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アウトソーシングとは? 意味や派遣契約との違い、メリット・デメリットなどを簡単に解説

アウトソーシングとは? 意味や派遣契約との違い、メリット・デメリットなどを簡単に解説

企業が外部に業務委託することを「アウトソーシング」といいます。近年はBPOやITO、KPO、SPOといった新しい手法も注目されています。本記事では、アウトソーシングの意味や種類、注目されている理由、メリット・デメリット、派遣など他の契約とアウトソーシングの違いについて簡単に説明します。

アウトソーシングとは

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アウトソーシングとは、必要な人材やサービスを外部(アウト)から調達(ソーシング)し、業務を効率的に進める経営手法です。「業務の一部を外部に任せること」を意味しており、「業務委託」「外注」「外部委託」とも呼ばれています。従来は会計・財務や情報システムなど、主に専門分野の業務委託をする場合に使われていた言葉ですが、現在はあらゆる業種で活用されるようになり、言葉の定義も広がっています。

 

アウトソーシングの仕組み

アウトソーシングは、「委託側企業」(依頼する側)と「受託側企業」(依頼される側)の契約によっておこなわれます。
受託側企業は「アウトソーサー」、または「アウトソーシー」と呼ばれる場合があります。また、委託側企業の子会社や関連企業に人材やサービスを提供する場合も、アウトソーシングと呼ばれる場合があります。

 

アウトソーシングが注目されている理由

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アウトソーシングの需要は、年々高まっています。これには、大きく3つの理由があると考えられます。

人手不足が深刻化している

日本は少子高齢化が進み、人口減少が始まっています。多くの企業が採用難に苦しみ、慢性的な人手不足に陥っています。そのため必要な人材やサービスを外部に委託する企業が増えているといわれています。

生産性向上と業務効率化が求められている

日本は労働生産性が低下傾向にあります。日本生産性本部によると、2020年における日本の労働生産性は、G7(主要先進国)の最下位でした。生産性の向上は、競争力アップやコスト削減などさまざまなメリットがあり、企業の継続・発展における最重要課題といわれています。生産性を上げ、効率化を図るためにも、業務の一部を外部に任せるアウトソーシングに注目が集まっています。

専門家を活用し競争力を強化する

日本は国際競争力も低下しています。国際経営開発研究所 (IMD)が発表した「世界競争力年鑑 2021」によると、日本は64カ国中31位でした。企業の競争力アップには、ITやDXなどの技術革新による対応が不可欠となっていますが、技術開発や設備投資、人材育成には多大な時間やコストがかかります。そのため、外部の専門企業を活用して、競争力を強化する企業が増えているようです。

アウトソーシングの種類(手法)

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アウトソーシングには、さまざまな種類があります。近年注目されているのは、業務プロセスごと外部に委託する「プロセスアウトソーシング」と呼ばれる方法です。代表的な4つの手法を紹介します。

BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)

ビジネスの業務プロセス全体を外部に委託する経営手法です。従来のアウトソーシングが「業務の一部」を短期的に委託するのに対して、BPOは「広範かつ専門的な業務」を長期的に委託するのが特徴です。

たとえば、給与計算だけを外部に業務委託するのではなく、経理・財務部門をまるごと業務委託するなど、事業設計から運用まで、業務を一括して外部に委託することがBPOと呼ばれています。人材採用・育成、総務・経理、受付業務、事務作業、コールセンターなど、BPOは幅広い分野で活用されています。

 

ITO(インフォメーション・テクノロジー・アウトソーシング )

IT分野に関わる業務プロセスを外部に委託する経営手法です。BPOの中でもIT分野に限った業務委託がITOと呼ばれており、パソコン管理、ヘルプデスク業務、システム運用、セキュリティ運用、サーバーなどの運用・管理などが委託可能といわれています。

IT関連は特に急速に変化する分野のため、自社のノウハウやリソースだけでは対応しきれないことが増えてきました。そのためIT分野に特化したITOに注目が集まっています。

 

KPO(ナレッジ・プロセス・アウトソーシング )

情報の収集や分析をはじめたとした、知的業務のプロセスを外部に委託する経営手法です。マニュアル化が困難なデータの収集や加工、分析、示唆など、判断を要する業務の委託がKPOと呼ばれています。

具体的には、知的財産の運用・管理、特許出願における各種調査やデータ収集・分析、株式のリサーチや金融商品の取引手法・リスク管理手法の開発などに活用する企業が増えているようです。

SPO(セールス・プロセス・アウトソーシング)

営業分野におけるアウトソーシングの一種です。営業プロセスの一部またはすべてを外部に委託し、外注先と営業プロセスを分業・協業しながら進めていく経営手法がSPOと呼ばれています。

SPOは、営業業務だけでなく、営業戦略の立案や実行、営業プロセスの分析や課題の洗い出し、営業活動の仕組み化の提案、テストマーケティングなど、営業に関するさまざまな業務の外部委託が可能です。

アウトソーシングのメリット

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では、アウトソーシングには、どのようなメリットがあるのでしょうか。人材活用の効率化、専門技術や知識の活用、生産性向上、競争力アップなど、代表的な6つのメリットを見てみましょう。

・自社人材を育成する必要がない
アウトソーシングを活用すると、人材を育成する必要がなくなります。人材育成は、コストと時間が非常にかかります。新卒入社などの若年層の早期離職は、企業に膨大な採用コストの損失を発生させます。採用や育成、教育のコストを低減できるのは、アウトソーシングの代表的なメリットの1つといえるでしょう。

・専門家の技術と知識を社内に取り入れられる
アウトソーシングは、専門家の技術や知識を活用できます。アウトソーシングの受託側企業には、高度な技術やノウハウが蓄積されていることが多いです。業務委託をすることによって、専門家の技術や知識を自社に吸収することができます。また、受託側企業の豊富なデータベースを活用できるメリットもあります。

・自社の中心業務にリソースを集中できる
アウトソーシングは、自社の中心業務以外は、外部に任せることができます。そのため自社の中心業務にリソースを集中させ、企業の強みとなる新たな技術やノウハウの獲得に注力できるようになります。

・生産性・品質・競争力を高めることができる
アウトソーシングは、人手不足の解消はもちろん、専門技術や知識を持った人材を活用することによって業務を効率化させ、生産性向上の効果が高いといわれています。また、自社の中心業務にリソースを集中させることで、品質やサービスの向上、競争力アップの効果も期待できます。

・技術革新にスピーディーに対応できる
IT分野などで特に顕著なのは、急速な技術革新です。新技術が次々と開発され、システムも刷新されるため、自社のリソースだけでは迅速に対応することが難しくなってきています。外部の専門業者に委託することによって、最先端の技術やシステム、セキュリティにスピーディーに対応しやすくなるでしょう。

・直接雇用より人件費を抑えることができる
正社員などの雇用契約は、給与という固定費が発生します。アウトソーシングは契約期間内の費用が必要となるだけで、従業員を増やさず、業務の維持・拡大に柔軟に対応できます。売り上げや会社の状況次第で報酬も変動でき、退職金や福利厚生なども必要ないため、直接雇用より人件費を抑えることができるでしょう。

アウトソーシングのデメリット

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アウトソーシングには、上記のようにさまざまなメリットがあるといわれていますが、いくつかのデメリットも指摘されています。導入する際の検討事項として確認しておきましょう。

・社内に業務遂行のためのノウハウが蓄積されない
アウトソーシングは、専門業者に業務委託することで専門技術や知識は蓄えられますが、それを活かすための経験や運用手法が社内に蓄積されないリスクがあります。「委託先と密にコミュニケーションを取る」「どのように業務を進めているか記録を残す」「重要な業務に関しては自社で人材を育てる」「専門部署を子会社化して外注する」など、自社にもある程度のノウハウを蓄積していく戦略が必要となるでしょう。

・業務によっては、コストが高くなる場合がある
アウトソーシングは、必ずしもコスト削減につながるとは限りません。業務委託は、自社内で効率化が進んでいる業務に関しては、コストが高くなる場合があります。また、同じ業務でも派遣スタッフを活用したほうがコストを削減できる場合があります。社内で対応するか、外部委託をするか、派遣スタッフを活用するか、業務内容ごとに慎重に検討して、適切な判断をすることが必要です。

・業務遂行の実態が不透明になりやすい
アウトソーシングは、外部に業務を委託するため、仕事のプロセスを直接確認しにくくなります。そのため、業務遂行の実態が不透明になりやすいリスクがあります。アウトソーシングをする場合であっても、外部の担当者とは綿密なコミュニケーションを図り、常に状況を把握することが必要です。

・受託側企業から情報が漏洩する可能性がある
アウトソーシングは、企業機密や個人情報を他社と共有する場合があるため、受託側企業からの情報漏洩リスクもあります。受託側企業で慎重にセキュリティ対策を施していても、従業員のモラルが低い場合は、リスクがゼロにはなりません。アウトソーシングをする場合は、情報漏洩を防止する対策が必要なのはもちろん、発注先の選定を慎重におこなうことが重要です。

アウトソーシングを取り入れる際の注意点

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アウトソーシングを取り入れる場合は、以下の2点にも注意しましょう。

・現状の課題を把握・分析する
自社が直面している課題を把握し、多角的に分析することが重要です。自社の課題を解決する方法は、アウトソーシングだけとは限りません。たとえば人手不足が課題であれば、業務委託以外にも、中途採用や配置変更、派遣スタッフの活用など、複数の解決策が考えられます。採用や育成に関するコスト、業務効率化の効果、自社でのノウハウの蓄積など、幅広い視点から検討して、課題解決の方法を探りましょう。

・委託する業務の決め方
企業の業務には、「コア業務」と「ノンコア業務」の2種類があるといわれています。アウトソーシングに向いているのは、一般的には「ノンコア業務」の定型業務とされています。

           特徴

コア業務
成果や利益を生みだす直接的な業務
・定型化しにくく、再現性が低い
・専門性や業務の難易度が高く、高度な判断が必要

ノンコア業務
コア業務を支援するための業務
・定型化しやすく、再現性が高い
・専門性や業務の難易度が低く、高度な判断は不要

定型業務とは、全体の流れや作業手順が決まっている業務のことです。恒常的に発生する、いわゆるルーティンワークを指します。

営業職でいえば、営業戦略の立案や目標設定などは「コア業務」、営業活動は「ノンコア業務」の定型業務といえるでしょう。「定型化しやすく、再現性が高い」、また「専門性や業務の難易度が低く、高度な判断は不要」と考えられる業務は、アウトソーシングに適しているといわれています。

ただし、前述したように、近年では「SPO」と呼ばれる、営業戦略の立案・実行も含めた営業プロセス全体のアウトシーシングも増えてきています。これは営業職に限った話ではありません。

近年は、自社にノウハウのない専門分野の業務の円滑な進行や技術革新への対応、生産性の向上や競争力アップ、自社のリソースをコア事業に集中させることなど、アウトソーシングの目的も多様化しています。自社の課題を解決するためには、どの手法が適切なのか、慎重に検討してみてください。

アウトソーシングと労働者派遣の違い

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派遣契約とは、派遣スタッフが派遣会社(派遣元)と雇用契約を結び、実際に働く企業(派遣先)で就業する働き方です。アウトシーシングと派遣契約には、大きく3つの違いがあるといわれています。

① 対価を払う対象
アウトソーシングは「業務」や「成果物」に対して対価を払います。一方、派遣契約は「労働」に対して対価を払います。

② 契約方法
アウトソーシングは、委託側企業(自社)が受託側企業(外注先)と契約を結び業務を委託します。一方、派遣契約は、派遣会社と契約を結び、必要な人材を派遣してもらいます。

③ 指揮命令系統
アウトソーシングは、業務委託後は基本的には直接指示することはありません。作業スペースや必要な設備、業務をおこなう人材の管理などは、すべて受託先企業がおこないます。一方、派遣契約は、自社で作業スペースや設備を用意し、業務についても自社で直接指示をおこないます。

 

アウトソーシングの諸形態

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アウトソーシングには、さまざまな形態があります。

【外注】
外注とは、業務を「外部に発注すること」を指す幅広い概念です。その点では、アウトソーシングとの違いはありません。ただし、近年使われている「アウトソーシング」というワードは、「企業価値を維持・向上させるために外部リソースを活用する」という意味で使われることが多くなっています。

そのため、外注の目的は「業務に必要なコストダウン」、アウトソーシングの目的は「企業(自社)の価値を維持・向上させること」であり、「目的」が異なるという解釈をされることが増えてきました。

また、外注とは「企業(自社)の指示通りに業務を遂行すること」、アウトソーシングとは「専門性などの戦略を持って遂行すること」と、そもそもの定義が異なるという考え方も広がりつつあります。

【業務委託】
業務委託とは、従業員ではなく外部の第三者に業務を任せることをいいます。人手が不足しているとき、あるいは専門の知識やスキルが必要なときに、業務委託をするケースがあります。業務を委託する業者との間で業務契約書を結び、契約内容に基づいて業務を遂行してもらうことになります。

多くが業務単位での契約となり、依頼した目的を達成、あるいは必要としていた期間が終了したとき、委託者(注文主)と受託者(請負業者)の双方合意のうえで業務委託は終了します。

【請負契約】
請負契約とは、企業が業務をアウトソーシングする際の契約形態の1つです。請負契約の特徴は、「成果物の完成」を約束する契約であること。契約書によって定められた「期限」までに「仕事を完成して、成果物を納めてもらう」ことに対して報酬を支払います。

請負契約と業務委託の違いは、目的です。請負契約は「仕事の完成」が目的で、業務委託は「業務の処理」をおこなうことが目的である点が異なります。なお、請負契約は、企業(自社)が直接指揮命令をすることはなく、労働管理は請負業者がおこなうという点については、業務委託と変わりません。

【クラウドソーシング】
クラウドソーシングとは、インターネットを通じて、必要とするサービスやアイデア、成果物などの寄与を募る手法です。ビジネスの世界では、「不特定多数の人に業務を委託する雇用形態」という狭義の意味でも使われることが増えてきました。

狭義の意味のクラウドソーシングとアウトソーシングの違いは、「業務を受託する対象」です。クラウドソーシングはフリーランスが受託することが多いのに対して、アウトソーシングは、その業務における高い専門性を持った専門業者やコンサルタントが受託する点が異なるといわれています。

また、外注と同様、クラウドソーシングは「戦略性の必要がない業務に利用すること」を指すのに対して、アウトソーシングの「専門性などの戦略を持って遂行すること」という考え方も広がりつつあります。

【コ・ソーシング】
コ・ソーシングとは、アウトソーシングの一種で、「社外に業務の一部を委託する際、委託側と受託側の企業が、それぞれ対等な立場で利益を配分する経営手法」を指します。

従来のアウトソーシングは、受託側企業に業務を全面的に委託するため、自社にその業務に関するスキルやノウハウが蓄積されないというリスクが指摘されていました。

コ・ソーシングは、委託する側の人員も業務に参加するため、受託側の持つ専門的な知識やノウハウ、技術、技能を習得できるため、自社でもその業務に関するスキルやノウハウが蓄積しやすくなります。また、受注側企業にも、事業が成功すれば追加的な利益を受けられる、というメリットがある点も異なります。

【マルチソーシング】
マルチソーシングとは、アウトソーシングの一種で、「業務分野ごとに最適な受託企業を選択し、複数の受託企業と契約を結ぶ形態」を指します。

従来のアウトソーシングは、特定の企業に業務を委託することで、いわゆる丸投げの状態に陥りやすく、管理能力の低下やコスト削減の意識の低下などを招きやすいデメリットがあると指摘されてきました。

そのため近年は「業務ごとに最適な委託先を検討し、適切に統括管理をおこなう」というマルチソーシングの考え方が注目されています。一般的なアウトソーシングとの違いは、「業務を委託する対象の選び方」です。

まとめ

アウトソーシングは、自社のリソースを有効に活用し、生産性向上や競争力アップ、技術革新への対応など多くのメリットが期待できる経営手法です。委託する業務内容や運用の仕方によってはリスクも指摘されていますが、近年はそれを補うコ・ソーシングやマルチソーシングといった手法も登場しています。派遣や請負など、他の外部リソースとも比較して、自社の課題解決に最適な手法を選ぶことをおすすめします。

ライタープロフィール
鈴木にこ/ライター
求人メディアの編集者を経て、フリーランスとして活動中。派遣・新卒・転職メディアの編集協力、ビジネス・ライフスタイル関連の書籍や記事のライティングをおこなう。