閉じる

働き方改革推進支援助成金とは?各種コースの解説

働き方改革推進支援助成金とは?各種コースの解説
働き方改革推進支援助成金とは、働き方改革に取り組む中小企業を対象とし、成果目標の達成に応じた取り組みによって各種コースに分かれている助成金制度です。本記事では働き方改革推進支援助成金を上手に活用できるよう、各種コースの詳細と活用事例を紹介します。

働き方改革推進支援助成金とは

働き方改革推進支援助成金とは?各種コースの解説_1
働き方改革推進支援助成金は「有給休暇取得奨励のルールを設けた」「テレワークを導入した」など、働き方改革に取り組む中小企業事業主を応援する制度のことです。生産性の向上や労働時間の縮減、有給休暇取得の促進といった環境整備を、中小企業がすべて準備するのは大変な労力がかかります。そこで、環境整備に必要な費用の一部が、国から助成金として支給されるのが、働き方改革推進支援助成金です。

支給対象となる取り組みは以下の9つで、いずれか1つ以上の実施が必要になります。

・労務管理担当者に対する研修
・労働者に対する研修、周知・啓発
・外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)によるコンサルティング
・就業規則・労使協定等の作成・変更
・人材確保に向けた取組
・労務管理用ソフトウェアの導入・更新
・労務管理用機器の導入・更新
・デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
・労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新

また、これらの取り組みを実施するための各種コースが国から用意されており、取り組みの内容や支援される金額が異なります。
※団体支援コースは取り組み内容が異なります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000200273.html

働き方改革推進支援助成金を支給申請するには、事業実施計画書とともに交付を申請し、交付が決まった後に計画書に即して取り組みを実施して、取組結果とともに支給申請をおこなう必要があります。

働き方改革推進支援助成金の各種コース

働き方改革推進支援助成金には次の4つのコースがあります(2022年1月11日時点 掲載)。

・労働時間短縮・年休促進支援コース
・勤務間インターバル導入コース
・団体推進コース
・労働時間適正管理推進コース

各種コースの取り組み内容を確認しましょう。なお、コースには申請期間が限られているものもあります。事前に自社で実施できるか検討をしてから申請するようにしましょう。

労働時間短縮・年休促進支援コース

労働時間短縮・年休促進支援コースとは、生産性を向上させ、労働時間短縮・年次有給休暇取得促進などの環境整備に取り組む中小企業を支援するための助成金です。

【支給対象となる事業主】
事業主は、以下をすべて満たすことで支給対象者となります。

①労働者災害補償保険の適用事業主であること
②交付申請時点で、「成果目標」1から3の設定に向けた条件を満たしていること
③すべての対象事業場において、交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること

【成果目標の設定】
労働時間短縮・年休促進支援コースの支給を受けるには、すべての対象事業場で以下の成果目標のうちどれか1つ以上を達成する必要があります。

1:すべての対象事業場において、令和3年度または令和4年度内において有効な36協定について、時間外・休日労働時間数を縮減し、月60時間以下、または月60時間を超え月80時間以下に上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届出をおこなうこと
2:すべての対象事業場において、特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、新型コロナウイルス感染症対応のための休暇、不妊治療のための休暇)の規定をいずれか1つ以上を新たに導入すること
3:すべての対象事業場において、時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入すること
※上記の成果目標に加えて、対象事業場で指定する労働者の時間当たりの賃金額の引き上げを3%以上おこなうことを成果目標に加えることが可能

【支給対象となる取組】
また、中小企業は上記の1つ以上の成果目標の達成を目指して、以下の取り組みを1つ以上おこなわなくてはいけません。

・労務管理担当者への研修
・労働者に対する研修や周知・啓発
・外部専門家 によるコンサルティング
・就業規則や労使協定などの作成や変更
・人材確保に向けた取組
・労務管理用ソフトウェアの導入や更新
・労務管理用機器の導入や更新
・デジタル式運行記録計の導入や更新
・労働能率の増進に資する設備や機器の導入、更新

そして、取り組みに必要となった経費の一部が「成果目標」の達成状況に応じ、以下のどちらか低い方の額で支給されます。

・成果目標1~3の上限額及び賃金加算額の合計額
・対象経費の合計額 × 補助率3/4

※参考サイト:働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000120692.html

勤務間インターバル導入コース

働き方改革推進支援助成金とは?各種コースの解説_1_3
勤務間インターバル導入コースとは、勤務間インターバル制度の導入に取り組む中小企業を支援するための助成金制度です。勤務間インターバルとは、労働の後に一定時間以上の休息時間を設けること。勤務と勤務の間に休息できることで、労働者の健康維持を図ることが目的です。事業主は以下をすべて満たすことで支給対象者となります。

【支給対象となる事業主】
①労働者災害補償保険の適用事業主であること
②次のアからウのいずれかに該当する事業場を有する事業主であること
ア.勤務間インターバルを導入していない事業場
イ.既に休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場であって、対象となる労働者が当該事業場に所属する労働者の半数以下である事業場
ウ.既に休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場
③すべての対象事業場において、交付申請時点及び支給申請時点で、36協定が締結・届出されていること。
④すべての対象事業場において、原則として、過去2年間に月45時間を超える時間外労働の実態があること。
⑤すべての対象事業場において、交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること。

【成果目標の設定】
勤務間インターバル導入コースの支給条件として、事業主が事業実施計画において指定したすべての事業場において、休息時間数が「9時間以上11時間未満」または「11時間以上」の勤務間インターバルを導入し、定着を図ることが求められます。具体的には、以下の成果目標のうちどれか1つ以上を達成する必要があります。

1.新規導入
勤務間インターバルを導入していない事業場において、事業場に所属する労働者の半数を超える労働者を対象とする、休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルに関する規定を労働協約または就業規則に定めること

2.適用範囲の拡大
既に休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場であって、対象となる労働者が当該事業場に所属する労働者の半数以下であるものについて、対象となる労働者の範囲を拡大し、当該事業場に所属する労働者の半数を超える労働者を対象とすることを労働協約または就業規則に規定すること

3.時間延長
既に休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場において、当該事業場に所属する労働者の半数を超える労働者を対象として、当該休息時間数を2時間以上延長して休息時間数を9時間以上とすることを労働協約または就業規則に規定すること

上記の成果目標に加えて、対象事業場で指定する労働者の時間当たりの賃金額の引き上げを3%以上おこなうことを成果目標に加えることができます。

勤務間インターバル導入コースの支給条件を満たすには、労働時間短縮・年休促進支援コースと同様の取り組みを1つ以上おこなわなくてはいけません。取り組みに必要となった経費の一部として、以下のどちらか低い方の額が支給されます。

・対象経費の合計額×補助率3/4
・支給の上限額

※参考サイト:働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000150891.html

団体推進コース

働き方改革推進支援助成金とは?各種コースの解説_1_4
団体推進コースとは、中小企業の団体やその連合団体がその傘下にある事業主が労働者の労働条件の改善を目的として、残業時間の削減・賃上げなどに取り組んだ場合に団体や連合団体に支給される助成金です。

【支給対象となる団体】
支給対象となる中小企業の団体やその連合団体は3事業主以上で構成され、以下に該当する事業主団体となります。

◎事業主団体
ア:法律で規定する団体等(事業協同組合、事業協同小組合、信用協同組合、協同組合連合会、企業組合、協業組合、商工組合、商工組合連合会、都道府県中小企業団体中央会、全国中小企業団体中央会、商店街振興組合、商店街振興組合連合会、商工会議所、商工会、生活衛生同業組合、一般社団法人及び一般財団法人)
イ:上記以外の事業主団体(一定の要件あり)

◎共同事業主
共同するすべての事業主の合意に基づく協定書を作成しているなどの要件を満たしていること。

【支給対象となる取組】

団体推進コースの支給条件として、以下の10の取り組みを1つ以上おこなう必要があります。
1.市場調査の事業
2.新ビジネスモデル開発、実験の事業
3.材料費、水光熱費、在庫等の費用の低減実験(労働費用を除く)の事業
4.下請取引適正化への理解促進等、労働時間等の設定の改善に向けた取引先等との調整の事業
5.販路の拡大等の実現を図るための展示会開催及び出展の事業
6.好事例の収集、普及啓発の事業
7.セミナーの開催等の事業
8.巡回指導、相談窓口設置等の事業
9.構成事業主が共同で利用する労働能率の増進に資する設備・機器の導入・更新の事業
10.人材確保に向けた取組の事業

【成果目標の設定】
そのうえで、以下の成果目標を達成しなくてはいけません。

成果目標は、支給対象となる取組内容について、事業主団体等が事業実施計画で定める時間外労働の削減または賃金引き上げに向けた改善事業の取組をおこない、構成事業主の2分の1以上に対してその取組または取組結果を活用することが挙げられます。支給額は取り組みに必要となった経費の一部が「成果目標」の達成状況に応じ、以下のいずれか低い方の額で支給されます。

・対象経費の合計額
・総事業費から収入額を控除した額
・上限額500万円

※参考サイト:厚生労働省 働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000200273.html

労働時間適正管理推進コース

働き方改革推進支援助成金とは?各種コースの解説_1_5
労働時間適正管理推進コースは、労務や労働時間の適正管理を推進する中小事業主を支援するためのコースです。

【支給対象となる事業主】
支給対象となるのは次のいずれにも該当する中小事業主です。

①労働者災害補償保険の適用事業主であること。
②すべての対象事業場において、交付決定日より前の時点で、勤怠(労働時間)管理と賃金計算等をリンクさせ、賃金台帳等を作成・管理・保存できるような統合管理ITシステムを用いた労働時間管理方法を採用していないこと。
③すべての対象事業場において、交付決定日より前の時点で、賃金台帳等の労務管理書類について5年間保存することが就業規則等に規定されていないこと。
④すべての対象事業場において、交付申請時点で、36協定が締結・届出されていること。
⑤すべての対象事業場において、交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること。

【支給対象となる取組】
支給対象となるのは、次のいずれか1つ以上の取り組みを実施した場合です。

1労務管理担当者に対する研修
2労働者に対する研修、周知・啓発
3外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング
4就業規則・労使協定等の作成・変更
5人材確保に向けた取組
6労務管理用ソフトウェアの導入・更新
7労務管理用機器の導入・更新
8デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
9労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
(小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)

【成果目標の設定】
支給対象となる取組は、次の成果目標1~3まで、すべての達成を目指して実施するようにしましょう。

1:すべての対象事業場において、新たに勤怠(労働時間)管理と賃金計算等をリンクさせ、賃金台帳等を作成・管理・保存できるような統合管理ITシステム(※)を用いた労働時間管理方法を採用すること。
※ネットワーク型タイムレコーダー等出退勤時刻を自動的にシステム上に反映させ、かつ、データ管理できるものとし、当該システムを用いて賃金計算や賃金台帳の作成・管理・保存がおこなえるものであること。
2:すべての対象事業場において、新たに賃金台帳等の労務管理書類について5年間保存することを就業規則等に規定すること。
3:すべての対象事業場において、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に係る研修を労働者及び労務管理担当者に対して実施すること。

支給額については、成果目標達成時の50万円を上限額として、取組の実施にかかった経費の一部につき、成果目標の達成状況に応じて支給されます。対象経費の合計額に3/4を乗じた金額が支給されます。

※参考サイト:厚生労働省 「働き方改革推進支援助成金(労働時間適正管理推進コース)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000150891_00001.html

まとめ

 

働き方推進支援助成金は働き方改革に取り組む中小企業を対象とし、目的別にコースが分かれた助成金制度です。働き方改革は国が促進している施策ですので、中小企業の事業者の方も働き方改革推進支援助成金を活用し、積極的に実施していくと良いでしょう。


《ライタープロフィール》
山崎英理夫
人事コンサルタントとして教育研修のプログラム開発、人事制度診断等を提供。また、企業人事として新卒・中途採用に従事し、人事制度構築や教育研修の企画・運用など幅広く活動。この経験を活かし、人材関連の執筆にも数多く取り組む。