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フレックスタイム制と時差出勤はどう違うの?

フレックスタイム制と時差出勤はどう違うの?

求人情報などで目にすることがある「フレックスタイム制」や「時差出勤」というワード。なんとなく意味はわかっているつもりでも、その明確な違いは知らない人も多いのではないでしょうか。
出退勤の時間が選べるという点が共通しているフレックスタイム制と時差出勤ですが、実は大きな違いがあります。「働き方」について考えるときのキーワードとなるフレックスタイム制と時差出勤について、その違いを理解して、より自分に合った働き方を見つけるヒントにしてください。

フレックスタイム制とは?

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フレックスタイム制は、出勤・退勤時間、1日の労働時間を、労働者が自分で決めることができる働き方です。文字通り「Flex(フレックス)=柔軟」な働き方ができることが最大の特徴で、日本では1988年4月から導入されました。

総労働時間は、週単位や月単位、もしくは年単位で設定されていて、それを満たせば1日あたりの労働時間は問いません。ただし、会社によっては業務の共有や社員間のコミュニケーション維持のために必ず勤務をしなければならない「コアタイム」を定めている場合があります。また、コアタイムに遅刻・早退・欠勤した場合には、減給処分となるケースもあります。細かなルールは会社ごとに異なるため、事前にきちんと確認することが大切です。

フレックスタイム制のメリットとデメリットについて

自由度が高く、メリットが多いと感じられるフレックスタイム制ですが、一方でデメリットもあります。その両方を理解しておきましょう。

フレックスタイム制のメリット

メリット①
仕事の状況やプライベート事情に合わせて1日の労働時間を調整することができるため、効率的であり、個々のライフスタイルに合った働き方ができます。子育て中の人や、通院が必要な人などには利点が多い制度といえそうです。

メリット②
職場の全員がフレックスタイム制で就労している場合、出勤・退勤時間はバラバラ。遅刻や早退などの概念もないため、周囲に気を遣う必要がありません。

メリット③
満員電車を避けて通勤できるなど、ストレスの軽減も期待できます。そのため仕事とプライベートの両立がしやすく、生活の質の向上にもつながります。オンライン講座でスキルアップをはかる、資格取得を目指すなど、時間・気持ちの面で、余裕を持って取り組むことができそうです。

フレックスタイム制のデメリット

デメリット①
出勤・退勤の時間が統一されていないため、部門内・部門間の情報共有やコミュニケーションが取りづらくなる可能性があります。

デメリット②
取引先や外注先など外部の関係者と時間が合わず、連携に支障が生じたり業務が滞ったりすることも考えられます。

デメリット③
出勤・退勤時間を各自が決めるため、時間にルーズで自己管理ができない労働者の場合、逆に生産性が落ちることもあります。

フレックスタイム制で起こり得るトラブルは?

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フレックスタイム制はその柔軟さゆえに、会社と労働者の間で認識のズレがあると、トラブルにつながることも。実際に起こりがちなトラブルの一例を紹介します。

例1:「コアタイムなし」のはずなのに朝礼参加!?
求人票には、コアタイムを設けないオールフレックスタイム制(※)と書かれていたが、朝礼など慣例行事への参加は暗黙の了解で義務付けられていた、というケースがあります。
(※)スーパーフレックスタイム制とも呼びます

例2:18時前に退社できない!?
上司からの指示  、また繁忙期の雰囲気などで希望の時間に退社できないケースもあるようです。

例3:残業代についての取り決めが不明確!?
フレックスタイム制でも「残業時間」という概念はあります。残業代は、設定した清算期間内(労働者が労働すべき時間を定める期間)に総労働時間を超えて働いた時間について発生します。ですが、フレックスタイム制は勤怠管理が複雑なため、残業代の算出が適切におこなわれていないケースもあります。

例4:深夜残業や休日出勤が加算されない
生産期間内での総労働時間を超えての深夜残業や休日出勤については、フレックスタイム制においても、就業規則に沿って割増賃金の対象となります。しかし、残業代と同様に正しく算出・加算がおこなわれていないケースもあるため注意が必要です。  

いずれのケースも、「フレックスタイム制」をうたっている企業・職種においては制度を正しく理解しておらず、間違った運用をしているといえます。しかし、就業規則や労働条件通知書などの内容、そして実際の運用状況を事前に確認しておくことで避けられる場合もあります。不明なことがあれば、派遣元企業にしっかり確認するようにしましょう。

時差出勤とは?

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次に、「時差出勤」について解説します。
時差出勤は、通勤ラッシュの緩和を目的として定められた制度です。8時~17時、9時~18時など、あらかじめ会社が決めた勤務時間のパターンの中から、好きな勤務時間帯を選ぶことができます。

ただし、選択できるのは出勤・退勤時間の組み合わせのみで、1日あたりの労働時間を調整することはできません。

この点が、フレックスタイム制とは大きく異なります。1日あたりの労働時間の長さは毎日変わらないため、それまでのペースや方法を変えることなく業務を進めることができます。

時差出勤のメリットとデメリット

フレックスタイム制と同様、時差出勤も利点だけでなく、人によっては難点と感じる点もあります。両方の視点から整理しておきましょう。

時差出勤のメリット

メリット①
時差出勤の一番大きなメリットは、満員電車での通勤を避けられることです。子どもを保育園に預けてから出勤する育児中の人や、近親者の介護のため早めに帰宅したい人などにとっては、仕事とプライベートの両立がしやすくなる点もメリットといえそうです。

メリット②
1日あたりの労働時間は変わらないため、いつもと同じやり方で仕事を進めることができます。日々の業務内容に大きな変動がない人にとってはメリットになるでしょう。

時差出勤のデメリット

デメリット①
時差出勤する際は、上司や会社の許可が必要となります。書類提出などの手間がかかったり、承認されるまで時間を要したりすることがあります。

デメリット②
出勤・退勤時間がそれぞれ人によって異なるフレックスタイム制と比べ、周りに気を遣って「遅く出勤しづらい」「早く帰りにくい」と感じる人もいるようです。

デメリット③
それまでの出勤・退勤時間を変更することで、生活リズムが崩れたり、業務効率や生産性が低下したりするケースがあります。

フレックスタイム制と時差出勤の違い

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ここまで、フレックスタイム制、時差出勤について解説してきましたが、それぞれの違いについて整理していきましょう。

「フレックスタイム制」は1日に何時間働くかまで決められる

週ごと、月ごとなどに定められた総労働時間を満たせば、1日に何時間働くかを各々が自由に決めることができます。例えば、体調が悪い日は出社を遅らせたり、プライベートで予定がある日は早く退社したりと、その日ごとに出退勤の時間を決めても問題ありません。ただし、会社によっては、業務に支障をきたさないよう事前報告をルールにしていることもあります。

「時差出勤」は1日の労働時間を自分で決められない

人によって始業時間と終業時間が前後するだけで、1日の労働時間の長短を自分で決めることはできません。総労働時間を管理するため、多くの会社で事前に承認や許可を得ることが求められています。また、就学前の子どもの送迎、近親者の通院やその世話など、時差出勤ができる対象者や事由を限定している場合もあるので、「時差出勤」の条件の確認が必要です。

フレックスタイム制、時差出勤にはどんな仕事があるの?

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フレックスタイム制や時差出勤を取り入れている会社であっても、従業員全員がその制度を利用できるとは限りません。どのようなケースや職種なら制度の対象となるのでしょう。

■フレックスタイム制
例えば、設計や研究、開発、エンジニアなど比較的1人でこなす業務が多い職種では、フレックスタイム制の導入が進んでいます。また、クリエイティブ系や企画職など、日によって業務量や仕事量にバラつきがある職種にも、効率的に時間配分できるフレックスタイム制は向いているでしょう。

一方、フレックスタイム制では対応が難しいとされているのが、営業職です。このほか、顧客との取引関係などで、特定の時間帯に出社していなければならない職種、来客や電話の対応が主業務となる職種、顧客訪問が日常的に必要となる職種など。社内外で連携する人が多い職種においては、フレックスタイム制のメリットが発揮しづらいといえそうです。

■時差出勤

時差出勤は、始業時間と終業時間が異なっていても1日の労働時間が決められていることから、時差出勤が可能な職種は多くあります。

逆に、時差出勤が難しいといわれるものには、フレックスタイム制と同様、社内や顧客の勤務時間が異なることで業務に支障が生じる職種があげられます。
具体的な部署や職種としては、営業部門や管理職が該当するでしょう。ただし、時差出勤の選択肢を限定するなどの条件のもとで対象としているケースもありますので、希望する部署・職種ではどの程度制度を活用できるのか、事前に問い合わせることをおすすめします。

フレックスタイム制・時差出勤制の企業で確認しておくべきこと

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一口に「フレックスタイム制」「時差出勤」と言っても、その内容や実情は会社によって差があります。「働いてみたら自分が理解していた勤務条件と違っていた!」など、トラブルにならないよう、事前に確認しておきたいポイントを紹介します。

■フレックスタイム制のチェックポイント   
・1週間、1ヶ月あたりの総労働時間は何時間か
・コアタイムの有無について。コアタイムがある場合は、何時から何時までか
・フレックスタイム制をどれくらいの人が利用しているか
・朝や夕方に会議などの打ち合わせはあるのか

■時差出勤のチェックポイント
・1日の実働時間は何時間か
・選択できる勤務時間帯にはどんなパターンがあるか

フレックスタイム制や時差出勤の導入をうたっている会社でも、「部署ごと」や「特定の時期」、「特定の条件を満たしている場合のみ」という条件  がついている場合があります。また、実際には利用しづらい状況だったり、希望する時間帯は運用されていなかったりする場合も。事前に派遣会社や派遣先の担当者に確認しておきましょう。

新型コロナウイルスの影響で通勤が変わる?

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日本での導入から30年以上が経つフレックスタイム制ですが、厚生労働省の調べによると、実際に導入している企業は8.2%。その内の15.4%を従業員数1,000人以上の会社が占めていて、大企業ほどフレックスタイム制を導入していることがわかります。2000年の時点ですでに60%近い企業が導入しているというデータがあるアメリカに比べると、まだまだ低い数字といえます。

しかし昨今、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、フレックスタイム制や時差出勤の導入を検討している企業が増加傾向にあります 。感染のリスクが気になる満員電車での通勤を避ける、他者と密となる状況をなるべく減らすなど、コロナウイルスによる社員のストレスと感染リスクを考慮して、フレックスタイム制と時差出勤の導入が進んでいると考えられます。

参考サイト
厚生労働省 平成31年就労条件総合調査 結果の概況「労働時間制度」
内閣府 男女共同参画局「欧米諸国におけるワーク・ライフ・バランスへの取組」

フレックスタイム制と時差出勤の違いを知って、自分に合う“働きやすさ”をかなえよう!

意外と知らない人も多い「フレックスタイム制」と「時差出勤」の詳細について紹介しました。新型コロナウイルスとの戦いが長期化する可能性は高く、そんな中で感染防止と業務の両立をしていくために、フレックスタイム制と時差出勤をはじめとする柔軟な働き方は加速するでしょう。2つの制度の違いを理解して、どんな働き方をしたいのか、自分にとって譲れない点は何なのかをクリアにしてお仕事探しを進めましょう。気になるお仕事を見つけたら、「フレックスタイム制」と「時差出勤」の導入状況を、ぜひチェックしてください。

参考サイト
フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き

<ライタープロフィール>
みやごかよ(コピーライター/ライター)
複数の広告制作会社にてコピーライター、プランナー、制作ディレクターを経験後に独立。現在はフリーランスとして活動中。「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく~」という井上ひさしさんの言葉を大切に日々ライティング中。猫と植物とアートをこよなく愛する一女の母。

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