
従業員の声が必要不可欠!職場環境改善の効果とは?

社員にとって、職場は日々の大半を過ごす場所でもあります。もしも職場が快適でなかった場合、ストレスの原因となるばかりか集中力が散漫となり、生産性の低下にも繋がりかねません。
職場環境が適したものでなければ、社員が業務に対してモチベーションを維持できず、結果として離職を選択することも考えられます。少子高齢化により、今後ますます人材の確保が重要となるからこそ、人材の流出を食い止める施策は必須といえるでしょう。
今回は、社員の満足度に関する大切な要素のひとつである職場環境についてと、その課題を洗い出すためのアンケート作成のコツについて解説します。
目次
職場環境とは

職場環境とは、照明や温度といった室内環境や上司や部署内での人間関係など、社員を取り巻く環境のことです。
快適な職場環境づくりを促進するべく、政府は1972年に労働安全衛生法を制定しました。この第3条には、「事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。」とあり、職場で働く社員の安全と健康を確保することが求められるようになりました。
さらに1992年5月には労働安全衛生法が改正され、快適な職場づくりが事業者の努力義務とされますが、第71条の3では、快適な職場環境の形成のための措置として4つの指針が示されています。
1.作業環境の管理
空気環境、湿熱条件などの作業環境が不十分で不適切な場合、社員の疲労やストレスを高めるため、業務に従事する社員に適した状態に維持管理する。
2.作業方法の改善
不自然な姿勢での作業や大きな筋力を必要とする作業は、社員の心身の負担が大きいため、負担が軽減されるよう作業方法の改善を図る。
3.心身の疲労の回復を図るための施設・設備の設置・整備
業務による疲労を速やかに回復できるよう、休憩室といった疲労を回復できる施設の設置や設備を図る。
4.その他の施設・設備の維持管理
洗面所、トイレなど社員の職場生活において必要となる施設・設備については清潔で使いやすい状態となるよう維持管理する。
昨今のテレワークの増加により、職場環境についての意識が希薄になりがちな今こそ、テレワーク環境も含めて見直しが必要かもしれません。
職場環境の効果

では、快適な職場環境は具体的にどのような効果をもたらすのでしょうか。
ストレスの軽減
2017年度に厚生労働省が公表した「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、仕事で強いストレスを感じているのは全体の58.3%にも及んでいることがわかりました。ストレスの内容はさまざまですが、オフィス環境が原因となっているケースも考えられます。
集中して業務に取り組みたい社員がいる一方で雑談が聞こえてくる、空調が強過ぎて体調を崩す、といった些細なことであっても、ストレスに感じる社員は多くいます。結果として心身の不調につながるケースも見られるため、職場環境の改善は社員を守るために欠かせない取り組みといえます。
対人関係の改善
同調査では、強いストレスの内容として「対人関係」を挙げる人は30.6%にも及びます。1日の大半を共に過ごす人が強いストレスを感じれば、仕事へのモチベーションは著しく下がることも考えられるでしょう。
近年、さまざまな企業では部署の枠を超えた社員同士のコミュニケーションを増やそうと、固定の席を設けず、社員が好きな席で作業ができる「フリーアドレス」を導入する企業が増加しています。フリーアドレスはコミュニケーション促進に有効であるほか、自由に席を選べることから対人トラブルがあった相手と距離を置くこともできます。
また、些細な悩みを上司に相談できる場として、個人面談やチャットツールなどを導入することも良好な職場環境を実現するために必要です。
離職率の低下
厚生労働省の第13次労働災害防止計画(計画期間:2018年度~2022年度)によれば、「ストレスチェック結果を集団分析し、その結果を活用した事業場の割合を60%以上にする」ことが目標として掲げられています。2015年2月より労働安全衛生法の改正により、労働者が常時50名以上の全事業者(法人・個人)において、ストレスチェックの実施が義務化されましたが、その目的は、メンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)にあります。
社員は一見健康であっても、仕事のストレスや不満により本人も気づかないところで心身の不調に陥っていることも考えられます。職場環境の改善の一環として、ストレスチェックを行うことは社員の健康維持に有効であり、心身の不調により離職せざるを得ない状況の回避にもつながります。
職場環境に関するアンケートの実施方法

職場環境の改善には、まず現状を把握し、そこからどんな施策が求められているのかを検討していく必要があります。そのためには職場で働く社員の生の声が欠かせません。率直な意見を聞くために、アンケートの実施は有効です。
業務の合間にアンケートに回答するのは、社員によっては面倒くさいと感じることもあるでしょう。企業側は、ひとりでも多くの社員から回答を集める工夫をしなければなりません。そこでアンケートを作る際のコツをご紹介します。
ツールの使用
紙でアンケートを作成・集計するのは手軽ですが、社員の人数によっては大きな負担となります。一方でWebアンケートは自動で回答結果を集計してくれるほか、回答数の確認もできるため集計を行う手間も削減できます。ツールによってコストや機能が異なるため、事前に比較をしたうえで使用するツールを選ぶと良いでしょう。
無記名での回答
社内アンケートを回答するうえで、記名式にすると率直な意見が言いにくいため、回答に抵抗を示す社員が出てきたり、率直な意見が集められないこともあります。その一方で誰が回答しているか全くわからない状態では、回答の傾向が分析できないというデメリットもあります。年齢や性別、勤続年数などある程度の情報を集めながら、アンケートを実施するのが最適です。
質問文作成時のポイント
質問文の書き方によっては、回答に偏りが生じます。
たとえば「福利厚生の一環で導入している◯×スポーツジムの法人利用ですが、経費削減のために解約を検討しています。こちらに賛成ですか?反対ですか?」といった質問文があった場合、従業員には「ほぼ解約が決定しているのでは?」と受け取られる可能性があります。これは質問製作者側の「解約に賛同してほしい」という意図が垣間見えるため、公正な質問とは言えません。
改善する場合は、「福利厚生の一環で導入している◯×スポーツジムの法人利用ですが、利用率が伸び悩んでいます。そのため、解約し、別の形で健康促進につながる制度の導入も検討しています。◯×スポーツジムの法人利用の継続と、新たな制度の導入では、どちらが望ましいですか?」といった形で、中立な立場での質問文の作成を行いましょう。
選択式と記入式のバランス
記入式で自由に回答できる質問は、回答者から具体的な意見を募る際に有効です。その反面、記入式ばかりでは回答者への負担が大きく、回収率が下がる可能性もあるでしょう。なるべく選択式の質問を中心にしたうえで、最後に自由回答欄を設けると回答の時間を短縮しつつ、具体的な意見を聞くことができます。
また、「回答例:健康につながる制度があると嬉しいです」など、回答例を示しておくのも良いでしょう。無回答を防ぐことができます。
告知方法
より多くの回答を集めるためにも、朝礼や社内SNSなどの多くの人が目にする場で積極的にアンケートの実施を告知していきましょう。その際にアンケートの所要時間を併せて伝えると、「それくらいだったら休憩時間にすぐに答えられる」と判断した社員が答えてくれるようになります。
職場環境改善のヒント

社員からの意見を集められたら、実際に職場環境の改善に取り組みましょう。寄せられた意見ひとつひとつに応えようとすると、多大な金銭面でのコストや時間が求められます。限られたコストの中で改善をするためのヒントを押さえておきましょう。
ハード面とソフト面
職場環境は設備周りや照明をはじめとするハード面、人材教育やストレスケアなどのソフト面と多岐に渡ります。いずれかに偏ることがないよう、バランスを見ながら職場環境を整えていくことも重要です。
ハード面に比べ、ソフト面はコミュニケーションの活性化をはじめ、交流の場を設けることで改善に向かうため取り組みやすい分野でもあります。まずは部署間を超えて良好なコミュニケーションをとることができるよう、イベントの企画から始めるのもおすすめです。
助成金
厚生労働省では、条件を満たした中小企業を対象に「中小企業労働環境向上助成金」を支給しています。たとえば評価制度の導入や研修の実施、人間ドックやメンタルヘルス相談などを導入した場合、一定の助成金を支給することが決められています。
そのほかにも受動喫煙防止対策や所定労働時間の短縮を実現した企業への助成金など、職場環境改善の取り組みにより得られる助成金の制度は幅広く定められています。条件を確認し、可能なものは申請をすることで取り組みへのハードルは下がることでしょう。
まとめ
職場環境は快適だと思う基準が社員それぞれ異なるため、誰もが納得できる職場環境を整えることは困難です。それでも、社員が気持ちよく健康に働けるような職場環境があれば、業務効率の向上や離職率の低下といった成果を得られるのも事実です。
職場環境改善のヒントは、実際に働く社員の声から聞くほかありません。まずはアンケートで率直な意見を募りつつ、限られたコストや時間の中で少しでも良い職場環境にできるよう取り組むところから始めてみてはいかがでしょうか。