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派遣先管理台帳とは?記載事項や作成のルールを徹底解説

派遣先管理台帳とは?記載事項や作成のルールを徹底解説

派遣先管理台帳は、派遣スタッフの労働日や労働時間など、就労実態を記載する書面のことを指します。派遣スタッフが在籍している企業では、この派遣先管理台帳を作成・保管する必要があり、その記載内容の一部を派遣会社に通知する義務があります。本記事では、派遣スタッフの採用を考えている企業の疑問を解消できるよう、派遣先管理台帳について解説します。

※2020年4月1日、いわゆる同一労働同一賃金による派遣法改正に伴い、派遣先管理台帳の記載項目や情報提供内容なども一部変更されています。すでに派遣スタッフが在籍している企業の担当者のみなさまも、今一度ご確認ください。

派遣先管理台帳とは?

派遣先管理台帳とは?記載事項や作成のルールを徹底解説_1

派遣元と派遣先がやりとりをおこなう書類には、労働者派遣基本契約書や労働者派遣個別契約書など複数の書類がありますが、派遣先管理台帳もそのひとつになります。

派遣先管理台帳は、派遣先が、派遣スタッフの労働日、労働時間などの就業実態を的確に把握するとともに、その記載内容の一部を派遣元に報告をするための重要な書面となります。派遣元の派遣会社にとっては、雇用管理の資料となり、派遣先は、受け入れる派遣スタッフごとに作成する必要があります(派遣法第42条)。

また、派遣先管理台帳の記載については、各法定記載事項が確定の都度、おこなわなければならないとされています。

派遣管理台帳の記載事項


派遣先管理台帳の記載事項には、就業日、就業場所、就業時間、派遣先・派遣元責任者などがあり、2020年4月1日以降、「派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度」「協定対象派遣労働者か否か別」の記載が追加となりました。
下記、記載内容と、派遣元への通知する内容をまとめた一覧表を参照ください。

「派遣先管理台帳」記載内容、派遣元への通知内容一覧
  「派遣先管理台帳」記載内容 2020年4月1日追加 派遣元へ通知
  派遣スタッフの氏名  
※派遣スタッフごとに作成
1 派遣元事業主の氏名または名称    
※派遣元事業所の法人名を記載
例:〇〇〇株式会社
2 派遣元事業主の事業所の名称    
※派遣元事業所が支店等であれば、支店名を記載
例:〇〇〇株式会社△△支店
3 派遣元事業主の事業所の所在地    
※電話番号も記載
4 業務の種類・内容  
※可能な限り詳細に記載
5 派遣スタッフが従事する業務に伴う責任の程度
・派遣労働者に役職がある場合はその役職名、
ない場合はその旨(例:役職なし)を記載
・業務の遂行に伴い行使するものとして付与される権限について、
具体的な範囲・程度等(部下の人数、決裁権限の範囲、緊急時に求められる
範囲等、権限がない場合はその旨)を記載
6 有期雇用派遣スタッフか無期雇用派遣スタッフか記載  
派遣スタッフが60歳以上の者であるか記載
7 協定対象派遣労働者か否か別  
・協定対象派遣労働者
・協定対象派遣労働者ではない(派遣先均等・均衡方式)
8 派遣スタッフが労働に従事した事業所の名称と所在地、
そのほか派遣就業をした場所ならびに組織単位
 
9 派遣スタッフが労働に従事した事業所の所在地    
※電話番号も記載
10 派遣元責任者に関する事項    
※電話番号も記載
11 派遣先責任者に関する事項    
※電話番号も記載
12 就業状況  
・派遣就業した日
・派遣就業した日ごとの始業・終業時間、および休憩時間
13 派遣スタッフから申し出を受けた苦情の処理状況    
※苦情の申し出を受けた年月日、苦情の内容および苦情の処理状況について、
苦情の申し出を受けて苦情の処理に当たった都度、記載
※苦情があった際に記録できるよう「受付日」「苦情内容」「てん末」の欄を設ける
14 派遣スタッフに係る社会保険、雇用保険の被保険者資格取得届の提出の有無    
※「無」の場合はその具体的な理由を付記し、手続き終了後は「有」に書き換える
15 教育訓練をおこなった日時および内容    
※OJTであって計画的におこなわれるものおよびOff-JTの実施日・内容を記載
16 ※紹介予定派遣の場合のみ記載    
紹介予定派遣に関する事項
①紹介予定派遣である旨
②派遣労働者を特定することを目的とする行為をした場合には特定の基準
③採否結果
④職業紹介を受けることを希望しなかった場合または職業紹介を受ける者を
雇用しなかった場合にはその理由を記載

日雇い派遣をおこなう場合


日雇い派遣をおこなう場合で17.5業務(※)に該当する場合は、条番号および号番号の記載も必要です。

(※)17.5業務
政令で定めるソフトウエア開発や機械設計、翻訳や通訳などの専門性の高く、適切な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認められる業務のこと。

派遣先管理台帳の保管期間は派遣終了日より3年間


派遣先管理台帳は、派遣先では派遣社員の終了など派遣契約終了日から3年間、保存する必要があります(派遣法第42条第2項)。

派遣先管理台帳 追加記載内容について

派遣先管理台帳とは?記載事項や作成のルールを徹底解説_2

派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度


派遣スタッフが従事する業務に伴って行使するものとして付与されている権限の範囲・程度などを指します。
責任の程度については、具体的にどこまで詳細に記載すればよいのか、迷われる方もいるでしょう。労働者派遣事業関係業務取扱要領(2020年4月1日以降)には、以下のような記載があります。
 
チームリーダー、副リーダー等の役職を有する派遣労働者であればその具体的な役職を、役職を有さない派遣労働者であればその旨を記載することで足りるが、派遣元事業主と派遣先との間で、派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度について共通認識を持つことができるよう、より具体的に記載することが望ましい。

[責任の程度を示す記載例] 
・責任の程度:役職を有さない場合
役職を有さない(所定外労働なし、部下なし)

・責任の程度:役職を有す場合
副リーダー(部下2名、リーダー不在の間における緊急対応が週1回程度有

協定対象派遣労働者か否か別


労使協定方式(※)を採用する派遣労働者に限定するか否かを記載します。ただし、「派遣労働者を協定対象労働者に限定しない」もしくはその記載がない場合は、派遣先の比較対象労働者の待遇等に関する情報提供(主に賃金等の情報)が必要となります。

派遣スタッフが全員労使協定方式を採用している場合は、必ず「派遣労働者を協定対象労働者に限定する」と記載しておく必要があります。

(※)労使協定方式
労使協定方式とは、派遣会社側が一定要件を満たす労使協定を締結して、派遣スタッフの待遇を決定する方式のこと。
https://www.staffservice.co.jp/client/contents/hakenhouritsu/column006.html

派遣先管理台帳の通知義務

派遣先管理台帳とは?記載事項や作成のルールを徹底解説_3

派遣先は、派遣先管理台帳に記載した事項の一部を派遣元に通知する必要があります(派遣法第42条第3項、派遣法施行規則第38条)。記載内容の一部を派遣元に通知することで、派遣元の派遣会社は雇用管理に必要な資料の一部として保管します。

派遣先管理台帳を通して派遣元に通知をすべき事項


派遣先企業が、派遣先管理台帳を通して派遣元に通知をすべき事項は以下になります。

・派遣スタッフの氏名
・業務の種類・内容
・派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度 ※2020年法改正により項目追加(表内5)
・派遣スタッフが労働に従事した事業所の名称と所在地、そのほか派遣就業をした場所ならびに組織単位(表内8)
・派遣就業をした日(表内12)
・派遣就業をした日ごとの始業し、および終業した時刻ならびに休憩した時間(表内12)
※表内12に記載する派遣就業をした日、始業、終業時刻、休憩した時間については、タイムカードの送付を以ておこなう派遣会社もあります。

また、上記以外にも、派遣先が派遣労働者から苦情の申し出を受けた場合には、苦情の申し出を受けた年月日、苦情の内容および苦情の処理状況についての対応を都度記載し、派遣元に通知することになります。

派遣先管理台帳を通知するタイミングと方法


派遣先は、1ヶ月ごとに1回以上など一定の期日を定め、派遣労働者ごとに通知事項に係る項目を派遣元に通知します。
[通知方法]
・書面を交付する
・書面のデータを電子メールに添付し送信する
・電子メールに記載して送信する

派遣先管理台帳の記載例

派遣先管理台帳とは?記載事項や作成のルールを徹底解説_4

事前に記載をする項目数が多いだけではなく、派遣スタッフ就労状況は日々記録をする必要がありますが、派遣元に通知すべき事項の記載漏れなどが原因でのトラブルが起こらないよう、正しい書き方を把握したうえで管理しましょう。

※派遣先管理台帳のフォーマット(引用:各種様式記入例 | 茨城労働局)
https://jsite.mhlw.go.jp/ibaraki-roudoukyoku/library/ibaraki-roudoukyoku/jyukyu/form/sakikanri2905.pdf

派遣先管理台帳の作成は派遣先の義務

派遣先管理台帳とは?記載事項や作成のルールを徹底解説_5

派遣先となる企業が、労働者派遣のルールとしてとるべき措置は、厚生労働省の「派遣先が講ずべき措置に関する指針」によって定められています。たとえば、次のようなことを措置実施する必要があり、派遣先管理台帳の作成と記載、保存、記載事項の通知もこの中に含まれています(派遣法第42条)。

・契約内容の確認から適切な業務内容や教育
・賃金や就労時間をはじめとした待遇の確保
・派遣スタッフが継続して就労をするための雇用の努力義務
・離職後1年以内の労働者の受け入れの禁止
・監査役以外の自社の社員から派遣先責任者を選任すること
・派遣先管理台帳の作成と記載、保存、記載事項の通知など
・そのほか

派遣先管理台帳の作成、保管や、記載事項の派遣元への通知をおこなわなかった場合、30万円以下の罰金が科せられる場合があります。

派遣先が講ずべき措置に関する指針:厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000760525.pdf

第13 違法行為による罰則、行政処分及び勧告・公表
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou/dl/13.pdf

派遣先管理台帳の作成が必要でないケース


派遣先事業所の派遣スタッフの数と派遣先が雇用する労働者の数の合計が5人以下のときには、派遣先管理台帳の作成は必要ないとされています。

まとめ


派遣先管理台帳は、派遣スタッフの就労状況を派遣元に報告するための重要な書面になります。派遣先管理台帳の作成・保管は派遣先企業に義務付けられていますが、派遣法についてあまり詳しくない派遣先企業による派遣先管理台帳の作成においては、不備が生じがちです。苦手意識を持たず、付き合いのある派遣元の派遣会社などに、派遣先管理台帳の作成についてのアドバイスを求めるのも方法のひとつです。


《ライタープロフィール》
ナカイマミ(編集者・ライター)
求人媒体で求人広告の制作、編集記事の制作に10年以上携わった後、女性誌、生活情報誌、地域活性に関係する媒体などで多くの取材、ライティングを手掛ける。気が付けば、47都道府県を踏破。海外よりも日本が好き。