閉じる

ギグワークとは? 企業が利用するメリットや注意点と導入事例を紹介

ギグワークとは? 企業が利用するメリットや注意点と導入事例を紹介

大きなバッグを背負い自転車で料理を配達する。都会ではそんな姿をよく見かけるようになりましたが、こうした働き方は、ギグワークと呼ばれています。雇われずに働くという働き方。「労働=雇用」が当たり前だった時代は終わりつつあるといってもいいでしょう。では、ギグワークとはどのような働き方なのでしょうか。
今回は、ギグワークに関する基本知識や似た雇用形態(派遣スタッフ、アルバイト)との違いの解説を踏まえて、ギグワークを利用する企業のメリットと注意点を紹介します。

ギグワークとは?

ギグワークとは? 企業が利用するメリットや注意点と導入事例を紹介_1

まず、「ギグワークとは何か」定義(※)を確認しておきましょう。ギグワークは「ギグエコノミー(短期間あるいは特定の目的のために独立した労働者を雇う市場経済)によっておこなわれる仕事」という意味です。そして、ギグワークに就く労働者はギグワーカーと呼ばれます。
(※)ギグワーク、ギグエコノミーは、米国議会公共政策研究機関(CRS)によって定義づけられています。

ギグワークを導入する場合、発注者はインターネットを利用したオンライン上で仕事を依頼、労働者は依頼元企業と契約して、成果物を提供することになります。発注者は、プラットホームやスマートフォンのアプリケーションで労働者を検索することが可能で、労働者は、仕事を指定することができます。

ギグワークの仕事には、街で見かける自転車などを使った料理配達のほか、飲食店のホールや調理場、便利屋や引っ越し屋、コーディング、デザイン、執筆、リサーチなどがあり、職種が多様であることも特徴の1つです。

ギグワークが普及した背景

ギグワークとは? 企業が利用するメリットや注意点と導入事例を紹介_2

では、なぜギグワークのような働き方が増えてきたのでしょうか。

日常生活のデジタル化

まず、日常生活のデジタル化により、短期間の仕事の発注・受注のシステムが利用しやすくなったことが挙げられます。インターネットが普及し、人々がスマートフォンを持ち歩くようになったため、いつでもインターネットを利用できるようになりました。

インターネットのアプリやクラウドソーシングサイトなどを利用して、在宅ワークやリモートの求人募集も増えており、「いま、時間が空いている人」と「いま、働いてほしい人」が簡単にやり取りをすることができるようになり、単発の仕事としてギグワークが普及し始めました。

新型コロナウイルスの流行と副業の浸透

もう1つには、新型コロナウイルスの感染・拡大で従来の雇用情勢が不安定になったことが挙げられます。収入が減少した人や、企業に勤める人の副業として活用されるようになってきたことも、ギグワーク普及の背景の1つといえるでしょう。

ギグワークと似た雇用形態(派遣スタッフ、アルバイト)との違い

ギグワークとは? 企業が利用するメリットや注意点と導入事例を紹介_3

ギグワークと似た雇用形態として、派遣スタッフやアルバイトがあります。
雇用契約や業務の関わり方については、いくつか大きな違いがありますので理解しておきましょう。

雇用主、契約、報酬について

■ギグワーク
ギグワーカー本人が個人事業主となるので、就業先と直接雇用の契約をする必要はありません。
発注元の企業は、ギグワーカーと業務委託契約を結びます。
委託した仕事が完了したら、発注元は成果報酬を支払います。ギグワークの場合、発注する案件によって報酬が固定されているのが特徴です。

■派遣スタッフ
派遣スタッフの場合、雇用主は登録をしている派遣会社になります。業務指示は就業先(派遣先の企業)から出されますが、給与は雇用契約を結んでいる派遣会社から支給されます。

■アルバイト
アルバイトの場合、アルバイトを雇用する企業がその人と雇用契約を結びます。勤怠ルールや給与制度などについては、雇用契約を結んだ企業に従います。アルバイトの多くは就業時間による時給制が採用されています。

仕事の探し方に関して

ギグワークとは? 企業が利用するメリットや注意点と導入事例を紹介_3_2

■ギグワーク
ギグワークを紹介しているサイトに登録、応募をして最短1日(登録した当日から)から仕事を始めることができます。

■派遣スタッフ
派遣の仕事は、職種、仕事内容、勤務地や勤務日数、時間などの条件で選ぶことができます。まずは、希望条件を登録した派遣会社に伝えます。その後、派遣会社から就業先の紹介を受け、自身が納得して合意した就業先で働くことになります。

■アルバイト
求人情報などをもとに、雇用を希望する企業との面談を経て、双方が合意に至ったら就業することになります。

勤務地に関して

■ギグワーク
ギグワークの場合、企業から依頼された業務を責任もって完了させること優先で、勤務地は特定されていません。

■派遣スタッフ
派遣スタッフは、派遣会社から紹介された就業先が勤務地となります。事前確認で合意の上、テレワークで勤務するケースもあります。

■アルバイト
アルバイトは、雇用契約を結んだ企業との間で合意している勤務地での勤務となります。

勤務時間に関して

ギグワークとは? 企業が利用するメリットや注意点と導入事例を紹介_3_4

■ギグワーク
ギグワークの場合、基本的にタスク単位で締め切り(完了日時)が設けられており、そのなかでギグワーカーは働くことになります。

■派遣スタッフ
派遣スタッフは、派遣会社との雇用契約のもと双方が合意して決められた勤務時間内で、就業先で働きます。「週5日で夕方4時まで」「週に3日、午前中のみ」など、派遣スタッフの希望に合わせて選択肢が多くあることも特徴です。
また、派遣先企業で働ける期間(2ヶ月~ 6ヶ月など)はあらかじめ決まっています。期間が2ヶ月なら2ヶ月で雇用契約を結び、必要があれば契約更新を重ねていくような働き方となります(ただし、派遣3年ルールにより、派遣先の事業所における同一の組織単位での就業は最長3年までとなります)。

■アルバイト
アルバイトも、勤務先企業との雇用契約のもと勤務時間が決められています。曜日、時間帯などが固定されているケースもあれば、すきま時間に勤務できる自由度が高いシフト制で勤務できるケースもあります。

社会保険に関して

■ギグワーク
ギグワーカーは個人事業主にあたるので、自身での保険加入が必要となります。

■派遣スタッフ
派遣スタッフの場合、保険の種類によって加入できる基準が異なります。
・労災保険:すべての労働者
・雇用保険:31日以上継続して働く&1週間の所定労働時間が20時間以上
・健康保険&年金保険&介護保険:
「常用雇用者の場合」1週間の所定労働時間が30時間以上/契約期間2ヶ月以上が加入条件
「短時間雇用者の場合」1週間の所定労働時間が20時間以上/契約期間1年以上を見込んでいる/月額賃金8万8,000円以上/派遣元の従業員数501人以上(500人以下の場合も、労使で合意があればOK)が加入条件

■アルバイトの場合
要件を満たせばアルバイトも健康保険加入が可能です。勤務先が社会保険の適用を受けられない規模である場合や、自身の雇用契約が2ヶ月以内の短期だった場合には、受けることができません。

【関連サイト】
派遣スタッフが社会保険に加入できる条件とは?
https://www.staffservice.co.jp/job/column/detail_036.html#section_2

ギグワークのメリット

ギグワークとは? 企業が利用するメリットや注意点と導入事例を紹介_4

ギグワーカーに仕事を依頼する企業側の利点について説明します

・事業の状況に応じて柔軟に人員を確保できる
企業にとっては、事業の繁忙度合いなど、状況に応じて柔軟に人員を確保できるメリットがあります。正社員では対応しきれない繁忙期など、必要な時にだけ仕事を依頼できるので、閑散期に余剰人員を抱える必要がなくなるでしょう。

・必要な仕事量に対して、スポットでの発注が可能
必要な仕事量だけスポットでの発注ができることもメリットの1つといえます。突発的なプロジェクトやタスクに対してスポットでの発注が可能であるため、企業にとっては予算などを踏まえ柔軟な人材の調整がしやすくなるでしょう。

・業種によっては勤務地を制限する必要がない
さらに、ギグワーカーとのやり取りはインターネット経由のみのため、依頼する業務内容によっては勤務地を制限する必要がなくなります。それによって、人材確保の幅が広がることもメリットでしょう。

ギグワークの注意点(リスク)

ギグワークとは? 企業が利用するメリットや注意点と導入事例を紹介_5

では、ギグワークに仕事を依頼する企業にとっては、どのような点に注意する必要があるでしょうか。

・無駄なコストになる場合がある
仕事を依頼する企業にとっては、タスク・仕事ベースでギグワーカーに依頼すればよいため、柔軟性のある発注が可能です。一方で、事業の状況に合わせて人員を補充しないと無駄なコストになる場合があります。そのため、発注者側の発注スキルが問われることもあります。急な発注の必要性が生じた時などに備え、タスクを細分化するなどして事前に準備を整えておくのがポイントです。

・成果物の品質にバラつきがでる場合がある
ギグワーカーの人間性やスキルはさまざまで、成果物の品質にバラつきがでてしまう場合があります。初めて発注するギグワーカーでも、基本的に対面で面接をおこなうことはありません。オンライン上のやり取りで完結してしまうため、その人の人間性や仕事ぶりなど、情報が少ないなかで判断する必要があります。成果物の品質に対するリスクが高くなりがちともいえます。

発注者として、そのリスクを減らすためには、ギグワーカーの実績や評判に対する情報を収集したり、評価する「目利き力」や、依頼する仕事の目的や納期などを明確に伝え、管理する「マネジメント力」が求められます。

まとめ

ギグワークを導入する場合、発注者はインターネットを利用したオンライン上で仕事を依頼し、労働者は依頼元企業と契約して、成果物を提供するのが特徴です。ギグワークを導入する企業側のメリットについては、事業の状況に応じて柔軟に人員を確保できること、ギグワーカーとのやり取りはインターネット経由のみのため業種によっては勤務地を制限する必要がないことなど挙げられます。

注意すべきポイントとしては、事業の状況に合わせて人員を補充しないと無駄なコストになる場合があること、ギグワーカーの人間性やスキルはさまざまなので、成果物の品質にバラつきがでる場合があることなど挙げられます。

ギグワークの浸透により、働き方はより多様化していくと予想されます。会社員を本業としながらギグワークを副業としたり、起業しつつ空いた時間はギグワーカーとして働いたり、派遣スタッフとして必要最低限の収入を得ながらギグワークで収入を増やしたりとさまざまな働き方をする人が増えていくでしょう。とはいえ、ギグワークは雇用関係の存在しない働き方です。安心してギグワークを活用できるよう、仕事を依頼する際は事前に仕組みの理解と準備を怠らないようにしましょう。

ライタープロフィール
Toru/ライター
MBA予備校や転職メディア向けのブログ、コーチング本など、主にビジネス系の書籍や記事のライティングを行う。