人材派遣の職場見学とは?流れや注意点・準備事項・質問例を紹介
派遣のお仕事では、通常の従業員の採用のように「面接」というプロセスはありません。その代わり「職場見学」といわれる派遣スタッフが派遣先企業を訪問して、業務内容などを聞いたりできる機会があります。本記事では、職場見学の流れや、実施する際の注意点、派遣スタッフからのよくある質問例などを紹介。
目次
■職場見学とは
職場見学は、派遣スタッフが就業を始める前に職場(企業)に訪問して、業務内容や職場環境を理解し、就業への不安や疑問を解消するための大切な機会になっています。これは就業前にミスマッチを防ぐための重要なプロセスです。また派遣先企業の担当者にとっては、派遣スタッフと業務内容や職場環境についての理解を深め合う場であり、双方が円滑にスタートを切れるようサポートする役割を担います。ただし、職場見学は「採用面接」とは異なるため、選考や評価をおこなう場ではないことは留意すべきです。その理由は、派遣先企業にどの派遣スタッフを就業させるかは、雇用関係にある派遣元企業が決めるためです。派遣先企業が派遣スタッフを特定する行為である面接などをおこなうことは法律で禁じられています。
■職場見学の流れ
職場見学は、次のような流れで進めるのが一般的です。派遣スタッフが業務内容や環境を把握しやすいよう、説明や見学の時間を十分に確保しておこないましょう。
1.職場見学の目的・進行の確認
派遣元と「見学はあくまで業務説明と職場環境の確認の場とする」ことを共有し、誰が出席し、何を話すかを事前に決める。そして派遣元担当者と同席の上実施すること。
2.業務内容、業務に関連する説明
派遣スタッフが実際に担当する業務の内容について、具体的に説明します。日常の業務フローや1日のスケジュールなどを伝えることで、どのような業務をおこなうかをイメージしやすくなります。
3.指揮命令者の紹介
派遣スタッフが就業中に誰に指示を仰げばいいのか、分からないことがあれば誰に聞けばいいのか、指示や教育をおこなう担当者を紹介します。あいさつも兼ねてお互い会話ができれば、派遣スタッフも安心感を持って臨めます。
4.質疑応答
派遣スタッフから派遣先企業への質問
詳細な勤務条件、職場の雰囲気、従業員の年齢層、業務の確認手順、福利厚生など、幅広い質問があがります。派遣スタッフが不安や疑問を解消できるよう、質問には丁寧に対応しましょう。
派遣先企業からの派遣スタッフへの質問
派遣先企業が派遣スタッフに質問をする際は、派遣法に基づき面接や特定行為とならないよう注意が必要です。スキルや経験を評価する直接的な質問は避け、業務内容の説明を補う質問にとどめるようにしましょう。
5.職場環境の見学・挨拶
必要に応じて、派遣スタッフを職場内に案内し、職場のルールや作業エリアや扱う機材などを説明します。また、職場の雰囲気を感じ取ってもらうために、同じ職場スタッフへの挨拶ができる場を設けるのも良いでしょう。
6.職場見学終了後の対応
職場見学が終わった時点では、派遣先企業から派遣スタッフにその場で働く意思を確認したり、派遣先企業側の意思表示をすることは避けましょう。派遣スタッフの就業の意思は、見学終了後に派遣元企業を通じておこなわれます。
■職場見学の実施前の準備方法
企業が職場見学を実施する前には、見学者が業務内容や職場環境を正しく理解できるよう、事前準備を整えておくことが重要です。まず、見学時に案内する業務内容や就業場所、設備などを整理し、当日スムーズに説明できるようにしておく必要があります。また、見学可能な範囲と見せるべきでない情報をあらかじめ明確にし、個人情報や機密情報への配慮も欠かせません。
あわせて、対応する担当者を決め、見学の流れや説明内容を事前に共有しておくことで、説明のばらつきを防ぐことができます。見学時間や動線を想定しておくことも、見学者にとって分かりやすい職場見学につながります。こうした準備を行うことで、企業側の印象向上だけでなく、就業後のミスマッチ防止にも役立ちます。
■職場見学で企業がやってはいけないこと
職場見学の際、派遣先企業が注意すべき点は「派遣スタッフの特定行為をおこなわない」ということです。派遣法の第26条6項で規定されている通り、派遣スタッフの特定行為は禁止されています。これは派遣スタッフと派遣先企業の間に雇用関係がないためであり、選考や評価行為としての質問や行為はしないようにしましょう。
以下の行為は面接行為とみなされるため、派遣スタッフに要求・要請することはできません。
履歴書・職務経歴書の提出要請
一般的な社員の採用では、当たり前におこなわれている履歴書や職務経歴書の提出ですが、派遣スタッフを受け入れる場合は、禁止されています。スキルシートやキャリアシートという名称であっても、履歴書や職務経歴書と同等の内容の提出を求めると、雇用契約を前提とした評価行為と見なされる恐れがあります。あくまで、業務に必要な技術や条件のすり合わせ、スキルなどに限ります。
筆記試験・適性検査の実施
適性を測るための試験や検査をおこなうことは、スキル評価を目的とした面接行為とみなされ、禁止されています。たとえその内容が業務に特化した内容であったとしても、それが派遣スタッフの特定につながってしまうためおこなうことはできません。
面接の実施
職場見学の場において、派遣先企業が面接を行うことは禁止されています。職場見学は、あくまで業務内容や職場環境を派遣スタッフに説明し、就業後のミスマッチを防ぐことを目的としたものであり、選考を行う場ではありません。そのため、質問内容や進め方によっては、形式上は職場見学であっても、実質的に面接や選考と判断される可能性があります。
例えば、これまでの職務経歴を詳細に確認したり、業務遂行能力を評価するような質問を行ったりすることは、面接とみなされるおそれがあります。また、回答内容を基に就業可否を判断する行為も禁止されています。派遣先企業は、職場見学が選考の場ではないことを十分に理解し、業務説明や職場紹介にとどめるよう注意する必要があります。
派遣スタッフの指名
他の会社に派遣されていたAさんという人が優秀なので、「Aさんにぜひ就業してほしい」といった指名は認められません。なぜなら派遣スタッフとの雇用関係にあるのは派遣元企業で、派遣先企業ではないからです。派遣元企業に選任された派遣スタッフを受け入れることになります。
派遣先企業による派遣スタッフへの合否通達
派遣先企業は、見学時に合否の判断を伝えることや、派遣スタッフを選定することはできません。合否の通達をしてしまうと、禁止されている特定行為をおこなったことになります。
個人情報や業務と無関係な質問
年齢、性別、住所、出身地、家族構成など、個人情報を聞くことはもちろん、学歴や転職歴など業務に関係のない質問をおこなうこともできません。禁止されている面接や選考、特定行為につながります。
■職場見学で派遣スタッフからよくある質問例と対応方法
職場見学では、派遣スタッフからさまざまな質問が寄せられます。派遣スタッフが安心して働き始められるよう、適切な回答を心がけましょう。
業務の引継ぎ方法や引継ぎ期間について
業務を開始するまでのサポート体制を説明することで、派遣スタッフが安心して業務に取り組む助けとなります。
職場の就業人数や同じ業務を担当する人数について
職場の規模やチームの構成を具体的に伝え、派遣スタッフが働きやすさをイメージできるようにしましょう。
業務の確認方法について
派遣スタッフにとっては、はじめてのことばかりなので、誰にどのような確認をすればよいのかは、業務内容の説明の際におこない、不安を解消してあげましょう。
派遣スタッフが利用できる福利厚生について
2020年4月1日に労働者派遣法が改正され、「同一労働同一賃金」が導入され、派遣スタッフと正社員が受けられる福利厚生で差がなくなりました。どのような福利厚生があるのか興味・関心を持っている派遣スタッフは一定数いるので、丁寧に回答することで、働きやすさを伝えることができます。
まとめ
人材派遣における職場見学は、派遣スタッフが業務内容や職場環境を理解し、就業後のミスマッチを防ぐことを目的とした重要な機会です。一方で、派遣先企業には守るべきルールがあり、職場見学を選考の場として扱うことは認められていません。履歴書や職務経歴書の提出要請、筆記試験や適性検査の実施、面接とみなされる行為、派遣スタッフの指名や合否の通達などは、いずれも禁止されています。
企業が職場見学を実施する際は、業務説明や職場紹介に徹し、派遣会社を通じた適切な手続きを行うことが重要です。制度の趣旨を正しく理解し、ルールを遵守した職場見学を行うことで、派遣スタッフとの円滑な就業開始と、信頼関係の構築につなげることができます。
<スタッフサービスグループ>
スタッフサービスグループでは、企業の採用活動や人材活用に関する課題解決を目的に、人材派遣の基礎知識や関連法律、マネジメント、働き方などについて、実践的な情報をコラム形式で発信しています。
