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面接官必見!気を付けたい採用面接でのNG質問

面接官必見!気を付けたい採用面接でのNG質問

採用面接では、応募者が自社の求める人材に合っているかを見極めるために、さまざまな質疑応答がおこなわれます。しかし、質問の内容によっては、応募者の人権を侵害したとして法律違反になる場合があります。応募者の緊張を和らげるためのアイスブレイクであっても例外ではありません。本記事では、採用面接でのNG質問の例と、その理由を紹介します。

採用面接で聞いてはいけない質問

面接官必見!気を付けたい採用面接でのNG質問_1

採用面接では、応募者のことをよく知る必要があります。また、相手にリラックスして話してもらうことも大切です。そのため、応募者にこんな質問をしていませんか?

「どちらのご出身ですか?」
「ご家族は?」
「尊敬している人は?」


実は、これらはすべてNGです。面接前後の雑談であっても、法律違反となる場合があります。採用面接は、本人のもつ「適性・能力」のみを基準にして選考しなくてはいけません。家族や出生地、国籍など「本人に責任のない事項」、思想・信条など「本来自由であるべき事項」について尋ねることは人権侵害となります。採用面接で聞いてはいけないNG質問の例と、その理由を知っておきましょう。

本籍地・出生地に関する質問


「生まれたのは、どちらですか?」
「国籍はどこですか?」
「戸籍謄(抄)本を提出してください」
「本籍が記載された住民票(写し)を提出してください」

上記のような本籍地や出生地、国籍などに関する質問は、NGです。
これらは本人の適性・能力とは何の関係もありません。本籍・戸籍謄(抄)本は、被差別集落であることを理由とした差別に用いられるおそれがあります。出生地を把握されることで、応募者を不安にさせることを深く認識しましょう。差別するつもりはなくても、事務的に戸籍謄(抄)本の提出を求めるだけでも違法となります。

外国人(在日韓国・朝鮮人を含む)の場合、採用選考段階で応募者から「在留カード」や「特別永住者証明書」などを提示させることもNGです。出身地や国籍など適性・能力に関係のない事項を把握することで、採否決定に偏見が入り込んだり、応募機会が不当に失われたりするおそれがあるからです。就労資格の確認は、採用選考時は口頭による確認とし、採用内定後に「在留カード」の提示を求めるという配慮が必要です。

家族・住宅状況に関する質問


「家族構成について教えてください」
「父親の勤務先は?」
「家庭はどんな雰囲気ですか?」
「ご自宅は、国道のどちら側ですか?」
「お住まいは、一戸建てですか、借家ですか?」

家族の職業(有無・職種・勤務先など)・続柄(家族構成を含む)・健康・病歴(遺伝性疾患の家系であるか等)・地位・学歴・収入・住宅状況・資産などについての質問も、NGです。
家庭環境や親の職業、資産の有無など、本人の適性・能力とは何の関係もないことが採否に影響することがあってはならないからです。

厚生労働省の調べでは、「本人の適性・能力以外の事項を把握された」と応募者から指摘があった質問の約半数を「家族」についての話題が占めていました。家族や住居の話題は質問しがちなので、十分に注意しましょう。
ハローワークが不適切な事象の報告を受けた場合は、事業所に事実確認をおこない、事実と認められた場合は、今後そのような質問などをおこなわないように啓発・指導をおこないます。

思想・信条に関わる質問


「尊敬する人物は誰ですか?」
「愛読書は何ですか?」
「どんな新聞を読んでいますか?」
「信仰している宗教は?」
「選挙に行きましたか?」
「支持政党はどこですか?」

「尊敬する人物」や「愛読書」なども聞きがちな質問ですが、NGです。
人生観・生活信条、尊敬する人物、思想、購読新聞・雑誌・愛読書、宗教、支持政党、労働組合(加入状況や活動歴など)、学生運動などの社会運動など、思想・信条に関わることを採否の判断基準にすることは、憲法上の「思想の自由(第19条)」「信教の自由(第20条)」などの規定に反するため禁止されています。

選挙権が18歳以上に引き下げられたことから、高校生に対する採用面接の際、「選挙に行きましたか?」といった質問がされることがありますが、高校生に限らず、選挙での投票行動など、政治的な活動に関する質問については「思想・信条に関わることの把握」につながる可能性が高いため、面接の話題として不適切です。

その他、不適切と考えられる質問


「健康診断書を提出してください」
「短所を教えてください」
「結婚や出産しても働き続けますか?」

職種に関係なく、健康診断書を提出させることはNGです。労働安全規則第43条に「雇い入れ時の健康診断」が規定されていることを理由に、採用選考時において一律に血液検査などの「健康診断」を実施する(「健康診断書の提出」を求める)会社もありますが、「雇い入れ時の健康診断」は、常時使用する労働者を雇い入れた際における適正配置や入職後の健康管理に役立てるために実施するものであって、応募者の採否を決定するためのものではありません。健康診断書は応募者の適性・能力を判断するうえで必要のない事項を把握する可能性があり、結果として就職差別につながるおそれがあります。

短所も聞きがちな質問ですが、NGです。短所をどのように克服したのかを知ることで適性・能力をはかるケースもありますが、応募者によっては身体的特徴や健康状態を短所と考えている場合があります。こうした応募者は、身体的特徴や健康状態を採用の基準にされたくないと考えているはずです。短所について問われることは、応募者の精神的苦痛を招くおそれがあります。「仕事上の困難な出来事に対して、どのように工夫しましたか?」と聞き方を変えるなど、応募者の心情に配慮することが必要です。

結婚や出産などに関する質問は、男女雇用機会均等法に抵触します。「結婚の予定は?」「つきあっている男性はいますか?」といった適性・能力に関係のないプライバシーに関わる質問、制服の貸与などを理由とした「スリーサイズは?」といったセクハラ的な質問もNGです。

事業者は、性別にかかわりなく、応募者に対して均等な機会を与えなくてはいけません。障がい者や難病を抱えている人、LGBTなどの性的マイノリティーなど、特定の人を選考から除外することも違法となります。

採用面接でNG質問をしてしまった場合のリスク

面接官必見!気を付けたい採用面接でのNG質問_2

NG質問は、企業にとっても大きなリスクとなります。コンプライアンス意識が高まっている現在、「担当者がうっかり言ってしまった」ではすまされないケースもあります。以下のリスクを把握し、社内で共有しましょう。

法律違反


職業安定法では「募集に応じて労働者になろうとする者などの個人情報を収集、保管、使用する際は、労働者の募集業務などの目的の達成に必要な範囲内でおこなわれなければならない」と規定しています。また、法に基づく指針が公表され、原則として収集してはならない個人情報などを規定しています。以下の個人情報の収集は、原則として認められていません。採用面接で質問することは違法になります。

■人種、民族、社会的身分、門地(家柄)、本籍、出生地、その他社会的差別の原因となるおそれのある事項
・家族の職業、収入、本人の資産などの情報
・容姿、スリーサイズなど、差別的評価につながる情報
■思想および信条
・人生観、生活信条、支持政党、購読新聞・雑誌、愛読書
■労働組合への加入状況
・労働運動、学生運動、消費者運動、その他、社会運動に関する情報

違法行為をした場合は、職業安定法に基づく行政指導や改善命令などの対象となる場合があります。改善命令に違反した場合は、罰則(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が課せられる場合があります。

面接時に本人の適性・能力とは関係ないことを尋ねるだけでなく、エントリーシートに記載させたり、作文の題材としたりすることも、差別につながりかねないため禁止されています。

インターネット上で拡散される


採用面接でのNG質問は、SNSなどを通じて世界中に拡散される場合があります。インターネットで炎上すると、企業の評判を大きく落とす可能性があります。企業のマイナスイメージが広がると、顧客や取引先の信頼を失い、応募者も激減、業績が悪化するなど、自社に計り知れないダメージを与える可能性があります。

企業側でできる対策方法

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採用面接でのNG質問は、応募者の人権を侵害するだけでなく、自社にも多大なダメージを与えるリスクがあります。面接官のNG質問を防ぐために、企業側でできる対策を紹介します。

あらかじめ採用基準を明確化しておく


面接における採用基準(選考基準)を、あらかじめ明確にしておきましょう。「コミュニケーション能力」「協調性」「成長意欲」など、質問項目を定めた面接マニュアルを作成し、各項目を点数化しておけば、採用担当者の好き嫌いなどの主観を排除した、総合的で客観的な評価が可能になります。

適性・能力のみを採用基準とする


採用予定の職務内容を遂行するには、どのような適性・能力が必要とされるのか。採用時点では、どの程度の適性・能力(技能・経験・資格・将来的な可能性など)が必要となるのか。これらを整理・確認し、適性・能力のみを採用基準にしましょう。また、特定の国や地域の出身者、難病を抱えている方、LGBTなどの性的マイノリティーなど、特定の人を排除しないことをルール化しておきましょう。

コンプライアンス研修と注意点の共有


採用面接でのNG質問を防止するには、面接官のコンプライアンス意識を高め、会社全体で注意点を共有することが大切です。面接官には採用面接をおこなうための研修を実施し、NG質問と、その理由をしっかりと伝えましょう。また、面接官を担当した社員から他の社員に採用面接時の注意点を引き継ぎ、共有するなど、いつ誰が面接官を担当しても問題のない環境をつくりましょう。

NG質問を避けるためのポイント

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事前に質問事項を決めておく


NG質問を避けるためには、質問事項をあらかじめ決めておくことが重要です。特に初めて面接官を担当する場合は、応募者のことをよく知ろうとして、家族や出身地、尊敬する人物などを質問しがちです。NG質問に当たらない質問リストを用意して、社内で共有するようにしましょう。

<質問リストの例>
・前職ではどのような仕事をされていたのですか?
・当社はどこで知りましたか?
・なぜ当社に応募されたのですか?
・一番楽しいと感じるのは、どんなことですか?
・仕事でつらいと感じるのは、どんなことですか?
・将来をどのように考えていますか?

アイスブレイクに適した質問を用意


採用面接の場に適したアイスブレイク用の質問も、あらかじめ用意しておきましょう。来社方法や天気、面接についてなど、応募者が話しやすい話題をリストアップしておくのがポイントです。アイスブレイクに適した質問を事前に用意しておくことで、NG質問の防止を徹底できます。

<アイスブレイクの例>
・ここまで迷わず来られましたか?
・雨にぬれませんでしたか?
・緊張されていますか?
・今日はお仕事の帰りですか?
・オンライン面接の経験はありますか?

派遣スタッフの事前面接はNG

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紹介予定派遣を除いた派遣スタッフを雇用する場合、「特定行為」は禁止されています。事前面接をはじめ、履歴書などの提出要請、若年者に限ること、性別を特定すること、適性検査をおこなうなど、派遣先企業が候補者の中から「特定の派遣スタッフを選択すること」は違法となるため、罰則が与えられます。

<労働者派遣法 第26条第7項>
労働者派遣(紹介予定派遣を除く)の役務の提供を受けようとする者は、
労働者派遣契約の締結に際し、派遣労働者を特定することを目的とする行為を
しないように努めなければなりません。

まとめ


採用面接におけるNG質問とその理由を理解しよう
採用面接におけるNG質問を防ぐには、どんな質問がなぜNGとされているのかをしっかりと理解することが大切です。企業によって適性・能力を判断する基準は異なりますが、「本人に責任のない事項」「本来自由であるべき事項」は、応募者の適性・能力とは一切関係ありません。不適切な質問は応募者を傷つけ、雇用の機会を奪うだけでなく、自社にも多大なダメージを与えるリスクがあります。研修などを通じて社員一人ひとりのコンプライアンス意識を高め、NG質問を未然に防ぐようにしましょう。


《ライタープロフィール》
ライター:鈴木にこ
求人メディアの編集者を経て、フリーランスとして活動中。派遣・新卒・転職メディアの編集協力、ビジネス・ライフスタイル関連の書籍や記事のライティングをおこなう。