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【令和4年】人材開発支援助成金はいくらもらえる? 対象の訓練コースなどをわかりやすく解説

【令和4年】人材開発支援助成金はいくらもらえる? 対象の訓練コースなどをわかりやすく解説

新型コロナウイルス感染拡大を受けた社会情勢の変化や、テクノロジーの進化など、外部環境が激変しています。企業としては、その変化に適応できる人材を確保し、育成することができなければ、業績悪化や衰退などのリスクを抱えることになります。その意味で、企業の人事担当者にとって、人材開発は重要な課題のひとつではないでしょうか。

本記事では、人材開発を効果的に促進するための制度である、人材開発支援助成金の基本知識とメリット・デメリットの解説をおこなっていきます。加えて、各種コースの概要、支給金額の紹介に加えて、支給申請の方法を紹介していきます。ぜひ、活用を検討してみてください。

人材開発支援助成金とは

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人材開発支援助成金とは、人材の職業訓練開発を実施した企業を対象に、訓練の費用を一部助成し、人材が専門知識や技能を身に付けるための人材育成をサポートする制度です。

キャリアアップ助成金との違い


人材開発支援助成金と似た制度で、キャリアアップ助成金という制度があります。混同しないようにしましょう。ポイントとなる違いは大きく2つ、1)対象となる人材が異なる点、2)助成金の目的が異なる点になります。
人材開発支援助成金 キャリアアップ助成金
1)対象となる人材 雇用保険に加入している人材 非正規雇用の人材
2)助成金の目的 正社員の育成と教育 非正規社員の待遇を正社員と同等またはそれに近づけるための施策への支援

これまでの人材開発支援助成金の変更点


人材開発支援助成金は、2016年まではキャリア形成促進助成金という名称でした。その後、各種の見直しがおこなわれ今に至っています。これまでの変更点を振り返ってみましょう。

・2018年(平成30年)4月1日からの変更点
当時、キャリアアップ助成金や建設労働者確保育成助成金、障害者職業能力開発助成金などに分かれていた研修系の助成金が、人材開発支援助成金へ整理統合されました。

・2019年(令和元年)4月1日からの変更点
2019年の改正内容においては、大きく2つの変更がありました。
まず、教育訓練休暇付与コースに、長期の教育訓練休暇制度が導入された点です。社員が自発的に訓練を受けるために数日間以上の休暇制度を導入する際に活用できる「教育訓練休暇付与コース」に、数ヶ月以上の長期休暇を対象とする「長期教育訓練休暇制度」が新設されました。これは、最低でも120日以上の休暇を付与する制度であることが必要というものです。

そして、特定訓練コース・一般訓練コースに関し、訓練実施機関が不正に関与していないことを証明する書類として「訓練様式第13号(支給申請承諾書)」を支給申請時に提出することとなりました。この書類については申請者ではなく、訓練実施者に記入してもらう必要があります。

人材開発支援助成金のメリット・デメリット

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企業として、人材開発支援助成金を活用するうえでのメリット・デメリットを把握しておきましょう。

企業にとっての人材開発支援助成金のメリット


まずはメリットから紹介します。

■人材開発のための費用負担を軽減できる
ひとことで人材育成といっても、そのなかには数多くの費用が含まれます(下記「人材育成に含まれる費用の例」参照)。従業員を多く抱える企業においては、さらにその負担がかかります。したがって、人材開発支援助成金を活用できれば、その負担を軽減することができるでしょう。
(参考)
「人材育成」に含まれる費用の例
  • 正規従業員を対象とした自社主催研修の会場費・宿泊費・飲食費
  • 外部講師費
  • 教材費
  • 外部教育機関への研修委託費およびセミナー・講座参加費
  • eラーニング・通信教育費
  • 公的資格取得援助費
  • 研修受講者・社内講師の日当・手当・交通費
  • 事務局費など

■キャリアアップに対するモチベーションが向上する
一般的に、昇進や昇格といったキャリアアップの際には、給与水準は上昇するものの、同時にその職員が果たすべき責任が拡大します。人材開発支援助成金を活用し、さまざまなキャリアの人材育成をサポートすることで、キャリアアップに対する不安を解消するとともに、キャリアアップに対するモチベーションを高めることができます。

■仕事への意欲が高まる
OFF-JT(※1)による研修のなかでは、リーダーシップやプレゼンテーションのスキルだけでなく、経営に関するさまざまなフレームワークを学ぶことができます。加えて、OJT(※2)を通じて先輩職員が後輩職員をサポートすることも含めて、仕事に対する不安が解消されるだけでなく、自信が高まっていくことになります。すなわち、人材開発支援助成金を活用することで、各職員がさらなる成長を求めて、仕事への意欲を高めることにもつながります。

(※1)教育訓練機関等での座学などのこと。
(※2)On the job traning の略で、企業内での実習を指します。

企業にとっての人材開発支援助成金のデメリット


デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

■申請のための時間と手間がかかる
具体的な支給申請の方法はこのあと述べていきますが、人材開発支援助成金を受け取るためには所定の手続きと書類の準備が必要になります。したがって、そのための時間と手間がかかることになります。

■支給されるまでの間、一時的に費用を負担する必要がある
人材開発支援助成金だけでなく、助成金制度に共通していえることですが、申請から受給までに一定の期間を要することになります。したがって、実際に給付されるまでの間は立て替え払いが発生することになりますので注意しておきましょう。

人材開発支援助成金の支給金額に対するポイントとは何か

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人材開発支援助成金の各コースにおける支給金額についての詳細に進む前に、大事なポイントを3点紹介します。

まず、助成の種類として、経費助成と賃金助成があるという点です。経費助成とは、訓練にかかる経費に対する助成、賃金助成とは、訓練期間中の賃金の一部を助成するものです。また、コースによっては、大企業か中小企業かという企業規模や、OJTかOFF-JTかという実施形態によって、助成額・助成率が決まることがあります。

そして、もっとも重要なポイントが、「生産性要件」を満たすかどうかです。

生産性=付加価値/雇用保険被保険者数

なお、付加価値とは、営業利益、人件費、減価償却費、動産・不動産賃借料、租税公課を合算したものです。また、雇用保険被保険者数とは、雇用保険法の第4条で規定されている雇用保険被保険者を指します。

上記の方法で計算した「生産性」をもとに、各コースにおける「生産性要件」を満たしている場合、割り増し分の助成金を追加で受給することができます。

たとえば、特定訓練コースと一般訓練コースでは、「訓練開始日が属する会計年度の前年度の生産性とその3年後の会計年度の生産性を比べて6%以上伸びている」場合、追加で助成金を受けられることになります。したがって、制度活用に際しては、どうすれば「生産性要件」を充足できるか、を検討されるとよいでしょう。

人材開発支援助成金の対象コースと支給金額

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それでは、各コースの概要と支給金額について詳しく見ていきましょう。人材開発支援助成金は、8コースで構成されています。特に、令和4年4月1日からの改正のなかで、「人への投資促進コース」が新設されたほか、すべての訓練コースにおいて、オンライン研修(eラーニング)と通信制による訓練も新たに対象となりました。

①特定訓練コース

雇用する正社員に対して、厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練、若年者への訓練、労働生産性向上に資する訓練等、訓練効果の高い10時間以上の訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成するものです。

②一般訓練コース

雇用する正社員に対して、職務に関連した専門的な知識および技能を習得させるための20時間以上の訓練(特定訓練コースに該当しないもの)を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成するものです。

8つのコースのなかでも、特に活用されているのが、特定訓練コースや一般訓練コースです。業種を問わずに受給できるので、教育訓練に力を入れようとする事業者にとっては活用しやすい助成金といえます。コースごとの助成額・助成率は次の表のとおりです。
※( )内は中小企業以外

③教育訓練休暇等付与コース


有給教育訓練休暇等制度を導入、労働者が当該休暇を取得し、訓練を受けた場合に助成されます。また、120日以上の長期教育訓練休暇制度を導入、労働者が当該休暇を取得し、訓練を受けた場合に助成されます。
コースごとの助成額・助成率は次の表のとおりです。
支給対象となる制度 経費助成 賃金助成(一人一日あたり)
  生産性要件を
満たす場合
  生産性要件を
満たす場合
教育訓練休暇制度 30万円 36万円 - -
長期教育訓練休暇制度 20万円 24万円 6,000円 7,200円
教育訓練短時間勤務等制度 20万円 24万円 - -

④特別育成訓練コース


正社員経験の少ないパートやアルバイトなどの有期契約労働者の方を正社員へ転換したり、処遇を改善したりするうえで必要となる訓練に対して助成をおこなうものです。

企業規模としては、中小企業から大企業までを助成対象としているほか、実施形態としては、OFF-JT、OJTともに助成対象となります。なお、OFF-JTの場合は、経費助成・賃金助成、OJTの場合は、賃金助成のみとなります。

■OFF-JT分の支給額
( )内は大企業の額
支給対象となる制度 経費助成 賃金助成
(一人一時間あたり)
正社員化した場合 非正規雇用を維持した場合   生産性要件を
満たす場合
  生産性要件を
満たす場合
  生産性要件を
満たす場合
 
一般職業訓練
有期実習型訓練
70% 100% 60% 75% 760円
(475円)
960円
(600円)


■OJT分の支給額
( )内は大企業の額
支給対象となる制度 賃金助成
(一人一コースあたり)
  生産性要件を
満たす場合
一般職業訓練
有期実習型訓練
10万円
(9万円)
13万円
(12万円)

⑤建設労働者認定訓練コース


認定職業訓練または指導員訓練のうち建設関連の訓練に対して助成するものです。
経費助成 賃金助成(一日あたり)
  生産性要件を
満たす場合
都道府県補助事業
対象経費の1/6
3,800円 + 1,000円

⑥建設労働者技能実習コース


建設事業主や、建設事業主団体などが、建設労働者の雇用の改善や建設労働者の技能の向上を図るための取り組みに対して助成をおこなうものです。

企業規模に応じた経費助成・賃金助成が用意されているほか、女性建設労働者への技能実習に対する助成(経費助成のみ)も用意されています

《参考》
厚生労働省:建設事業主等に対する助成金(旧建設労働者確保育成助成金)

⑦障害者職業能力開発コース


障害者職業能力開発訓練施設等の設置、障害者職業能力開発訓練運営費(人件費、教材費等)に対して助成をおこなうものです。

施設等 3/4を助成(上限額:5,000万円、更新の場合は1,000万円)
運営費 4/5を助成(上限額:1人当たり17万円)

⑧人への投資促進コース


デジタル人材・高度人材を育成する訓練、労働者が自発的におこなう訓練、定額制訓練(サブスクリプション型)等を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成するものです。利用者からのニーズをもとに、次の5つの助成が新設されました。
 
高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練:高度デジタル人材の育成のための訓練や大学院 での訓練をおこなう事業主に対する高率助成を新設

情報技術分野認定実習併用職業訓練:IT分野未経験者の即戦力化のための訓練を 実施する事業主に対する高率助成の新設(OFF_JTとOJTを組み合わせた訓練)

・定額制訓練:サブスクリプション型の研修サービスによる 訓練への助成の新設

自発的職業能力開発訓練:労働者が自発的に受講した訓練費用を負担する事業主への助成の新設

・長期教育訓練休暇等制度:働きながら訓練を受講するための休暇制度や短時間勤務等制度を導入する事業主への助成の拡充

 
コースごとの助成額・助成率については下記を参照ください。
《参考》
厚生労働省:人材開発支援助成金人への投資促進コースのご案内(詳細版)

人材開発支援助成金の支給申請の方法

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人材開発支援助成金は、各都道府県の労働局に申請します。新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、基本的に書類の提出は郵送での受付となっていますので、具体的な郵送先については、各労働局のホームページなどで申請先を確認しておきましょう。
なお、提出書類については対象となるコースごとに変わってきます。実際の提出書類は厚生労働省のホームページからダウンロードできます。

《参考》
厚生労働省:人材開発支援助成金 申請様式のダウンロード

人材開発支援助成金の受給までの流れ


人材開発支援助成金の受給までの流れを見ていきましょう。
① 訓練計画書の作成
まず、事業者側で訓練計画書を作成します。

② 訓練開始日の1ヶ月前までに、訓練計画書を管轄の労働局へ提出
訓練計画書の作成が終わったら、訓練計画書と、申請するコースに必要な書類をセットにして管轄の労働局に提出します。なお、提出は訓練開始日の前日から数えて1ヶ月前までに済ませる必要があります。期限までに提出しなかった場合、助成金を受給できる権利が得られませんので注意しましょう。

③ 訓練計画書に基づいて、教育訓練を実施
提出した訓練計画書に沿って教育訓練を実施します。助成金の支給は研修後となりますので、いったん、訓練費用の全額を立て替え払いする必要があります。

④ 訓練終了日から2ヶ月以内に、助成金支給申請書を管轄の労働局に提出
訓練が終わったら、必要な書類を添付して管轄の労働局に支給申請をおこないます。この際、訓練終了の翌日から数えて2ヶ月以内に支給申請をしないと、助成金を受給できませんので注意しましょう。

⑤ 労働局による審査を経て、助成金支給が決定される
審査が終わると、労働局より支給決定通知書が届けられます。その後2週間ほどで、指定した口座に助成金が送金され、受給完了となります。

人材開発支援助成金の支給申請の注意点

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人材開発支援助成金を利用する前に注意したいことがいくつかあります。こちらも押さえておきましょう。

■訓練コースによって利用できる条件が異なる
まず、訓練コースの計画書を作成する時、各コースによって条件が違うという点です。特に注意したいのが、特定訓練コースです。このコースは訓練計画書を提出する前に、実践型人材育成システム実施計画等を申請し、厚生労働大臣の認定をもらう必要があります。各コースの概要については、厚生労働省のホームページで確認するとよいでしょう。

《参考》
厚生労働省のホームページ

■実施する訓練の内容が本当に支援を受けられるか、申請前に再確認を
また、対象となる経費についても確認が必要です。訓練の内容に応じて、そもそも助成金の対象となるのかといったことや、どの費用までが助成の対象になるのかといったことを、申請前に労働局に確認しておきましょう。

■申請から支援を受けるまで数ヶ月かかる
どの助成金でもそうですが、支給申請書を提出してから受給を受けるまでに数ヶ月かかります。特に、人材開発支援助成金にかかる支給申請の審査は、早ければ2ヶ月、長ければ1年半ほどかかることがあります。この点はしっかりと認識しておきましょう。

《参考》
厚生労働省ホームページ;人材開発支援助成金
(特定訓練コース、一般訓練コース、教育訓練休暇等付与コース、特別育成訓練コース、人への投資促進コース)

まとめ

人材開発支援助成金は、人材開発にかかる一部費用を助成することで、企業の人材育成をサポートする制度です。業種問わずに受給できる点で活用しやすい特定訓練コースや、一般訓練コースを含めて8つのコースに分かれています。

コースごとに、経費助成、賃金助成が用意されているうえ、生産性要件という要件を満たす場合、追加の受給が可能となります。訓練計画書の作成を含め、手続きに時間と手間がかかったり、受給までの期間の立て替えたりするなどの負担はかかりますが、人材の成長を促す機会を作りやすくなる制度としてのメリットがあります。上手に活用して企業の成長につなげてみてはいかがでしょうか。


《ライタープロフィール》
Toru(ライター)
MBA予備校や転職メディア向けのブログ、コーチング本など、主にビジネス系の書籍や記事のライティングを行う。