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ワーケーションとはどういう働き方なの? メリットとデメリット、導入事例をご紹介!

ワーケーションとはどういう働き方なの? メリットとデメリット、導入事例をご紹介!

リモートワークから派生した新しい働き方として、今「ワーケーション」が注目を集めています。ワーケーションとはどのような働き方なのでしょう。その特徴とメリット&デメリット、そしてワーケーションを導入している企業の事例を紹介します。

ワーケーションとは?

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ワーケーション(Workation)とは、仕事(work)と休暇(vacation)を組み合わせた造語です。リゾートや地方など、普段の職場とは異なる場所で働きながら休暇などを取得する仕組みで、日常的な仕事(ワーク)に、非日常的な休暇(バケーション)の感覚を取り込んだ柔軟な働き方のことをさします。

2000年代にアメリカで始まった取り組みですが、新型コロナウイルスの影響でテレワークが急速に普及したことに伴い、日本でもワーケーションに注目が集まり始めました。

テレワークとの違い


テレワークもまた、離れた場所(tele)と仕事(work)という2つの言葉を組み合わせた造語です。ワーケーションとよく似たワークスタイルではありますが、2つの働き方では、働く場所と目的に違いがあります。

■テレワーク
パソコンやモバイル機器など情報通信技術を活用して、自宅やサテライトオフィス、移動中などに仕事をします。

■ワーケーション
休暇中にホテルや帰省先などで仕事をすることをさし、期間も限定されます。

また本来、テレワークには生産性の向上や企業側のコスト削減などの目的がありますが、ワーケーションはそれらに加えて、有給休暇の取得促進やワークライフバランスの充実、モチベーションアップなど前提として幅広い目的があります。

ワーケーションの導入事例

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ワーケーションが日本でも注目されるようになった背景には、有給取得率の低さがあります。厚生労働省の調査(※)によると、常用労働者30人以上の民間企業における年次有給休暇の取得率は52.4%(平成31年)。「2020年(令和2年)までに70%にする」という働き方改革の目標数値には届いていないのが実情です。

そのような中、「休暇中に遠隔地でも仕事ができる環境を整え、その際の労働は勤務時間にカウントする」というワーケーションの考え方を積極的に導入する企業も増えてきています。ここでは、ワーケーション導入を実践している代表的な事例をピックアップしてご紹介します。

(※)厚生労働省:平成31年就労条件総合調査の概況より

野村総合研究所


2017年より導入。徳島県三好市をサテライトオフィス兼宿泊場所として、社員が1ヶ月間滞在し、働き・暮らす、という試みをおこなっています。
『三好キャンプ』と呼ばれるこの取り組みには、延べ60名余りの社員が参加(2019年現在)。通常の業務だけでなく、地元の学校への出張授業やIT勉強会など、地域特有の課題解決やボランティア活動などにも挑戦しています。参加した社員からは、「7時に始業して16時に終業することもあった」「とにかく1日を有効に使える!」などの声が聞かれています。

三菱UFJ銀行


2019年より、軽井沢にある自社保養所内に専用オフィスを設置して実施中です。これまで50名以上の社員が体験して好評を得ています(2019年現在)。自然に恵まれた環境で柔軟に仕事をすることができ、「生産性が格段に向上した」「普段は考えつかないアイデアが生まれた」といった声も。さらに同社では、シンガポールにもワーケーションオフィスの拠点を開設し、その取り組みを加速させています。

JTB


休日や休暇を利用して訪れたハワイで、社員がテレワークをおこなう『ワーケーション・ハワイ』を2019年より導入。ハワイにある現地オフィスに専用スペースを設置して実施しています。まずは社長自らが体験し、社員の利用を促進。実際に体験した社員からも、「普段と違う環境でいいアイデアが浮かびそう!」「パソコンの遠隔操作もストレスがなかった」などの感想が上がっているようです。

2020年の緊急事態宣言以降、観光庁を中心に国としても、観光促進を目的にしたワーケーションの導入を推し進めています。今後は、様々な企業がより積極的にワーケーションを導入していくと予想されます。

ワーケーション導入によるメリット

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ワーケーションの導入は、利用する社員、そして運用する企業にとって、それぞれどんなメリットがあるのでしょう。主な利点を整理しました。

仕事の効率が向上する


仕事をする時間以外は、ゆったりと過ごすことができるワーケーション。こまめに心身をリフレッシュすることができ、仕事に対するモチベーションが上がるという効果もあります。また、限られた時間だけ仕事をおこなうので、長時間労働による集中力や効率ダウンも防ぐことができます。さらには、いつもと違う環境で仕事をすることで、新しい発想が生まれることも期待できそうです。

休暇を取りやすくなる


ある調査によると、日本人の有給休暇取得率は世界19ヶ国の中で3年連続最下位(※)。その理由としては、「周囲の反応などを考えると休暇申請がしづらい」という点が挙げられています。しかし、ワーケーションにより休暇と仕事を両立することができれば、後ろめたい気持ちを抱くことなく休暇を取得しやすくなります。

(※)エクスペディア・ジャパン「世界19カ国有給休暇・国際比較調査2018」より

家族と接する時間が増える


ワーケーションでは仕事と休暇を同時に進められるため、家族と一緒に過ごす時間を作りやすくなります。仕事とプライベートの両立が図れ、ライフワークバランスの充実に大いに貢献するでしょう。

企業にとっても多様なメリットが


上記のようなメリットは、制度を利用する社員はもちろん、企業側にも良い効果をもたらします。例えば、社員のモチベーションや業務効率が上がる、働き方の自由度が高くなるということは、離職率の低下や業績アップにもつながります。

ワーケーション導入によるデメリット

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多くのメリットがあるワーケーションですが、一方で、デメリットもいくつか考えられます。

仕事と休暇の線引きが曖昧になる


休暇中に仕事をおこなうため、仕事と休暇の区別をつけにくくなるという面があります。本来の目的は有給休暇取得のはずが、想定していた以上に仕事に時間を割かれてしまった…という状況にもなりかねません。対策としては、事前に就労時間を明確に決め、残業が発生しないようなスケジュール管理が必要になります。

導入できる業種が限られている


ワーケーション導入の難易度は、業種によって異なります。例えば、成果やデータをオンラインで共有しやすいIT業界などでは導入しやすいですが、直接人と対面したり物を扱う必要がある接客業や製造業、医療・福祉業では、ワーケーション導入のハードルは高くなります。また、同一企業内でもワーケーションに適さない職種もあり、一斉に制度導入することが難しいケースも見られます。

導入のためには、企業側が超えるべきハードルも


ワーケーションは時間や場所を固定しないフレックス制であるため、企業としては、労働時間の把握や人事評価が難しいという側面もあります。また、遠隔で仕事ができるよう十分な報通信技術を整える必要もあり、導入・運用にはコストがかかる点も、企業にとっては課題のひとつです。同時に、情報漏洩を防ぐためにセキュリティ強化を徹底することも、ワーケーション導入のための必須条件となるでしょう。

ワーケーションの今後はどうなる?展望は?

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徐々に広がりを見せているワーケーション。2020年におこなわれた日経クロストレンドの調査では、消費分野のキーワードとして「ワーケーション」がランクインするなど、将来性に大きな期待が寄せられています。

地方活性化の手段として、自治体も積極参画


2019年には、ワーケーションの受け入れを希望する自治体が集まり、「ワーケーション自治体協議会(WAJ)」という団体が設立されました。2020年8月現在で、99の自治体が参加を表明しています。

とりわけ少子化問題などを抱える地方にとって、ワーケーションは人口流入にもつながるチャンスと考え、促進・普及に向けた取り組みをおこなう自治体が増えています。企業の受け入れや誘致などが、全国的に加速化することが予想されます。

新たな需要や消費を生むチャンスにも


ワーケーションは、様々な業界にとって事業拡大につながる好機ともいえます。例えば、観光産業はもちろん、不動産業界やICTなどのインフラ業界などでは、これまで需要がなかったエリアでも商機が見込めるようになるでしょう。

また、「ワーケーションと働き方改革に関するレポート」によると、約5割の企業が「ワーケーションの導入に興味がある」と回答してます。導入のためには制度や環境整備などの課題はありますが、ワーケーションという働き方を前向きに捉える傾向が社会全体に広がりつつあるといえそうです。

まとめ


柔軟な働き方の鍵を握る。ワーケーションの広がりに期待!

新型コロナウイルスの流行拡大を受けて、国立・国定公園、温泉地など感染リスクの少ない自然の中で仕事をするスタイルが着目されています。さらには、地域経済の活性化にもつながることに着目し、環境省もワーケーション推進のための予算を確保しました(※)。国をあげての支援が、ワーケーションが浸透する追い風になりそうです。

国からも企業からも一層の注目を集めているワーケーション。利用する側も、メリットとデメリットの両方の理解を深めることで、仕事とプライベートを両立させた理想的なワークライフバランスの実現につながるでしょう。

(※)環境省「令和2年度(補正予算)国立・国定公園への誘客の推進事業費及び国立・国定公園、温泉地でのワーケーションの推進事業費の間接補助事業の採択結果について」より
 

《ライタープロフィール》
みやごかよ(コピーライター/ライター)
複数の広告制作会社にてコピーライター、プランナー、制作ディレクターを経験後に独立。現在はフリーランスとして活動中。「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく~」という井上ひさしさんの言葉を大切に日々ライティング中。猫と植物とアートをこよなく愛する一女の母。