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“いま、自分がやりたいこと”を大切にしたい仕事とバスケを両立して気づいたこと

“いま、自分がやりたいこと”を大切にしたい仕事とバスケを両立して気づいたこと

今回は、バスケットボールの実業団チーム『アステム湘南ウィクトリアス』のキャプテンとして日々の練習や子供たちにバスケの指導をしながら、派遣社員として運輸会社の事務職で就業している梅澤奈歩さんにお話を伺いしました。いまでも大切にしている恩師の教えや、仕事とバスケのバランスを上手に取りながらも新たな環境を楽しむ秘訣を聞いてみました。

仕事を通して身についた
社会人としての責任感と新たな楽しさ

“いま、自分がやりたいこと”を大切にしたい仕事とバスケを両立して気づいたこと_1

― まずはこれまでの経歴をおしえてください。

学生時代はずっとバスケ中心の生活だったこともあり、大学卒業後もスポーツに関わる仕事に就きたいなと考えていました。そこで、チームメイトに好評だったマッサージの経験を活かして、1年間アルバイトでマッサージサロンに勤務しました。仕事自体にやりがいはありましたが、アルバイトという立場は一通りの仕事を覚えると、それ以上業務範囲が広がるということはなく、仕事への物足りなさとこのままでいいのだろうかという焦りを感じていました。
そこで2社目はより責任ある立場になることを優先し、正社員でSEの仕事に就き、社会人としての経験を積みたいと考えました。

― SEとマッサージはかなり畑違いのお仕事ですが、苦労はありましたか?

それはもう苦労の連続でした。。。笑 資格を取って専門用語を覚えましたが、やはり実際の業務となるとゼロからのスタートで。最初は事務処理から仕事を覚えていき、2年目からサーバーの組み立てに関わらせてもらいました。未経験でこの業界に飛び込んだ私にとっては新鮮で責任感のある仕事ばかりでした。ただかなり激務だったこともあって、転職を考えていた時にたまたまバスケ関係の知人から、神奈川県で実業団のバスケチームが新設されるという話を聞きました。

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― それが現在所属されているクラブチームですか?

はい。そのアステム湘南ウィクトリアスのチーム代表と話をしているうちに、大学以来離れていたバスケにまた本格的に取り組みたいと思うようになり、入団を決めました。そして、バスケと仕事の両立を模索していた際に、代表の奥さんが働いている“派遣”という働き方を紹介してもらってこの働き方を選択しました。

― いまの派遣先ではどんなお仕事をされているんでしょうか?

製品の出荷日を決めたり、トラックの手配をするのが私のメイン業務です。離れた工場や運送会社の方と電話でやり取りをする機会が多くありますが、最近は名前も覚えてもらったりなど親切にしてもらっています。直接お会いすることはありませんが、電話でフランクに色々な話をしてくれるので人とのつながりを楽しみながら、仕事に取り組むことが出来ています。

“徹底的に考えること”
仕事にも活きている価値観がつくられた
恩師との出会い

“いま、自分がやりたいこと”を大切にしたい仕事とバスケを両立して気づいたこと_2

― バスケの練習はいつしているのですか?

就業後は週4回、19:00からチームで練習をしています。土日もやっているのでほぼ毎日ですね。(笑) ですので、職場を定時にあがれるということは私にとって外せない就業条件です。派遣先の方も理解してくれているし、ここはみなさんそんなに遅くまで残っていないので帰りやすい雰囲気ですね。ただ、バスケを通して学んできたことは少なからず仕事に向かう姿勢にも影響していると思うんです。

― バスケを通して学んできたことを聞かせてください!

バスケを始めたのは小学校3年生の時で、他のクラスの知らない子から「お父さんがやっているミニバスチームに入らないか」といきなり声をかけられました。その当時から身長が165㎝あったからだと思います(笑)。強豪のミニバスチームで鍛えられ、中学も3年間バスケ部で過ごしました。高校ではバスケをやるつもりはあまりなかったんですが、友人からバスケで県1位の高校の体験練習会に行こうと誘われとりあえず行ってみることに。そのセレクションも兼ねていた練習会で合格し、部活動クラスに入学することになりました。ここで、価値観を大きく変えてくれた恩師との出会いがあったんです。その恩師は部員自身が“徹底的に考えること”を大事にしている方でした。ただメニューをこなすのではなく、なぜやる必要があるのかを一人一人が考えて練習に取り組まなければならなかったし、けがをした人は誰よりもメンバーの動きを見て研究するよう指導されました。見た目も(もちろん怒っても)恐い人ではありましたが、雰囲気が良くなるよう率先して笑わせてくれるなどON/OFFの使い分けの面でも、人間性の面でも、学ぶことが多かったです。

― “徹底的に考えること”を指導されたんですね。

その当時は言われた通り、とにかく必死に考えていましたが、振り返ってみると社会人になってからも活きている教訓がたくさんあります。例えば、仕事は初めての事ばかりなのでわからないことがあるのは当たり前。ただそれを「わからない」と言ってすぐに人を頼ったり、助けてくれるのを待っているのではなく、まずは説明してもらったことの中から自分なりに想定するようにしています。なぜこの作業が必要なのか、過去に同じような仕事はなかったか、この指示の意図は何か、というように自分なりに考えたうえで行動するようにしています。

キャプテン、そして指導者としても
バスケの楽しさを感じ伝えていきたい

“いま、自分がやりたいこと”を大切にしたい仕事とバスケを両立して気づいたこと_3

― 改めて、バスケにはどんな魅力があるのでしょうか?

結局、大学でも週6の練習で4年間プレーをしてきたので、学生時代はバスケをしているのが当たり前でした。社会に出て実業団チームに入った時に改めて、バスケの魅力に気づきました。
チームではキャプテンとして、点を取る面白さを感じています。ポジションも変わり自分が点を取らなければならなくなった時に初めて、ここでどう動くかをチーム全体を見ながら自分なりに考えるようになりました。ひとつひとつのプレーに向かう姿勢も変化し新たな楽しさを発見しましたね。

― 現在チームのキャプテンをされているということですが、それ以外にも関わっていることはありますか?

チームの運営母体である総合型地域スポーツクラブの小中学生向け「バスケットボールアカデミー」でお手伝いをしています。教えることとプレーをすることは別だと思いましたし、自分の勉強にもなるかなと手を挙げました。最近では小学生、中学生に口コミが広がり、生徒の人数も増えてきました。

― プレーヤーであるだけでなく指導者でもあるんですね。教える立場になってみてどう感じますか?

特に苦戦していることは伝え方です。指導者として人に何かを教えたことはなかったので、まずは「どうやったら興味を持って話を聞いてくれるか」、そして「初めて聞くバスケ用語やプレーの仕方をどう表現すると子供たちが理解し動けるようになるか」が課題でした。長くプレーヤーでいると自分の頭ではわかっているけれど、わかりやすい言葉で、経験の浅い子供に伝えるとなると上手くいかないことも多いです。その中でも心掛けているのは、“楽しく”やること。やっぱり人は楽しいと思えた時に覚えも早くなると思うので。話をまったく聞いてくれなくてたまに怒りたくなる時もありますけどね(笑)。指導者として学んでいることは、チームの練習にもしっかりと活きています。チームには10代の子から年上の人もいて、バスケをしてきた環境や目指してきたこともそれぞれ違うので、伝え方を工夫して話すようにしています。

“自分がやりたいこと”に
まっすぐになるということ

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― 今後バスケと仕事それぞれで目指していることや考えていることはありますか?

チームとしての大きな目標は、女子のプロリーグに出ることです。とは言え、まだ立ち上げたばかりなので、まずは関東リーグの1部に行きたいと思っています。
仕事で大事にしたいことは、自分が“いま何を第一優先にしたいのか”ということです。以前は、「正社員にならなきゃいけない」という焦りだけでSEの仕事に就きましたが、いまは「派遣で仕事をしながらバスケも両立できている」この環境に充実感を感じています。雇用形態が大事だったのではなく、いま何をやりたいかという観点から優先付けすることが自分にとっては大切だということに気づきました。仕事を頑張って覚えることで、できる仕事の範囲を広げていきたいです。