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【令和版】キャリアアップ助成金とは? 各種コースのご紹介と支給までの流れを解説

【令和版】キャリアアップ助成金とは? 各種コースのご紹介と支給までの流れを解説

あなたの企業では、助成金をうまく活用できていますか? 助成金に難しい印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、要件を満たすことができれば、助成金は大きなメリットのある制度です。今回は助成金のなかでも、生産性の向上や優秀な人材の確保につながる、キャリアアップ助成金の全コースやコロナにともなう緩和措置などを紹介します。

キャリアアップ助成金とは

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キャリアアップ助成金は、派遣スタッフなどの非正規雇用労働者を対象に、下記で挙げる正社員化などの取り組みをおこなう企業を支援する制度です。まずは基本的な仕組みから理解していきましょう。

助成金で人材確保と生産性向上を実現

キャリアアップ助成金は、後ほど説明する「キャリアアップ計画」を作成したうえで、計画にしたがった取り組みをおこなうことで、返済不要の助成金が支払われるものです。企業は助成金を受けることで、人材を確保しやすくなり、生産性の向上につなげることができます。

助成を受けるための要件は後述しますが、ポイントは雇用形態や雇用環境を改善することにあります。キャリアアップ助成金の目的は、派遣労働者などの企業内でのキャリアアップの支援にあるため、この点を押さえておきましょう。

なお、キャリアアップ助成金の多くは、以下の有期雇用労働者および無期雇用労働者が対象となっています。本記事では、両者をまとめて「有期雇用労働者等」と記載します。

コロナの影響による制度の拡充

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キャリアアップ助成金には後ほど説明する複数のコースがあります。このうち、「正社員化コース」については、新型コロナウイルス感染症にともなう緩和措置が設けられています。通常、派遣労働者が派遣先に直接雇用される場合、派遣先で従事していた期間が6ヶ月以上あればキャリアアップ助成金(正社員化コース)の対象になります。

なお、「新型コロナウイルスの影響による離職」は、自己都合による退職であっても問題ありません。「同居の家族が高齢で、重症化を防止するために」「職場で感染者が発生したから」といったように、新型コロナウイルス感染症の影響によるものであれば、助成金の支給対象になりえます。

《参考サイト》
厚生労働省:キャリアアップ助成金(正社員化コース)の制度拡充に関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000734976.pdf

厚生労働省:新型コロナウイルス感染症の影響等に係るキャリアアップ助成金の手続きに関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000619656.pdf

キャリアアップ助成金の各種コース

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キャリアアップ助成金には下記の7通りのコースがあります。各コースについて、企業規模や従業員の状況や生産性など、いくつかの条件を加味して助成金が支給されます。

①正社員化コース
キャリアアップ助成金のなかでもっとも代表的なコースであり、有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換したり、直接雇用した場合に助成されるものです。派遣労働者を派遣先で正社員として直接雇用した場合や、シングルファーザー・シングルマザーの雇用形態を転換した場合など、一定のケースについては助成額の加算措置が設けられています。

②賃金規定等改定コース
有期雇用労働者等の基本給の賃金規定などを増額改定し、昇給した場合に助成されます。助成額は、対象となる労働者の人数によって増える仕組みとなっています。ただし、1年度・1事業所あたり100人が上限です。

③賃金規定等共通化コース
正規雇用労働者と共通の職務等について、有期雇用労働者等の賃金規定等を新たに作成し、適用した場合に助成されます。対象となる労働者の人数に応じた加算措置があり、上限20人まで適用されます。

④諸手当制度共通化コース
有期雇用労働者等に関して正規雇用労働者と共通の諸手当制度を設けた場合や、有期雇用労働者等を対象とする「法定外の健康診断制度」を新設し延べ4人以上に実施した場合に助成されます。共通化した対象労働者の人数(上限20人)と、共通化した手当(上限4手当)に応じて助成金が加算されます。

⑤選択的適用拡大導入時処遇改善コース
労使合意に基づき社会保険の適用拡大の措置を導入する企業が対象となります。雇用する非正規雇用労働者について、働き方の意向を適切に把握しつつ、新たに社会保険の被保険者とした場合に助成されます。この取り組みと合わせて、対象労働者の基本給を一定以上増額した場合や、生産性向上の取り組みをおこなった場合は、助成金が加算されます。なお、支給申請上限人数は45人までとなっています。

⑥短時間労働者労働時間延長コース
正社員の所定勤務時間より短い「短時間労働者」が対象となる助成金です。短時間労働者の週所定時間を5時間以上延長するとともに、処遇の改善を図り、新たに社会保険の被保険者とした場合に助成されます。なお、1年につき1事業所当たり支給申請上限人数は45人までとなっています。

⑦障害者正社員コース
令和3年4月に新設されたコースで、令和2年度に廃止された障害者雇用安定助成金に代わる助成金となっています。有期雇用労働者等である障害者を正規雇用労働者や無期雇用労働者に転換する、あるいは無期雇用労働者である障害者を正規雇用労働者に転換することで、助成金が支給されます。

キャリアアップ助成金を受けるには?

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キャリアアップ助成金を受けるための要件、受給までの流れ、注意点について紹介します。

事業主の要件

支給対象事業主となる要件は以下のようになります。
・雇用保険適用事業所の事業主であること
・事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主であること
・事業所ごとに、対象労働者に対し、キャリアアップ計画を作成していること
・管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主であること
・労働条件などを明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明示できる事業主であること
・キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主であること

<注意点>
上記の条件を満たした場合であっても、助成対象外となるケースがあります。後ほど説明する「キャリアアップ計画書」に変更が生じたにもかかわらず、変更届を出していなかったケースです。つまり、計画どおりに取り組みを実施しない場合はもちろん、計画にない取り組みを実施した場合も、助成金の支給を受けられません。

支給までの流れ

助成金の活用にあたっては、下記のようにキャリアアップ計画を作成し提出する必要があります。この計画は、下記図のように取り組み前に提出する必要があります。なお、正社員化コースと、その他のコースでは手続きの流れが異なっています。正社員化コースの場合、正社員化の規定を就業規則に定めたうえで、転換をおこなう必要があります。


※厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内」より引用
 

キャリアアップ計画とは

キャリアアップ助成金を受けるためには、取り組みの実施前に「キャリアアップ計画」を用意しなくてはなりません。厚生労働省が定める「有期契約労働者等のキャリアアップに関するガイドライン」 に沿って計画を作成し、その内容を「キャリアアップ計画書」にまとめましょう。

キャリアアップ計画書の記載内容は、以下のようになります。

<記載項目>
・キャリアアップ計画期間
・キャリアアップ計画期間に講じる措置の項目
・対象者
・目標
・目標を達成するために講じる措置
・計画全体の流れ

これらの項目は、有期契約労働者等のキャリアアップに向けた、今後のおおまかな取り組みのイメージを記載するものです。記載する内容については、前述のガイドラインが参考になります。主に以下のような取り組み内容を記載します。

①キャリアアップに向けた管理体制の整備
事業者ごとに「キャリアアップ管理者」を位置付け、従業員に対して周知を図るなど、有期契約労働者等のキャリアアップに向けた管理体制の整備をおこないます。さらに、キャリアアップ管理者の知識やノウハウの向上のために研修などをおこなう場合は、その旨も記載しましょう。

②計画的なキャリアアップの取り組みの推進
社内の人材確保や人材育成の現状を分析したうえで、有期契約労働者等のキャリアアップについて対応方針案を決定します。この方針を計画にまとめ、その計画を着実に着実に進める必要があります。キャリアアップ計画を必要に応じて見直すのであれば、どのように見直すのかを記載します。

③正規雇用労働者等への転換
キャリアアップ助成金の各コースの条件にしたがって、正規雇用や無期労働契約への転換を計画し、その旨を記載します。正規雇用への転換を希望する有期契約労働者等のモチベーションの維持・向上が図られるよう、評価基準を見直すといった取り組みが考えられます。

④人材育成
有期契約労働者等の能力向上のためには、教育訓練を実施することが有効です。希望するキャリアパスに応じて教育訓練の設備やプログラムを充実させる、相談の機会を確保する、といったさまざまな取り組みをおこなうことが大切です。

⑤処遇改善
有期契約労働者等の能力やパフォーマンスに応じた処遇が求められます。評価基準を見直すとともに、賃金などに反映させる仕組みを構築する必要があります。相談窓口の設置や個人面談、キャリア・コンサルタントの活用も、処遇改善に役立つ取り組みです。

注意点

キャリアアップ計画どおりに取り組みをおこなっても、期限までに支給申請をしなければ助成金をもらうことはできません。正社員などへの転換または直接雇用した対象労働者に対し、転換・雇用後の賃金を6ヶ月分支給した日の翌日から起算して2ヶ月以内に申請をすることが条件です。


※厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内」より引用

また、繰り返しになりますが、キャリアアップ計画に変更が生じた場合は、取り組みをはじめる前日までに「変更届」を提出する必要があります。計画書や変更届にない取り組みをおこなうと、本来は支給対象となる取り組みであっても、助成金は支給されません。

まとめ

キャリアアップ助成金は企業にとっては生産性の向上や優秀な人材の確保につながり、従業員にとってはキャリアアップや職務満足度向上につながる、非常にメリットの大きな制度になります。もちろん複数のコースを併用することも可能です。お得なキャリアアップ助成金を賢く正しく利用してみてはいかがでしょうか。

 

《ライタープロフィール》
小林義崇(ライター/元国税専門官)
2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、相続税調査や確定申告対応などに従事。2017年にフリーライターに転身。著書に「すみません、金利ってなんですか?」(サンマーク出版)、「イラスト図解 絶対トクする! 節税の全ワザ」(きずな出版)などがある。