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悩んだら自分の「やりたい!」に従って動く。好奇心旺盛なデザイナーが築いてきた直感的なキャリアとは

悩んだら自分の「やりたい!」に従って動く。好奇心旺盛なデザイナーが築いてきた直感的なキャリアとは

将来を見据えて計画的に昇進したり転職したりすることだけが、キャリアというわけではありません。その時の自分の欲求のままに、直感的に歩んでいくのもキャリアの築き方のひとつです。

現在、株式会社スポットライトでデザイナーを務める駒田佳子さんはこれまで、人生の岐路に立たされるたび、自身の好奇心に従って選択を繰り返してきました。駒田さんが築いてきた、欲求や好奇心のまま進む直感的なキャリアとはどんなものなのでしょうか。

英語のテストをきっかけに
アメリカ留学を決意した学生時代

悩んだら自分の「やりたい!」に従って動く。好奇心旺盛なデザイナーが築いてきた直感的なキャリアとは_1

― まず、これまでの経歴を教えてください。

高校卒業後、アメリカに留学してコミュニティカレッジという2年制の大学に進学しました。その後、グラフィックデザインを学ぶために4年制大学に編入しました。卒業から約1年間は、サンフランシスコでデザイナーとして働いていたのですが、ビザが切れてしまったので泣く泣く帰国しました。日本に帰ってきてからは、2年間webメディアのエディターを務めたあと、スポットライトに入社して再びデザイナーとして働いています。

― アメリカの大学に進学しようと思ったのはなぜでしょうか?

実は高校生のとき、すでにアメリカ留学を経験していたんです。もともとアメリカのドラマや映画が好きだったのですが、中学校の英語のテストですごくいい点数をとったとき「これは留学するしかない」と思って。高校2年生の夏から1年間、アメリカで生活して現地の高校に通っていました。高校3年生の夏に帰国したのですが、日本の大学を受験するのはもう間に合わないな、と(笑)そのときは「このままずっとアメリカで生活したい!」と思っていたので、アメリカのコミュニティカレッジに進学することにしました。

― コミュニティカレッジとは……?

コミュニティカレッジは2年制の公立大学です。門戸が広いうえに学費も安いので、進路が決まっていなかったり高い学費が払えなかったりする学生はもちろん、社会人や主婦までいろいろなバックグラウンドを持つ人が通っています。

― なるほど。そこから4年制の大学に編入しようと思ったのはどうしてですか?

コミュニティカレッジでは一般教養を主に学んでいたのですが、デザインの勉強をしたいと思うようになって。アメリカの大学は単位制なので、コミュニティカレッジを卒業すれば4年制大学の3年生として編入できるんです。

― デザインを学びたいと思った理由を教えてください。

アメリカで生活するなかで、身の周りにあるポスターやパッケージのデザインに刺激を受けたのが大きかったです。街中に貼ってあるポスターとかジュースのパッケージとか。子どものころから漫画が大好きで自分でも絵を描くことが多かったので、つい目にとまって。人の生活のなかに溶け込むグラフィックデザインが好きで「自分でも作ってみたい!」と思うようになりました。

帰国後、未経験で『NYLON JAPAN』の
アシスタントウェブエディター(編集者)に。
刺激的で楽しい日々を過ごす

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― 「グラフィックを作ってみたい」という欲求に従って、大学でデザインを学ぶことに決めたのですね。卒業後はどんな道に進んだのでしょうか?

アメリカの大学を卒業すると、その時点で1年間の就労ビザがもらえるんです。ですから卒業後も日本には帰らず、グリーティングカードの制作を行うサンフランシスコの会社でデザイナーとして働きはじめました。アメリカには、なにかのお祝いや記念日のたびにカードを送り合う文化があって。私が勤めていた会社は、オリジナルのグリーティングカードが作成できるサービスを提供していました。

― 具体的にどんなデザインを担当していたのですか?

カードの色を変えたり、テキストを追加したり、写真を入れたり……。一からデザインしたり、グラフィックを作ったりという仕事ではなかったのですが、アメリカで働いてるという事実がとてもうれしくて。ビザが切れて帰国するまで働き続けました。

― ビザが切れたことで帰国を決意した、と。

大学卒業後にもらえる1年間のビザは延長することができないので、勤務している会社に新しく申請してもらわないといけないんです。でも雇ってくれるところがなかなか見つからなくて……。グリーティングカードの会社で仕事を続けることも考えたのですが、やっぱりグラフィックを作りたいという気持ちがあったので、そのまま日本に帰ることにしました。

― 日本に帰国してからは、どんな仕事に就いたのでしょうか?

7年間もアメリカに住んでいたので、はじめは日本の生活に慣れるのが精一杯で。しばらく、ポートフォリオを作ったり、デザイナーイベントに参加したりしながら、少しずつ就職活動を始めました。
 

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― 就職活動はうまく進みましたか?

なかなか思うようにいきませんでしたね。デザイナーとして働きたいという気持ちが強かったんですけど、日本のデザインのトレンドがわからないうえに、周りはスキルの高い人ばかりだったので、デザイン一本で食べていくのは難しいかも……と。それで、英語が武器にならないかなと思い立ちました。

― デザインと英語というふたつのスキルを活かそうと思ったんですね。

デザインも英語も活かせる仕事ってなんだろうって考えたとき、海外メディアの日本版なら、ページのデザインをしたり、記事の翻訳をしたり、活躍できるんじゃないかなって。それで、雑誌『NYLON JAPAN』の編集部の募集を見つけ応募しました。運良く合格することができ、未経験ながらアシスタントウェブエディターとして働くことになったんです。

― エディター職に未経験で採用されることって、なかなか珍しいと思います。

ポートフォリオのひとつとして、自分で作った小さな雑誌を提出したんです。当時大好きだったズーイー・デシャネルというハリウッド女優のファッションやメイク、ライフスタイルをまとめたファンブックのようなかたちで。それを高く評価してもらえたようでした。

― 『NYLON JAPAN』編集部ではどんな仕事をされていたんですか?

私が入社したのがちょうど雑誌のweb版に力を入れていこうとしていた時期だったので、デジタル部署に配属になって。そこで、ニュース記事をかいたり、英語記事の翻訳をしたり、特集の企画を立てたり、SNSの更新をしたりといった仕事をしていました。

― これまでとまったく違う世界に飛び込んで、どんな気持ちでしたか?

ファッション業界はとても刺激的でした。ブランドの華やかなパーティへ行ったり、イベントや撮影で芸能人を見かけたり、有名なデザイナーにインタビューしたり。何よりも、取材を通じて憧れのミュージシャンに会えたのは忘れられない思い出です。

やっぱり作り手に戻りたい!
デザイナーとして復帰することを決意

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― 現在はまたデザイナーとして働いている駒田さんですが、刺激的で楽しかったアシスタントウェブエディターの仕事を辞めようと思ったのはどうしてでしょうか?

いろいろなプロダクトやサービスの情報を発信するなかで、「自分も作り手になりたい!」って気持ちが芽生え始めたんです。それでデザイナーに戻ろうと決意して、転職活動を始めました。

― 転職活動中はどんな企業の採用試験を受けましたか?

主に志望していたのはIT企業のデザイナーだったんですが、エージェントに依頼していたので、紹介されたもののなかからピンと来るものは受けていましたね。なかにはアパレルブランドのPRとかマーケティングとか、デザインに関係のない職種もあったんですが(笑)

― そのなかでスポットライトを選んだ理由を教えてください。

面接がすごく楽しかったんです。だから直感的に、この会社はきっと自分に合うだろうなと感じました。それと、スタートアップならではの勢いやスピード感に惹かれたのもあります。

― 現在はどんな仕事をしているんですか?

スポットライトでは「スマポ」と「楽天チェック」という、自社開発の超音波ビーコンを使用した、来店するだけでポイントがたまるスマートフォンアプリを提供しています。現在、社内にいるデザイナーは2人。そのなかで私は、店舗に置く販促物のデザインをしたり、プロモーション用のランディングページやバナーを作ったり、自社サイトのリニューアルなどを担当しています。もうひとりのデザイナーがアプリのUI/UXをメインに担当しているので、それ以外の業務はほとんど私が担当います。

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悩んだら
自分の好奇心を素直に受け入れてみればいい

― 自分のキャリアを振り返ってみて、改めて大切だと思ったことを教えてください。

自分の「やりたい」という欲求に正直になることです。私は好奇心が強いので、次から次へとやりたいことが出てきてしまうんですよね。なにかやりたいことを見つけたとき「未経験だから」「知識がないから」という理由で悩まず、好奇心に従って挑戦してきたからこそ、いつも楽しく仕事ができてきたのだと思います。実は今も新しくやりたいことがあって。コーディングやプログラミングを勉強して、エンジニアとしてのスキルも身に付けていきたいです。

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― 最後に、自分のキャリアについて悩んでいる人たちに向けて、アドバイスがあればお願いします。

自分の好奇心とか「やりたい」という欲求に、素直に従ってキャリアを築いていくのもありなんじゃないかと思います。それから、なにか挫折したり悩んだりしたときは「新しい視点」を持つことが大切です。私は、アメリカでの生活が大好きだったから、日本に住み続けるつもりはなくて。帰国してすぐは、アメリカにいられないショックで引きこもってたんです。でも、少しずつ外の世界と関わりだしたら、日本での生活も意外と楽しいな、と。アシスタントウェブエディターをやっていたときも、デザインの仕事じゃなくても楽しいと思えましたし。少し視点を変えてみるだけで、自分の中に答えが見つかることもあると思います。

インタビューを終えて

人生の岐路に立たされたとき、自分の「やりたい!」という欲求に従って、次のステップに進んできた駒田さん。きっとこれからも、自身の好奇心に従って、たくさんの挑戦をしていくことでしょう。キャリアについて悩んだとき、頭で考えすぎると八方塞がりになりがちです。そんなとき、自分の欲求や好奇心を素直に受け入れてみることで、新たな道が見つかるのかもしれません。