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採用通知書とは? 内定通知書との違い、書き方や郵送方法などの注意点を解説

採用通知書とは? 内定通知書との違い、書き方や郵送方法などの注意点を解説
採用活動のプロセスにおいて、選考の連絡はメールまたは電話でおこなうのが一般的です。採否の決定を求職者に伝えるためには、「採用通知書」という書類を使って通知する必要があります。本記事では採用通知書について説明した上で、書き方や郵送する際の注意点、内定通知書との違いを解説します。

採用通知書とは

採用通知書とは? 内定通知書との違い、書き方や郵送方法などの注意点を解説_1
企業が採用活動をおこなっていくなかで、ある人に採用を決定したとしましょう。その求職者に対し、企業として採用する意思を書類で示したものが「採用通知書」です。求職者は複数の企業の選考を受けています。そのため、採用通知書を送ることで、求職者が他社よりも自社を優位に考える可能性も期待できるでしょう。

採用の決定を伝える手段は、電話やメールでの通知も一つの方法です。しかし、電話やメールには「うまく伝わらない」デメリットがあります。たとえば電話だと言い間違い・聞き間違いがあり得ますし、メールだと他のメールに埋もれたり迷惑メールに振り分けられたりしてしまうリスクが考えられます。その点、採用通知書は書留などの方法を使うことで、採用の決定を確実に伝えられます。

採用通知書と内定通知書の違い

採用通知書の他に、内定通知書という書類もあります。どちらの書類も企業に発行義務がない点は同じですが、それぞれの違いを確認しておきましょう。

採用通知書
まず採用通知書は、採用の決定を知らせる通知です。複数回の面接を経て、企業が求職者を採用しようと決めたときに採用意思を通知する書類。つまり、求職者がその企業に入社したいかどうかは別として、企業が採用の意思を一方的に通知するものです。ですから企業が採用通知書を発行しても、求職者の入社の意思が確認されていないので法的な拘束力はありません。

内定通知書
そして内定通知書は、内定の決定を知らせる通知です。内定とは、企業が求職者に採用の決定を通知した後、求職者の入社意志が確認できた状態のこと。採用通知書との関係でいえば、企業は採用通知書を通じて「採用の決定」を通知し、求職者の「入社の意思」が確認できたときに内定通知書を発行する流れです。なお、内定通知書には労働契約を締結する効果があるため、法的な拘束力が発生します。法的な拘束力とは、企業は求職者に対して容易に内定を取り消せないということです。

内定通知書は、主に新卒採用で使われることが多いでしょう。新卒採用では内定の決定から入社まで時間があるため、内定通知書を発行して入社の意思を高め、辞退を防ぐ働きがあります。

なお、新卒採用で内定通知書を発行できる時期は、卒業年度の10月1日以降という決まりがある点も覚えておきましょう。中途採用でも内定通知書を出せますが、内定の決定から入社までの期間が短いため、採用通知書のみ発行して内定通知書を省くケースがあります。

採否を知らせる3つの書面

求職者に対して選考の結果を伝える書面には、合格時の内定通知書と採用通知書、不合格時の不採用通知書という3種類があります。企業側が採用の決定を通知する場合には採用通知書を、求職者の入社意志を確認できた場合には内定通知書を送付。そして選考の結果、不採用の場合は不採用通知を送ります。

不採用の旨は、求職者に対してメールで伝えるケースもあります。ただし、選考プロセスで預かった履歴書や職歴書、ポートフォリオなどを求職者に返送する場合は、不採用通知を相手に送付するのが一般的です。

採用通知書に同封する書類

採用通知書に同封する、主な3つの書類と採用通知書を送るタイミングについて確認します。

・添え状
添え状は「このような書類をお送りします」という意味を持ち、ビジネス文書を送る際に広く使われる書類です。

・入社承諾書・入社誓約書
採用通知書を送った段階では、まだ求職者の入社意思を確認できていません。求職者は複数の企業の選考を受けています。求職者に入社してもらうためにも、入社承諾書・入社誓約書を記入の上、返送してもらうようにしましょう。

・入社承諾書・入社誓約書を返送するための返信用封筒
入社承諾書・入社誓約書をスムーズに返送してもらうために、返信用封筒を同封することをおすすめします。返信用封筒には社名・住所を書き、切手も貼り付けておきましょう。

採用通知書に記載必要な項目とテンプレート

採用通知書とは? 内定通知書との違い、書き方や郵送方法などの注意点を解説_2
採用通知書は法的な書類ではないため、書き方に特別な決まりはありません。しかし、採用通知書は採用の決定を知らせる重要な通知です。記載項目に不足があると、求職者に誤解を与えたりトラブルを招いたりする元となります。以下のように、採用通知書において一般的に記載が必要な項目を確認しておきましょう。そして記載漏れなどを防ぐため、独自のものを使うよりテンプレートを活用するのがおすすめです。

採用通知書に記載必要な項目

採用通知書の書き方に特別な決まりはありません。しかし採用通知書には、以下の項目を記載するのが一般的です。

・日付、求職者の氏名
一般的なビジネス文書と同じく右上に日付を記入し、段落を空けて採用通知書の送り先である「求職者の氏名」を左側に書きます。日付は採用通知書を送付した日付を記載。求職者の敬称は「殿」「様」を使いましょう。

・社名、代表取締役の氏名
採用通知書は会社として求職者に送る書類なので、差出人は会社とします。求職者の氏名より下方、書類の右側に会社名と代表取締役の氏名を記入してください。会社名は略さずに正式な会社名を書きます。代表取締役の氏名記入欄には、会社の社判を押印しましょう。

・採用試験への応募のお礼
採用通知書では、まず採用試験に応募してくれたことへのお礼から書き始めてください。また、面接に来ていただいたことへの謝意を伝えると、求職者の印象がぐっと良くなります。

・採用決定のお知らせ
応募のお礼に続いて、採用の決定を通知します。採用決定を通知する際は、しっかり選考をおこなったことを求職者に伝えられる文章としましょう。「慎重に選考し、求職者を採用することを決定した」と伝えるのがスタンダードな書き方です。

・同封書類の内容
採用通知書は、会社として求職者を採用することを決定したことを通知するもの。まだ求職者との間で入社の意思の合意が取れていません。そこで採用通知書を送る際は、求職者の入社の意思を示す入社承諾書や返送用封筒などを同封することが多くなっています。採用通知書のなかで、どのような同封書類を送ったかについて明記してください。

・返送が必要な書類の期限
同封書類に返送が必要な書類があるときは、いつまでに返送して欲しいか具体的な返送期限を書きます。採用通知書を送った日付と求職者に届くタイミングを考慮し、余裕を持った返送期限を設定すると良いでしょう。

・入社日(未定の場合は、別途連絡する旨を記載)
最終面接や人事担当者とのやり取りのなかで、入社日が決定している際には入社日を記入します。未定の場合は、別途連絡することを明記しましょう。なお、新卒採用の場合は入社日が決まっているので、入社日を〇〇年4月1日と明記してください。

・人事担当者の連絡先
人事担当者の連絡先として直通電話番号や携帯電話番号、メールアドレスなどを書きます。求職者にとって会社との連絡窓口は人事担当者です。求職者とのやり取りができる相手の連絡先を明記しましょう。

・労働条件
雇用形態、賃金、就業場所、就業時間など、労働条件について採用通知書に書きます。求人票に掲載している条件、あるいは面接で求職者と話し合った条件とギャップがないよう慎重に書きましょう。なお、労働条件は労働条件通知書として採用通知書に同封したり、別途通知したりすることもできます。

採用通知書のテンプレート

採用通知書の記載項目をご紹介しました。
最後に、採用通知書のテンプレートを案内しますので参考にしてください。

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                                                                                                    〇〇年〇月〇日
〇〇 〇〇 殿

                                                                                        株式会社 XYZデザイン
                                                                                        代表取締役 ○○ ○○

                                               採用通知書

拝啓

この度は弊社求人にご応募頂き誠にありがとうございました。
また先日は最終面接にご足労頂いたこと、重ねてお礼申し上げます。
慎重に選考させて頂いた結果、貴殿の採用を決定しましたので、ご連絡致します。
入社日は〇〇年〇月〇日を予定しております。
つきましては、同封の入社承諾書に必要事項をご記入の上、期限までにご返送ください。

労働条件につきましては別途通知致します。
まずは取り急ぎ書面を持ちまして、通知申し上げます。
                                                                                                                  敬具

同封書類
・添え状 1通
・入社承諾書 1通
・返送用封筒 1枚

提出期限:〇〇年〇月〇日

質問やご不明点がございましたら、下記までご連絡ください。

本件に関する問い合わせ先
人事部採用課:採用 一郎
TEL:00-0000-0000
メールアドレス:○○○@○○○〇.co.jp
 

採用通知書における注意点

採用通知書とは? 内定通知書との違い、書き方や郵送方法などの注意点を解説_3
採用通知書は会社の採用決定を通知するための書類。まだ求職者の入社意思を確認できていません。相手の入社意欲を高めるには、採用通知書を送る際に注意しなくてはならない点があります。

書留郵便で送る

まず採用通知書は、他の郵便物に紛れて確認されないリスクが考えられます。確実に相手に届けたいのに、確認されないようでは意味がありません。そこで採用通知書を送るときは、書留郵便を使って送るようにしましょう。また、採用通知書が届いたことを確認するため、念のため電話やメールでの連絡を併用することをおすすめします。電話やメールの併用は、求職者に対し丁寧に扱われたという印象を残すことができます。

また、選考結果を伝える採用通知書や内定通知書、不採用通知書などの書類は、いずれも信書にて郵送をする必要があります。信書は郵送することが法律で決まっていますから、誤ってメール便で送付することがないよう注意してください。

正しい住所・氏名に送る

多くの候補者がいた、あるいは選考の結果として複数の合格者が出た場合などでは、送付先を他の求職者と間違えるリスクが考えられます。採用通知書の氏名と送り先の氏名を確認し、正しい情報を入力するようにしてください。間違って関係ない人に採用通知書を送ってしまうと、個人情報の漏洩に繋がります。就職・転職活動は求職者にとってセンシティブな情報ですから、正しい住所・氏名に送るよう十分に注意しましょう。

一週間以内に通知する

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採用決定の通知が遅くなると、求職者の入社意欲が下がる可能性があります。採用通知書はできるだけ早く送ることがベターです。遅くとも採用決定後、一週間以内に送付することが望ましいでしょう。また、できるだけ早く求職者に伝えるためにも、電話やメールの併用が効果的です。

求職者は複数の企業の選考を受けており、結果が届くのが遅いと自社への入社意欲が下がりかねません。たとえば、自社の最終面接の翌日に求職者が他社を受けており、他社の方が早く採用通知書が届けていたとしましょう。このとき、自社の採用通知書を送るのに日数を重ねてしまうと、印象が悪くなります。その結果、求職者は自社への入社意欲を下げてしまうわけです。

求職者は、最終面接を終えた後も就職・転職活動を継続している可能性が高く、他の企業への入社(内定)が先に決まってしまう場合があります。仮に内定が決まっていなくても、求職者が「採用通知書が早かったから」ということで他社を選ぶことにもなりかねません。優秀な人材である程、多くの企業から採用決定の通知を受ける可能性があります。内定承諾の交渉のハードルを下げ、内定辞退防止に繋げるためにも、採用決定の通知は早めに送るように心がけてください。

まとめ

採用通知書の意味や書き方、内定通知書との違いなどについて解説してきました。採用決定では採用通知書、内定決定では内定通知書など、状況に応じて採用通知書と内定通知書のどちらかを必ず送付する必要があります。
採用通知書の書き方に決まりはありませんが、一般的に必要な記載項目は網羅しておきましょう。採用通知書を送る際は、ここで取り上げた注意点に気を付けて郵送しましょう。また、採否の結果を伝えるための3つの書類は求職者を不安にさせないためにも、採否の結果に関わらず結果が決まり次第、早急に通知書の送付をすることをおすすめします。


《ライタープロフィール》
山崎英理夫(人事コンサルタント)
人事コンサルタントとして教育研修のプログラム開発、人事制度診断等を提供。また、企業人事として新卒・中途採用に従事し、人事制度構築や教育研修の企画・運用など幅広く活動。この経験を活かし、人材関連の執筆にも数多く取り組む。