

■従業員のリソース確保
たとえば、複数の役割を担っている従業員がいる場合、OKRで設定する目標やアクションが多くなりすぎて、機能しないこともあります。特に、OKRを管理するマネジメント層がリソース不足である場合、ケアできるOKRも限られてしまいます。導入は慎重に検討しましょう。

■高い頻度でフィードバックする
OKRは、会社全体の目標意識が高い状態を維持することが目的です。そのため、掲げた目標が形骸化しないように、高い頻度でフィードバックをおこないます。具体的には、週に1回以上は、チーム内や上司と部下などで振り返りをおこない、進捗状況や達成具合などを確認するようにしましょう。

■最適な目標値を設定する
OKRの導入に際しては、MBOやKPIと違って、通常、60~70%の達成率で成功という高い目標が設定されます。そのため、難易度が高すぎる目標を設定したときや、60~70%の達成率でよいことが伝わっていなかったときには、従業員が、目標達成の難易度が高すぎると感じ、参加意欲の低下を引き起こす可能性があります。したがって、現在の事業の状況を考慮したうえで、参加者のモチベーション維持に留意した、最適な目標値を設定する必要があります。

■会社の目標と各部署の目標に整合性があることを確認
また、OKRの設定に際しては、部署間での目標設定の整合性に気をつける必要があります。特に、各部署における目標設定が会社としての優先事項とずれている場合、個人の行動が会社の方向性とリンクしておらず、かえって効率的が低下する可能性があります。
このようなリスクを防ぐためにも、OKRの設定においては、会社の目標と各部署の目標に整合性があることを確認しつつ、その目標を社内全体に共有することが必要であるといえます。

■評価と報酬・待遇を連動しない
OKRは、MBOといった他の目標管理手法と同じように、従業員の報酬と連動させてしまうことがあります。しかし、従業員にしてみれば、報酬が下がることは望んでいないため、達成できそうな低い目標を設定してしまいます。OKRは少し高いレベルの目標に挑戦してもらうことが重要なので、それでは、本末転倒になってしまいます。評価と報酬・待遇を連動させないようにしましょう。

■中長期的な目標を盛り込む際はミニゴールを設定する
OKRは、1ヶ月~四半期の短いサイクルで進めますが、なかには中長期的なOKR設定になっているケースもあります。その場合、なかなか目標に近づけないこともあります。このような中長期的な目標を設定した場合、1ヶ月や四半期毎にミニゴールを設定して、OKRに反映させるなどの工夫が必要になるでしょう。
たとえば、OKRを運用してからのデータを収集し、効果があったやり方を継続し効果がなかったやり方は修正をします。定期的に見直しをはかることで、自社に適した運用方法が定まってくるでしょう。

まとめ

OKRは世界の有名企業が導入し、成功させている目標達成手法で、日本国内でも導入する企業が増えています。ただし、成功させるには本記事で紹介したような、適切な目標設定と高頻度のフィードバックが必須です。それを実現するには、目標設定の際に会社と各従業員、上司と部下の間で円滑なコミュニケーションができ、意見が反映される環境が整っていることがポイントといえるでしょう。

逆に、OKRの設定やフィードバックを高い頻度でできなかったり、限られた目標に集中するのが難しかったりする場合は、失敗する可能性もあります。OKRには「決まった型」はなく、それぞれが自社に最適なやり方を、試行錯誤のなかで見つけていく必要があるため、導入する際には、自社にOKRをきちんと活用できる環境があるかどうかを確かめたうえで、検討するようにしましょう。