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58歳で未経験から介護の仕事に挑戦!人生をポジティブに生きるために選んだ、今の働き方

58歳で未経験から介護の仕事に挑戦!人生をポジティブに生きるために選んだ、今の働き方

現在62歳の穴澤弘さんは、58歳のときにそれまで続けていたエンジニアの仕事を辞め、福祉業界に飛び込みました。未経験から介護ヘルパーの資格を取得し、グループホームの正社員として勤務。一度は福祉の仕事を離れたものの、今は派遣スタッフとして自分にあった働き方で仕事に向き合っているそうです。
最近は「アクティブシニア」という言葉が生まれたように、還暦を迎えてもなお元気に働き続けている人たちが増えていますが、穴澤さんはなぜ介護の仕事を第二の人生に選んだのでしょうか。お話を伺いました。

ものづくりから介護業界へ
定年目前で飛び込んだ、第二の人生

58歳で未経験から介護の仕事に挑戦!人生をポジティブに生きるために選んだ、今の働き方_1

― 穴澤さんはもともとエンジニアとしてものづくりのお仕事をされていたそうですね。

学校を卒業して初めて勤めた会社では、建具の設計をしていました。この30年で日本のものづくり業界は色んなことがありましたよね。工場が海外に移転したり、技術革命が起きてそれまで当たり前につくっていたものが、突如ほかのものにとって代わったり。そのたびに色んなメーカーで、ものづくりや改善のお仕事をさせてもらっていたんですが、50歳を過ぎて震災が起き、その時携わっていた電力関係の仕事も大きな見直しが入ることになって、私の仕事もなくなってしまったんです。さすがにこの年で新しく仕事を探すのは厳しいなと思っていました。

― それが、介護の仕事に出会うきっかけになったのでしょうか?

会社を辞める決断をした理由ではありますけど、介護に興味を持ったきっかけは友人の存在ですね。彼は親が有料老人ホームに入居していたんですが、施設と考え方があわずにしょっちゅう揉めていたんです。もっと自分の親が喜ぶような施設はないかと探したものの、理想にあったところはなかなかない。そんな話を仲間内4~5人でしていたら、「自分たちで施設をつくったらどうか」という話になって。それで資格を取るために学校に通い始めたんですよ。

― 58歳で学校に通うなんて、すごいバイタリティですね!

もともと若い頃から興味を持つと夢中になっちゃう性分なので、なんとか資格は取れたんですよ。でも、経験を積もうと思って仕事を探したものの、やっぱりこの年で未経験となると、なかなか見つからない。学校でも「紹介できる施設はありますよ」と言ってもらえたんですが、そこは自宅から遠すぎて今の体力ではちょっと厳しい気がしました。そんな時に、先に就職が決まった友人が働くことになったグループホームを紹介してくれて、なんとか僕も働き始めることができたんです。

介護は、自分の趣味やこれまでの経験も活かして働ける仕事

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― では、最初は正社員として介護の仕事をはじめられたんですね。

そうですね。そこの施設長は教育にも熱心で非常に親切な人だったから、ずいぶんとお世話になりました。介護って、心身ともにきついイメージあるでしょ?だから施設長は、スタッフ一人ひとりに向き合って話を聞き、良い職場にしていこうという方針でした。僕も年齢的に夜勤はあまりできないからと相談して、回数を減らしてもらっていましたね。

― 未経験からはじめて、仕事上苦労したことはありますか?

慣れないうちは全部が大変でしたよ。でも、入居者さんの身の回りのお世話をすることに戸惑う人も多いようですけど、僕には9歳下に双子のきょうだいがいて、小さいころは二人の世話を手伝ってきたから、あまり抵抗はなかったですね。料理をするのも料理学校に行ってたころの知識を活かしたり、従兄弟や友人の飲食店を手伝ったこともあるので利用者さんと一緒に作ることにも慣れていました。絵を描くのも好きなのでお手製の塗り絵シートをつくって喜ばれることもありましたね。介護施設向けの市販の娯楽品って、人によっては簡単過ぎちゃってつまらない場合もあるんですよ。なので、自分が得意なことを活かしてアレンジすると喜ばれることは多いですね。

これまで穴澤さんがやってきたことが活かせている感覚なんですね。

確かに色んなことをやってきましたから、人より知っていることは多いかな。仕事でも、扱うものが変わるたびに勉強を重ねてきました。ただ工場でずっと同じ仕事をしているだけだったら、50代で介護の仕事に飛び込もうとは考えなかったかもしれないです。

還暦を過ぎ、
柔軟な働き方を求めて派遣の道へ

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― 最初に勤めたグループホームでは大活躍だった様子ですが、退職されたのはなぜですか?

そこでは60歳になると就業規則上、嘱託扱いになり、給料も1割減ってしまいました。ただ、夜勤はなくなるという話でそれは良かったのですが、この業界は慢性的な人手不足だから、「悪いけどもうちょっと夜勤に入ってほしい」と言われてしまって。少しずつ自分の希望とあわなくなってきたんです。

― しばらく介護の仕事を離れていますが、今は再び戻ってこられていますよね。

郵便局で配達の仕事をしてみたのですが、思った以上に大変で、体力がついていかなかったんです。仕事である以上、大変なことは介護だけの話じゃないということですよね。以前のグループホームの人たちとは付き合いが続いていたので、「戻っておいでよ」と誘ってもらってはいたのですが、もう一回戻って同じことになるのも嫌だしと迷っていました。

― それで派遣の道を選ばれたんですか?

迷っているときに、たまたま介護や医療を専門とする派遣会社の「スタッフ登録会」の広告を見たんです。どうせならグループホームだけでなく、有料老人ホームや特別養護老人ホームなど色々な施設で働いてみたかったんですが、自力で色々経験しようとしたら、「入って辞めて」を繰り返さなきゃいけないでしょ?派遣なら、契約期間ごとに自分の仕事を見直せる機会もあるし、働き方や就業場所も自分の希望が叶いやすいかなと思いました。やっぱり僕の年齢で、条件にあうところを自分で探すのは大変ですしね。

妻と二人の生活も楽しみながら、
「家族の介護」にも備えておきたい

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― 穴澤さんは施設のレクレーションで趣味の社交ダンスを披露されたりもしているそうですね。

以前勤めていたグループホームから、クリスマス会で「社交ダンスを踊ってくれ」と頼まれて踊りました。趣味ではじめて、もう30年くらいですね。最初は映画の「Shall We Dance?」みたいに妻には内緒ではじめて、ある時バレちゃって妻が「私もやる!」と。それ以来、夫婦でペアを組んでます。仕事が忙しかったり、妻がケガをしたりで、踊らない時期もあったけど、大会に出たりもしていますよ。

― ご夫婦で打ち込める趣味があるって素敵ですね。他にも共通の趣味はあるんですか。

2人で旅行に出かけることは多いですね。去年は東北に行きましたし、今年は伊豆に行く予定。この次は北海道に行けたらいいなと思っています。趣味に使う時間を比較的持ちやすいのも、今の働き方ができるおかげですね。僕は興味を持ったらなんでもやってみたくなるんですよ。料理や書道とかもそう。実際に見て教えてもらうことで、もっとやってみたくなるんです

― そんな風にアクティブな生き方をしているからこそ、今も元気に働かれているんですね!いつまで働こうかというイメージはありますか?

年上の友人は71歳でまだ働いている人もいますから、みんなまだまだ元気。僕も65歳までは今の働き方を続けて、それ以降も週3~4日くらいのペースで働き続けるのが理想です。それに介護ってみんなにとって他人事ではないですよね。うちの妻も高齢の両親を心配しているようで、介護施設のチラシを見ては赤ペンで気になるところに丸をつけたりしていて、将来のことを気にしているようです。いつか利用する日がくるかもしれないから、その時は自分がこの仕事をしているからこそ、ベストな選択ができるようにしてあげたいと思っています。