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派遣社員の抵触日とは?抵触日を迎えたときの対応も解説

派遣社員の抵触日とは?抵触日を迎えたときの対応も解説

2015年の労働者派遣法改正により、派遣可能期間が3年までになったことから、人材派遣業界では「抵触日」という用語が使用されるようになりました。労働者派遣法では、抵触日や派遣期間に関わる対応が定められています。

正しい対応をしなかった場合、処罰を受ける可能性があるため、抵触日や派遣可能期間について理解しておくことが大切です。本記事では、派遣社員の抵触日の概要、抵触日を迎えたときの対応、違反時の処罰について解説します。

抵触日とは

人材派遣の抵触日とは、派遣可能期間が満了した翌日のことです。2015年の労働者派遣法改正により、派遣可能期間は3年までと定められました。原則、派遣社員を受け入れた日から3年経過した翌日が抵触日に該当します。

例えば、2020年11月1日が派遣社員の受け入れた日であれば、2023年11月1日が抵触日になります。

抵触日が設けられた理由

抵触日が設けられた理由には、安定した雇用の推進が挙げられます。本来、派遣社員は企業の繁忙期の一時的な人手不足の補填が目的です。元々、派遣社員として雇用できる業種は、ソフトウェア開発や事務機器操作といった専門的なスキルを必要とする26種類に限定されていました。

しかし、雇用できる業種の緩和に伴い、派遣の需要が拡大していきます。その結果、人件費削減を目的に派遣社員を雇い、正社員と同じ内容の業務をおこなう状況がでてきました。その状況は、本来の派遣の目的とは異なるだけでなく、派遣社員の雇用も安定しない状態が続くことになります。

派遣社員を3年受け入れる企業は、一時的な人手不足ではなく、慢性的な人手不足になっていると言えます。慢性的な人手不足であれば、必要なのは派遣社員ではなく、正社員です。本来の派遣社員を活用する目的への回帰と、労働者の安定した雇用を推進するため、派遣社員が働ける期間を制限されたのです。

抵触日の種類

人材派遣の抵触日には、個人(組織)単位と事務所単位の2種類が存在します。ここでは、それぞれの抵触日と、事業所単位と個人(組織)単位の期間制限の関係について解説します。

個人(組織)単位の抵触日

個人(組織)単位の抵触日とは、ひとりの派遣社員が同じ事業所のひとつの組織単位で働ける派遣期間の抵触日です。厚生労働省によると、組織単位とは以下のように定義されています。

・  業務としての類似性や関連性がある組織
・  組織の長が業務配分や労務管理上の指揮監督権限を有している

つまり、組織単位とは会社ではなく、部門や課、グループを指しています。そのため、例えば「株式会社A商事の人事課」に派遣されていた人が、3年後に「株式会社A商事の経理課」に派遣されることは可能です。

参考:厚生労働省「平成27年労働者派遣法改正の概要

事業単位の抵触日

事業単位の抵触日とは、ひとつの事業所で派遣スタッフを雇用し続けられる派遣期間の抵触日です。厚生労働省によると、事業所に対する定義は、雇用保険の適用事業所単位と同じ考え方で、以下のように定義されています。

・  工場、事務所、店舗等、場所的に独立している
・  経営の単位として人事・経理・指導監督・働き方などがある程度独立している
・  施設として一定期間継続するものである

個人(組織)単位の抵触日と異なるのは、延長手続きをすれば、3年を上限として雇用期間を延長できることです。派遣先企業には、労働者派遣法第26条によって抵触日の通知が義務づけられており、派遣会社に対し事業所単位の抵触日を通知する必要があります。一般的には、就業条件明示書に抵触日を記載します。

通知方法は書面のほか、FAXや電子メールでも構いません。ただし、口頭での通知は認められていません。通知した証拠や保存ができる方法で通知する必要があります。

通知内容は以下のとおりです。フォーマットの指定はなく、以下の内容が記載されていれば問題ありません。

・  事業所の名称
・  事業所所在地(住所)
・  事業所抵触日(延長の場合は、延長後の抵触日)

また、労働者派遣法第26条にて、派遣先企業は派遣会社に対して派遣労働者が従事する業務ごとに、賃金をはじめとした待遇に関する情報を提供しなければならないことが定められています。

抵触日の通知や待遇に関する情報提供通知をしなければ、労働者派遣契約を締結してはなりません。

事業所単位と個人(組織)単位の期間制限の関係

事業所単位と個人(組織)単位の期間制限では、事業所単位の期間制限が優先されます。そのため、個人単位の期間制限に達していない派遣社員でも、事業所単位の期間制限の方が早ければ、事業所の派遣期間を延長しなければなりません。

例えば、2022年4月1日から派遣社員として働き始めた派遣社員Aさんは、2025年3月31日までが派遣期間のはずです。しかし、事業所単位の派遣期間が2021年4月1日から2024年3月31日までの場合、派遣社員Aさんが働けるのは2024年3月31日までの2年間になります。

抵触日の制限を受けない場合

派遣可能期間は原則3年間です。しかし、以下の条件に該当する派遣社員は、抵触日の制限を受けません。

・  無期雇用されている派遣社員
・  60歳以上の派遣社員
・  日数限定業務に従事している派遣社員
・  産前産後休業や育児休業、介護休業を取得する社員の休業期間に代替業務を担当する派遣社員
・  終了時期が明確な有期プロジェクト業務で働く派遣社員

日数限定業務とは、1ヶ月間の労働日数が正社員の所定労働日数の半分以下で、1ヶ月間の労働日数が10日以下の業務を指します。産前産後休業や育児休業、介護休業を取得する社員の代替業務は、引き継ぎ期間も含まれます。

抵触日を迎えたときの対応

派遣社員の抵触日とは?抵触日を迎えたときの対応も解説_4

抵触日を迎えたとき、原則として派遣社員の立場では同一組織内では働けません。その後の働き方について派遣会社や派遣先と相談する必要があります。ここでは、抵触日を迎えたときの派遣社員側の対応と派遣先の対応、派遣の延長手続きをする際の注意点について解説します。

派遣社員側の対応

抵触日を迎えた派遣社員は、今後も同様の業務や派遣社員として働くのであれば、以下の選択肢から働き方を選ぶ必要があります。

・  派遣先企業内の別の組織で働く
・  別の派遣先で働く
・  派遣先企業で直接雇用になる

原則、抵触日以降はひとりの派遣社員が同じ組織では働けません。抵触日以降も同じ派遣先企業で働きたい場合は、派遣先企業内の別の部門や課で働く必要があります。

ただし、別の部門や課で働く場合、業務内容がこれまでとは異なるため、習得したスキルや経験を活かす機会は少なくなるでしょう。これまでに習得したスキルや経験を活かしたいのであれば、派遣会社から別の派遣先企業を紹介してもらい、その派遣先で働くとよいでしょう。

これまでに習得したスキルや経験を活かすには、派遣先企業で社員として直接雇用してもらうのも選択肢のひとつです。派遣先企業から雇用申込みがあり、本人が希望すれば直接雇用として働けます。

ただし、必ずしも「直接雇用=正社員」というわけではありません。契約社員やパート社員も直接雇用に含まれます。そのため、派遣と比べて必ずしも待遇が良くなるとは限りません。抵触日以降の働き方を有意義なものにするためにも、派遣会社の担当者に余裕をもって相談することが大切です。

派遣先の対応

抵触日を迎えた派遣先が、同じ派遣社員を継続して受け入れたい場合の対応には、以下の選択肢が挙げられます。

・  派遣社員を直接雇用する
・  派遣可能期間を延長する
・  別の組織で派遣契約を結ぶ

3年以上も同じ派遣労働者を受け入れるような場合、慢性的な人手不足に陥っていると考えられます。派遣社員を直接雇用することにより、人手不足解消につながるはずです。派遣会社と派遣社員の了承を得られれば、直接雇用できます。

派遣可能期間を延長する方法も選択肢のひとつです。派遣可能期間の延長には回数制限はありません。ただし、延長期間も3年が最長となるため、3年後も派遣を継続したい場合は再度延長手続きをする必要があります。

また、別の課でも派遣労働者のスキルを活かせる業務がある場合は、別の課で新たに派遣契約を結ぶのもひとつです。

延長手続きの注意点

派遣期間の延長をする場合、以下の手順に則って、事業所ごとに手続きをする必要があります。

1.    意見聴取のための資料作成
2.    意見聴取を実施する
3.    意見聴取の回答結果をもらう
4.    事業所の社員への周知
5.    派遣会社への結果通知


1.意見聴取のための資料作成
派遣先企業は、意見聴取の際に参考となる資料を提示する必要があります。具体的には派遣期間やこれまで受け入れてきた派遣労働者数、無期雇用として雇用した派遣労働者の推移といった情報を記載します。

2.意見聴取を実施する
事業所の過半数労働組合または過半数代表者に、書面による意見聴取を実施します。当該事業所の過半数労働組合に対し、抵触日の1ヶ月前までに意見聴取すれば派遣期間の延長が可能です。労働組合がない場合は、過半数代表者に意見聴取します。

3.意見聴取の回答結果をもらう
意見聴取の回答結果が「異議なし」であれば、派遣期間を最大3年まで延長できます。意見聴取の回答結果が「異議あり」であれば、延長する期間や理由、異議に対する方針などを事業所抵触日の前日までに、過半数労働組合または過半数代表者に説明しなければなりません。

場合によっては、派遣期間を延長できないケースもあるでしょう。

4.事業所の社員への周知
派遣期間の延長が決まれば、派遣先の事業所の社員に周知する必要があります。周知内容は以下のとおりです。

・  意見聴取先の名称(過半数労働組合の名称または過半数代表者の氏名)
・  意見聴取先に書面通知した日と項目
・  意見聴取実施日と内容
・  延長期間

また、意見聴取を行った書面は3年間保管する必要があります。

5.派遣会社への結果通知
派遣期間の延長が決まれば、派遣会社に結果を通知します。一般的に派遣会社で通知様式が用意されているため、その様式を使用すると良いでしょう。派遣会社への結果通知後に、派遣期間延長の契約を締結できます。

契約延長をする際も、抵触日の通知や待遇に関する情報提供が必要です。契約内容と就業形態に相違がないかどうかを改めて確認したうえで契約を締結しましょう。

抵触日を違反するとどうなるか?

抵触日を違反した場合、派遣会社には30万円以下の罰金が科されます。派遣先に対しても行政指導が実施され、指導に従わない場合は企業名が公表される可能性もあるでしょう。

抵触日以降も派遣社員を雇用していた場合、直接雇用を申し込んだとみなされる「労働契約申込みみなし制度」が適用される可能性があります。労働契約申込みみなし制度が適用された場合、派遣社員と派遣先が労働契約の申し込みをしたものとみなされ、みなされた日から1年以内に派遣社員が承諾する意思表示をすれば労働契約が成立します。

思わぬ労働契約を締結しないためにも、抵触日を把握し、正しい手続きを踏むことが大切です。労働契約申込みみなし制度に該当するかどうかわからない場合、都道府県労働局の需給調整事業課または職業安定課に確認すると良いでしょう。

まとめ

派遣社員の抵触日とは?抵触日を迎えたときの対応も解説_6

人材派遣の抵触日とは、派遣期間が満了した翌日です。2015年の労働者派遣法改正により、派遣期間は3年までと定められたため、派遣社員を受け入れた日から3年経過した翌日が抵触日に該当します。

派遣先企業には抵触日の通知が義務づけられており、派遣会社に対し事業所単位の抵触日を通知しなければなりません。抵触日には、個人(組織)単位と事務所単位の2種類が存在するものの、事業所単位と個人(組織)単位の期間制限では、事業所単位の期間制限が優先されます。個人(組織)単位の期間制限に達していない派遣社員でも、事業者単位の期間制限の方が早ければ、事業所の派遣期間を延長しなければなりません。

抵触日を迎えても同じ派遣社員を継続して受け入れたい場合は、直接雇用や別の組織で派遣契約を結ぶといった選択肢のほか、派遣可能期間の制限を延長する選択もあります。ただし、正しい手続きを踏まなければ、違法行為と判断される可能性もあります。

抵触日や派遣期間について理解し、派遣期間後の働き方について事前に検討しておくことが大切です。


《ライタープロフィール》
ライター:田仲ダイ

エンジニアリング会社でマネジメントや人事、採用といった経験を積んだのち、フリーランスのライターとして活動開始。現在はビジネスやメンタルヘルスの分野を中心に、幅広いジャンルで執筆を手掛けている。