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MBO(目標管理制度)とは? 目標設定の方法、導入時の注意点、OKRとの違い

MBO(目標管理制度)とは? 目標設定の方法、導入時の注意点、OKRとの違い
MBOは、「経営学の父」と呼ばれる経営学者、ピーター・F・ドラッカーによって1950年代に提唱された組織マネジメントの手法。上からの命令ではなく、社員が自分で目標を決める制度で、日本では「目標管理制度」と呼ばれています。

正しく運用すれば、社員のモチベーションが高まり、生産性が向上するなど、さまざまなメリットがあります。ただし、運用の仕方には注意も必要です。本記事では、MBOの解説、メリット・デメリット、導入時の注意点、よく似た制度の「OKR」との違いを紹介します。

MBOとは?

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MBOの正式名称は「Management by Objectives(目標による管理)」。日本では「目標管理制度」と呼ばれ、1960年代半ばに日本に入ってきました。しかし、当時は定着せず、バブル経済崩壊後の1990年後半から再び注目されるようになりました。

経済が低迷し、コストダウンを迫られるなか、国内の企業は人件費をかけずに業績を向上させることが求められるようになりました。そこで、成果を出している労働者に高い報酬を支払う成果主義が注目されるようになり、MBOの導入を検討する企業が増え始めました。

MBOの特徴は、社員が自分で目標を決めることです。組織の目標を達成するために、自分が貢献できることを目標として設定し、自ら実行し、その達成度によって評価されます。会社や上司の強制や命令ではなく、自分で目標を決めるので、社員の自主性を育み、モチベーションを向上させる仕組みとして知られています。

運用方法は、社員が目標を決め、上司の承認を得た後は、PDCAサイクル=Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)を回していくことが基本となります。社員の自己管理によって業務を遂行するため、上司によるマネジメントが徹底しにくいテレワークに適した制度としても改めて注目されています。

MBOのメリット

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MBOは、日本ではすでに8割の企業で導入されています。ただし、その効果は企業によって差があるようです。MBOのメリット・デメリットについても押さえておく必要があるようです。まずは、MBOのメリットから見ていきましょう。

部門やチームの目標と方向性を統一できる

MBOは、会社や部門、チームなど、組織の目標を達成するために、社員が自分の貢献できることを目標として設定する制度です。目標を設定したら、上司に相談し、承認を得て、適切でない場合は見直しをます。

そして、目標達成を目指して活動をして、達成できたかどうかで評価がおこなわれます。組織目標に基づいた個人目標を設定するため、部門やチームの目標と方向性を統一できるメリットがあります。

自己管理によるマネジメントができる

目標管理には、「目標と自己統制によるマネジメント」という意味があります。上司が一方的に指示をして業務を遂行させるのではなく、社員一人ひとりが組織の目標について考え、自ら目標設定をおこない、自主性や自己統制に基づいて業務を遂行していきます。目標達成はPDCAサイクルを繰り返し実行することが基本となるので、セルフマネジメント(自己管理によるマネジメント)のスキルが向上します。

仕事へのモチベーションを上げられる

人は、自分自身で目標を定め、計画を立て、実行しているという感覚があるときに内発的動機を得やすいといわれています。内発的動機とは、報酬や賞罰といった外から与えられる動機ではなく、心の内側に起こる充実感や達成感、自己成長感のことをいいます。MBOは、社員が自ら目標を決め、実行するため、「やらされ感」がありません。内発的動機が高まりやすく、仕事へのモチベーションを上げる効果があります。

社員のパフォーマンスを上げて、能力を向上できる

目標を達成するためには、多角的な視点が必要となってきます。たとえば、財務の視点(目標とする売上等の数字)、顧客の視点(目標を達成するために顧客にどのようなサービスを提供するか)、プロセスの視点(その目標をどのような方法で実現するか)、人材の視点(その目標を達成するためにどのような人材・能力が必要なのか)など。そのような視点を取り入れ目標達成を目指すことによって、社員のパフォーマンスが上がり、能力の向上が期待できます。

目標と成果を照らし合わせた振り返りができる

MBOは、目標の達成度によって評価をおこないます。自ら立てた目標に対して、どのような成果を上げることができたのか。達成できたことと、達成できなかったことが明確になるので、上司は人事評価がしやすく、部下も自分の改善点や努力の方向性を理解しやすくなります。

目標と成果を照らし合わせた振り返りができるので、上司は的確なフィードバックがしやすくなり、人材育成の面でも高い効果を発揮します。

MBOのデメリット

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MBO制度のデメリットについても整理しておきましょう。

各社員で自由な目標を設定できない

MBOは、社員が自ら目標を決める制度ですが、自由に目標を設定できるわけではありません。会社や組織の目標を達成するために、自分が貢献できることを目標として設定します。

目標管理制度の本来の意味や目的が正しく理解されていない場合や、ミッション、ビジョンなど、会社や組織が目指す目標や方向性が社員に浸透していない場合は、目標を自由に設定できないことに対して社員が不満を持つことがあります。

達成基準を定量数字で置く必要がある

「〇〇ができるよう努力する」「周知徹底する」「効率化する」といった達成基準が曖昧な目標(定性目標)を設定してしまうと、部下は「達成した」と思っても、上司は「達成していない」と判断し、低評価を受けた社員が不平・不満を持つ場合があります。

MBOで重要なのは、到達点が明確な目標を設定することです。たとえば、営業だったら「売上前年対比110%」とか「新規受注先を3件増やす」など、客観的に測定できるものに設定する必要があります。

目標達成を強く意識すると、低い目標を設定してしまう

MBOの目的は、社員一人ひとりの組織への貢献度を評価し、処遇に反映することです。人事評価に反映されるため、目標達成を強く意識すると、低い目標に設定しがちな傾向があります。

一方で、達成不可能な無謀な目標を設定すると、給与ダウンなどによって社員のモチベーションが低下する恐れもあります。達成可能でありながら、社員の成長も促す、適切な難易度の目標を見極めることが上司の重要な役割となります。

協調性が失われ、チーム力が低下する場合がある

個人の成果だけを目標として設定すると、協調性が失われ、チーム力が低下する場合があります。上司が自身の成果だけに腐心し、部下や後輩の面倒を見なくなるなど、個人主義が助長されるケースも少なくありません。

MBOの本来の目的は、組織力を強化すること。チームとしての目標も設定する、動機づけや進捗管理、人材育成など、マネジメントにおける目標も設定するなど、目標設定の仕方には注意が必要です。

MBO導入の注意点

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MBOは、社員の自主性を育み、生産性を向上させる優れた制度です。ただし誤った運用をすると、社員のモチベーションを低下させ、業績悪化につながる場合もあります。MBO導入の注意点を確認しましょう。

モチベーションが向上されるような目標を設定する

目標は、個々の能力や成長度合いに応じた達成可能なレベルに設定することが大切です。ただし、低すぎる目標では、社員のモチベーションが上がらず、成長もしません。会社が目指す方向性や組織としての目標達成の意義を伝え、社員がワクワクするような目標に設定する必要があります。

目標のレベルを、達成できる確率が50%の難易度にするなど、モチベーションアップにつながるような目標を設定することが重要です。

目標の達成基準を明確にする

目標は、達成基準を明確にすることが重要です。「効率化を徹底する」「ミスをなくすよう努力する」といった達成基準が不明確な目標は、達成できたのか、できなかったのか、主観的な評価しかできません。

目標はできるだけ数値化し、「納期を中3日から2日に短縮する」「ミスを5個から3個に減らす」など、測定可能な目標にしましょう。目標を明確にすることで上司も判断しやすくなり、客観的な評価ができます。

上司が目標を押しつけない

MBOは、社員が自ら目標を設定することによって、自主性を引き出す制度です。上位方針はあっても、最終的な目標は社員自身が決定することが肝となります。しかし、そもそもの目標を上司が一方的に押しつけ、本来の目的が形骸化してしまっているケースが少なくありません。

上司の役割は、組織の目標を伝え、部下の目標を承認し、あるいは軌道修正を促し、進捗を管理し、結果に対して適切なフィードバックをおこなうことです。MBOを導入する際は、ミドルマネジメント層の教育・育成が、制度運用の鍵となります。

成果だけでなくプロセスも評価する

成果だけを目標にすると、上司が人材育成を怠る、チームワークが悪化するなど、組織力を低下させるリスクがあります。成果につながる“行動”も評価する「コンピテンシー評価」を導入するなど、成果だけでなく、プロセスも評価することが重要です。

また、「売上を1.5倍にする」といった到達点だけでなく、「3ヶ月以内に新規顧客を5社増やす」「新規事業案を10個出す」といった途中経過の中間目標を設定することで、社員はその都度、達成感を得やすくなります。上司も進捗管理がしやすくなり、目標達成をしやすくなるでしょう。

OKRとの違い

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MBOと似た目標管理の手法に「OKR」があります。OKRの正式名称は「Objectives and Key Result(目標と成果指標)」。元インテルSEOのアンドリュー・S・グローブが1990年代に提唱した、難易度の高い目標を設定することによって社員のパフォーマンスを向上させる制度です。MBOとの違いをチェックしてみましょう。

制度の目的

OKR:組織と個人の目標を共通化することです。あえて難易度の高い目標に挑ませることによって、社員やチームのパフォーマンスの飛躍的な向上をはかります。人事評価をするためのツールではありません。

MBO:組織と個人の目標を共通化することです。組織における個人の役割を明確にすることによって、各社員の自主性を引き出します。組織への貢献度を評価し、人事評価にも反映されます。

個人目標の共有の範囲

OKR:組織全員で共有します。組織の目標と成果指標をすべての社員に周知するため、社員間のコミュニケーションが活性化しやすくなります。

MBO:上司と部下で共有します。目標設定会議などを通じて評価者である上司同士でも共有され、人事評価や人材育成の指標として使用されます。

評価の頻度

OKR:企業によって異なりますが、4半期単位(3ヶ月ごと)におこなわれます。

MBO:年度単位か半期単位で、1年または6ヶ月に1回、評価がおこなわれます。
 

評価の計測方法

OKR:測定しやすいように目標を数値化し、客観的なデータによって計測します。

MBO:一般的な決まりはなく、企業によって異なります。

理想とされる目標の達成度

OKR:難易度の高い目標を設定するため、60~70%の達成率が理想とされます。達成率が常に100%の場合は、その目標設定のレベルが低いといえるので、もっと野心的な目標を立てる必要があります。

MBO: モチベーションアップのため、各社員が達成可能な目標を設定するため(達成できる確率が50%の難易度)、100%の達成率が理想とされます。
 

まとめ

MBOは、前世紀の半ばに提唱された制度ですが、現在でも多くの企業で活用されています。OKRも、MBOから派生した目標管理の一種で、社員やチームのパフォーマンスを向上させることに特化した手法です。人事評価に反映させないのは、達成しやすい目標ではなく、難易度の高い目標に挑ませるためです。目的が異なるため、MBOとOKRを併用する会社もあります。

いずれにしても、社員が自ら目標を掲げ、上司はその支援をする、このサイクルを回していくことに変わりはありません。具体的な目標を一つひとつ達成することで、人は成長できます。MBRやOKRの導入に成功すれば、社員のモチベーションやパフォーマンス、会社の生産性や業績を高める効果が期待できます。上記を参考に導入を検討してみてはいかがでしょうか?


《ライタープロフィール》
ライター:鈴木 にこ
求人メディアの編集者を経て、フリーランスとして活動中。派遣・新卒・転職メディアの編集協力、ビジネス・ライフスタイル関連の書籍や記事のライティングをおこなう。