出向と派遣はどこが違う?トラブル防止のために知っておきたい特徴
派遣の基礎知識

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出向と派遣はどこが違う?
トラブル防止のために知っておきたい特徴

出向と派遣はどこが違う?トラブル防止のために知っておきたい特徴

「出向」と「派遣」。どちらも違う会社で働くというイメージはあるものの、どう違うのか説明を求められても「よく分からない」という人もいるかもしれません。そこで、今回は出向と派遣の違いについて、基礎的な知識と法令違反しないためのポイントをみていきます。

派遣と出向は何が違うのか

出向も派遣も、それぞれ出向先・派遣先で業務を行う働き方です。では、この2つの働き方はどこが違うのでしょうか? 出向と派遣の違いを理解するために、まずは派遣という働き方と出向という働き方について説明し、その後で両者の違いをみていきます。

派遣という労働形態

派遣は約30年前に日本で浸透し始めた働き方です。臨時的な人手不足を埋める画期的な方法として、瞬く間に世の中に広まりました。厚生労働省が取りまとめている「労働者派遣事業報告書」(平成29年6月1日現在の状況報告)によると、平成29年6月1日時点における派遣スタッフ数は約156万人となり、対前年比19.4%の増加をみせています。
派遣という労働形態は、派遣元・派遣先・派遣スタッフの3者が関わる働き方です。派遣スタッフは派遣元と呼ばれる派遣会社と雇用契約を結びます。働くのは派遣先の会社で、その派遣先の指揮命令系統で業務に従事しますが、その派遣先と派遣スタッフ間には雇用関係はありません。また一般的には、派遣期間が終了したら、派遣スタッフは別の派遣先で働きます。働いているのは派遣先ですが、給料の支払いなどは雇用契約先である派遣会社が行います。

出向という労働形態

出向は勤めていた会社(出向元)の社員のまま、子会社や関連会社などで業務を行うという働き方です。ドラマで、メガバンクから関連会社に出向という業務命令を出されるシーンを見たことのある人も多いでしょう。同じ会社内での配置転換や転勤などは「異動」ですが、「出向」は勤務する会社自体が変わるのです。
出向には、「在籍出向」と「転籍出向」の2種類あります。出向元との労働契約を結んだまま出向先とも労働契約を結んで働くのが在籍出向、出向元と労働契約を解消して出向先とのみ新たに労働契約を結ぶのが転籍出向です。いずれにしても、出向者は出向先の会社で、出向先の会社の指揮命令系統で勤務することになります。
なお、在籍出向の場合、具体的条件を就業規則や労働協約などで定めていれば、社員の同意は必要ないとされています。会社側は従業員に異論があったとしても、別会社に勤務先を変更することができるというわけです。そのため、一種の人事異動ともいえます。

派遣と出向では何が違う?

ここでは派遣と出向とでは何が違うのかを、雇用契約・雇用期間・労働時間の3つに分けてご紹介します。

  • ・雇用契約
    前述したとおり、派遣の場合は派遣会社、在籍出向の場合は出向元と出向先、転籍出向の場合は出向先と雇用契約あるいは労働契約を結びます。
  • ・雇用期間
    派遣の場合、一契約における雇用期間は比較的短いのが特徴です。短期は31日などの単位で、長期でも3カ月~半年程度です。なかには1年以上継続する場合もありますが、雇用期間については会社や業界によって大きく異なります。
    出向の場合、目的にもよりますが1年以上の勤務からスタートすることが多く、大抵は長期間の勤務になります。
  • ・労働時間
    派遣の場合、契約書で労働時間が定められていることが多いです。時間外労働は、派遣元の36協定の範囲内でさせることができます。基本的には、派遣契約で書かれている労働時間をベースに残業代が発生、請求内容は契約によって異なります。
    出向の場合も契約内容によって異なりますが、基本的には出向元と同様の対応が求められることが多いでしょう。また、出向先が独自に労働条件を変更することあります。

偽装出向と見なされないための3ポイント

派遣と出向は派遣先・出向先で、その指揮命令系統で働くことは同じですから、一見すると同じような働き方のように見えます。しかし、雇用形態はまったく異なるため、両者を混同しないように注意する必要があります。例えば、次のような行為を行うと、出向といいつつ実態が労働者派遣である偽装出向と見なされる可能性があります。

  • 1.派遣スタッフを出向者として扱い、継続的に受け入れている
  • 2.労働者派遣法で定められている社会保険の加入状況の確認義務を怠り、社会保険未加入の出向扱い労働者がいる

自社が偽装出向と見なされないためにも、下記の3つのポイントをしっかりと押さえておきましょう。

  • ・ポイント1:出向元が利益を得ていないかを確認する
    根拠のある支払いであれば問題ありませんが、グループ内の出向であっても出向先から出向元に給与以外の支払いがある場合などは、労働者派遣と見なされる可能性が高くなります。また、グループ企業でもなく資本関係もない企業への出向、あるいは出向者の受け入れも、利益を得ていると判断される可能性があります。このように細かい部分を確認することも重要です。
  • ・ポイント2:事前に契約内容を確認する
    労働者を受け入れる前に、改めてその労働者たちがどのような就業規則で自社に来ているのかを確認するようにしましょう。「大丈夫だろう」というのが一番危険です。必ず、派遣会社と交わした契約書に書かれている内容を確認するようにしましょう。
  • ・ポイント3:実態を把握する
    労働形態が異なる人に対して、どのような指揮命令系統が正しいのかを認識しましょう。そのうえで、実際に働く労働者の勤務実態が契約に沿っているのかを確認します。また、働いているうちに契約と実態がねじれた状態にならないよう、定期的に確認することも重要です。

出向と派遣の違いを理解してトラブルを回避する

出向と派遣は、どちらも出向先・派遣先の会社の指揮命令系統に従って働く形式のため、見た目に違いが分かりにくいところがあります。そのため、偽装出向は発覚しづらく、問題となっています。知らずに偽装出向の状態とならないためにも、出向と派遣の違いをしっかりと認識して、無用なトラブルを避けるようにしたいものです。