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リモートハラスメント(リモハラ)とは?企業が知っておきたい原因、防止策と一例を紹介

リモートハラスメント(リモハラ)とは?企業が知っておきたい原因、防止策と一例を紹介

新型コロナウイルス感染防止対策をきっかけに、リモートワーク(テレワーク)を導入する企業が増え、多様な働き方のひとつとして定着しつつあります。従業員にとっては、「通勤時間を有効活用できる」「ストレスが軽減される」など、リモートワークを支持する声が多くある一方で、リモートハラスメント(リモハラ)と呼ばれる迷惑行為が問題視されるようになっています。本記事では、リモートハラスメントのリスクや原因、具体例、企業が取るべき防止策について解説します。

リモートハラスメントとは

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リモートハラスメントとは、リモートワーク中に起こるパワハラ(パワーハラスメント)やセクハラ(セクシュアルハラスメント)などの人権侵害行為と定義されています。リモートハラスメントは、自宅や個室などの周囲の目が行き届かない状況でおこなわれるため、行動がエスカレートしやすい傾向があります。

リモートハラスメントが起こった場合の企業のリスク


リモートハラスメントは、会社以外の場所でおこなわれるため、企業が把握するのは困難です。しかし、放置しておくのは危険です。企業にはハラスメントを防止する義務があります。

セクハラは、2017年1月に男女雇用機会均等法が改正。職場における性的な言動などによって労働者が不利益を受けたり、就業環境を害されたりすることがないように防止措置を取ることが企業に義務づけられました。

パワハラについても、企業・職場での防止を義務づける「パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)」が2019年5月に成立し、必要な防止措置を取っていない企業は、是正指導の対象となっています。

ハラスメント加害者は懲戒処分を受け、職場での地位や信用を失い、刑事罰などの法的責任も問われることもありますが、それだけではありません。ハラスメントを放置していた企業も法的責任を問われることがあり、倫理観の欠如した企業として社会的信用を失い、経済的損失が発生するケースもあります。

また、企業には社員が安全に働けるように安全配慮義務が課せられています(労働契約法第5条)。ハラスメントの防止策を講じず、被害者が肉体的あるいは精神的な苦痛を負った場合、慰謝料や治療費などの損害賠償金支払いなどのリスクも発生します。リモートハラスメントが起こる原因や種類、具体例などを把握し、防止策を講じることが必要です。

リモートハラスメントが起こる原因

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リモートハラスメントは、リモートワーク中に起こるハラスメントです。そのため、以下のような原因が考えられます。

リモートワークに対する理解の不足


リモートワークで自宅にいても、業務をおこなっていることに変わりありません。ですが、リモートワークに対する理解が不足していると社外にいるような感覚に陥り、不謹慎な言動をしやすくなると考えられます。

リモートワーク導入前の準備不足


リモートワークは、新型コロナウイルス感染防止対策として急いでリモートワークを導入した結果、ルール確立が不十分なケースも見られます。導入前の準備不足によって、上司による部下の過度な監視や相手を不快にさせるコミュニケーションなど、ハラスメントに該当する行為が発生していると考えられます。

仕事とプライベートの境目が曖昧


リモートワークは、自宅などのプライベートな空間で業務をおこなうため、公私混同しやすい側面があります。オンオフの区別がつきにくいため、パワハラやセクハラが発生しやすくなっていると考えられます。

精神的なストレス


リモートワークは、他者とのコミュニケーションが減ってしまうため、精神的なストレスを感じている人が少なくありません。ストレス発散のはけ口が、リモートハラスメントに発展していると考えられます。

リモートハラスメントの種類別に見る原因

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リモートハラスメントでは、パワハラ型・セクハラ型・モラハラ型の3つのタイプが特に多いといわれています。それぞれについて、詳しい原因を考えてみましょう。

パワハラ型の原因


パワハラとは、職務上の優越的な立場にある者が、業務の範囲を超えて身体や精神に苦痛を与える、または就業環境を害する行為や発言です。

多くの企業でリモートワークの課題として挙げられているのは、部下の勤怠管理です。リモートワークは部下が働く姿が見えないため、「サボっているのではないか?」と疑心暗鬼に陥っている上司が少なくありません。そのため、度を超えた監視をする、連絡してもすぐに返事がないと咎めるなど、パワハラに該当する行為をしている管理職が増えていると考えられます。

セクハラ型の原因


セクハラとは、相手の意に反する性的な言動をおこない、それによって、仕事をする上での一定の不利益を与えたり、職場の環境を悪化させたりすることをいいます。オンライン会議中に性的な発言をしたり、相手のプライベートを過剰に詮索したりするような行為が、セクハラ型のリモートハラスメントといわれています。

これは、相手の自宅や個室が見えるため公私混同している、あるいはオンラインでのコミュニケーションを円滑におこなおうとした結果、不謹慎な言動になってしまっているなどの原因が考えられます。

モラハラ型の原因


モラハラとは、モラルハラスメントの略で、倫理や道徳に反した嫌がらせです。言葉や態度、身振りや文書などによって、相手の人格や尊厳を傷つけたり、肉体的、精神的に傷を負わせ、その人間が職場を辞めざるを得ない状況に追い込んだり、職場の雰囲気を悪くさせることをいいます。

モラハラ型のリモートハラスメントは、相手の住環境や家族を批判する、もしくは嫌味を言うケースが多いといわれています。これも、軽口の程度を履き違えているケースや公私混同、あるいは相手のプライベートに対する嫉妬、精神的なストレス発散などの原因が考えられます。

リモートハラスメントの例

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リモートハラスメントとは、具体的にはどのような行為なのでしょうか。特に問題視されているのは、以下のようなケースです。代表的な例として把握しておきましょう。

業務中、チャットやメールなどで常に監視をする


部下の働く姿が見えないことに不安を覚え、チャットやメールなどで常に監視をするような行為は、リモートハラスメントの代表例です。本人はマネジメントのつもりでも、監視行為に恐怖を覚える部下も少なくありません。精神的な攻撃は、パワハラの典型例とされています。管理職は自身の言動が部下に対する精神的な攻撃になっていないか、冷静に判断する必要があります。

業務内容の報告を過度に求める


同様に業務内容の報告を過度に求める行為も、リモートハラスメントに該当する可能性があります。過大な要求も、パワハラの典型例のひとつです。上司からのメールやメッセージにすぐに返信しないと咎める、サボらないよう常にプレッシャーをかけるなど、仕事の進捗を逐一求める言動は特に注意が必要です。

Webカメラを常に繋げた状態を強要する


メールやチャットで進捗状況を監視するだけでなく、部下の行動を可視化するため、Webカメラを常に繋げた状態を強要するケースも報告されています。このようなプライバシーへの配慮に欠けた行為は、倫理や道徳に反した嫌がらせと判断され、モラハラに該当する可能性があります。

オンライン飲み会への参加の強要


リモートワークの導入によって社内コミュニケーションが減ったため、オンライン飲み会を開催する企業は多いでしょう。しかし、オンライン飲み会の参加を強要することは、リモートハラスメントに当たる可能性があります。アルコールハラスメント(アルハラ)は、飲酒にまつわる嫌がらせや迷惑行為、人権侵害となる言動です。飲酒を強要しなくても、上司が部下を強引に誘う言動はパワハラに該当します。

オンライン会議でのセクハラ行為


オンライン会議中、Webカメラに映った相手の服装や髪型に言及する、またはプライバシーを過度に詮索するような言動は、セクハラ型リモートハラスメントの典型といわれています。会社では自重していても、オンオフの区別がつきにくいリモートワークでは公私混同してしまうなど、オンライン会議でのセクハラ行為が問題視されています。セクハラは企業にとって重大なリスクです。十分な注意が必要でしょう。

オンライン会議中に映り込んだ室内の様子や音声への過度な詮索


オンライン会議中、画面に映り込んだ室内の様子や音声に過度な詮索をすることも、リモートハラスメントの代表例のひとつです。私的なことに過度に立ち入る言動は、個の侵害であり、パワハラに該当します。プライバシー保護の観点から、機微な個人情報を詮索しないよう、従業員に周知徹底することが必要です。

リモートハラスメントの防止策

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リモートハラスメントを防止するためには、勉強会やセミナーをおこない、リモートワークにおけるルールやマネジメントにおける注意点を周知徹底することが重要です。以下の4つのポイントを中心に啓発をおこない、リモートハラスメントが発生しないよう、注意を促していきましょう。
 

業務と関係ないことは聞き出さない


オンオフの区別がつきにくいリモートワークは、プライバシーの侵害に当たる行為をしやすくなります。プライベートに関する詮索は、パワハラ、セクハラ、モラハラのすべてに該当する可能性があります。業務と関係ないことは聞き出さないようルールを徹底し、リモートハラスメントを防止しましょう。

適度なコミュニケーションをおこなう


業務中、チャットツールやメールなどで監視する、執拗に報告を求めるなど、過度なコミュニケーションを要求することは、リモートハラスメントの典型例です。適度なコミュニケーションをおこなうよう、オンライン会議や1on1の頻度や、進捗報告に関するルールなどを定め、管理職に自重を促しましょう。

仕事上のつながりであることを認識する


リモートワークは、お互いが自宅や個室にいるときに業務連絡を取り合うことが多いため、プライベートな側面が見えやすくなります。そのため相手と親密な関係になったと勘違いしがちです。公私混同に注意を促し、仕事上のつながりであることを認識するよう、意識を高める啓発をおこなったほうがよいでしょう。

リモートワーク導入前にルールを明確にする


リモートハラスメントは、ルールを定めたり、ハラスメントに関する啓発をおこなったりする前に、リモートワークを導入してしまった場合に起こりやすくなっています。リモートワーク導入前にルールを明確にする、もしくは、改めて勉強会やセミナーを実施し周知徹底するなどの対策が必要です。

まとめ

リモートハラスメントは、新型コロナウイルスが感染拡大し、リモートワークが急速に普及した2020年以降から発生するようになった企業の課題です。これまでになかった問題に頭を悩ませている人事担当者の方も多いでしょう。

ハラスメントは、企業にとって重大なリスクです。すべてを把握することは困難ですが、適切な対策を講じることで防止することは可能です。仕事の進め方や日常生活の変化によって起こるリモートハラスメントが起こらないよう、しっかりと対策を進めていきましょう。


《ライタープロフィール》
鈴木にこ(ライター)
求人メディアの編集者を経て、フリーランスとして活動中。派遣・新卒・転職メディアの編集協力、ビジネス・ライフスタイル関連の書籍や記事のライティングをおこなう。