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パラレルキャリアとは?

パラレルキャリアとは?

「パラレルキャリアという言葉を聞いたことはあるが、実際どういうものか、詳しく知らない」。そんな人が多いのではないでしょうか。「パラレルキャリア」は、人生100年時代といわれる昨今において、注目されている働き方の1つです。実際、どのような働き方で、どんなメリットがあるのか。注目されている背景や、今後パラレルキャリアにチャレンジする際に、気をつけるべき注意点などについて解説します。

パラレルキャリアとは

パラレルキャリアはいつ頃、どのようにして生まれたのか。「副業」とはどう違うのか。まずは、そこから説明していきます。

ピーター・F・ドラッカーが提唱
「パラレルキャリア」という言葉自体は、ここ数年でよく耳にするようになったのではないでしょうか。元々は、マネジメントの父であり、経営学の大家のピーター・F・ドラッカーが自身の著書『明日を支配するもの』で提唱した働き方です。

「並行」という意味を持つ「parell(パラレル)」と、「経歴」の意味を持つ「carrier(キャリア)」による造語で、1つの仕事や企業にとらわれずに、複数の仕事(ボランティアも含め)を持つことを意味します。

副業との違いとは?
「パラレルキャリア」は「副業」とどう違うのでしょうか。この2つの言葉は、よく比較されますが、厳密には、どちらも細かな定義はありません。「パラレルキャリア」は、一般的にスキルアップやキャリア形成、社会貢献など、収入以外での自己実現や新たな居場所づくりを目的に活動することを言います。一方、「副業」は、新たな収入や稼ぎを目的に、本業以外の仕事をおこなうことに使われます。つまりは、キャリアアップや社会貢献が含まれない働き方のことです。

パラレルキャリアが注目されている背景とは

パラレルキャリアが今日のように注目されるようになった背景には、おもに2つの理由があります。1つは、個人の労働寿命が企業の平均寿命を大きく上回ってしまったことです。

日本企業の平均寿命は、東京商工リサーチの調査によると、23. 3年。一方、個人(労働者)は、平均寿命の伸びと、少子高齢化や経済成長の鈍化により、昔のように年金受給だけでは生活を維持できなくなり、70~80代まで働くとすれば50~60年の職業(労働)寿命となります。このように、個人の労働寿命が企業の平均寿命の約2倍となるため、今後は1つの企業でキャリアを終える働き方ではなく、複数回学び直しながら、別の企業や職業に就くことが当たり前になりつつあります。

もう1つの理由は、国による副業・兼業の後押しです。国は「働き方改革」の1つの施策として、2018年に副業・兼業を普及促進するために、企業が就業規則を作成する際のひな型にする厚生労働省の「モデル就業規則」を改正しました。具体的には「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という条項が削除され、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」といった文言が加えられたのです。これによって、同年副業を解禁する企業が一気に増えました。

これらの理由により、労働者(個人)は会社に依存するのではなく、自律かつ主体的にキャリアを築いていくことを考えるようになり、本業として並行してキャリアを築く、パラレルキャリアが注目されるようになったと考えられます。

パラレルキャリアをおこなうメリット

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実際、パラレルキャリアをおこなうと、どんなメリットが得られるのでしょうか。代表的なメリットを紹介していきます。

スキルや本業では体験できない経験が積める
会社の仕事だと、自分の与えられた役割でしか経験できませんが、パラレルキャリアだと、自分の意思で決められるので、制約なくいろいろなことを経験できます。また、本業以外にもチャレンジできるため、意欲次第で幅広いスキルや経験を積むことが可能です。

人脈が広がる
パラレルキャリアは、会社という枠を飛び出して、幅広いことに挑戦できるので、これまで接したことのないコミュニティに参加すれば、異なる世代や価値観、役職、働き方の人たちと触れ合うことができ、人脈を広げられます。ここで培った人脈は、これからの人生や長いキャリアにおいては、不可欠なものになる可能性があるので、意識して活動するのがいいでしょう。

やりたいことができる
本業は、自分のやりたい仕事ではなく、これまでの経験を活かした業務や役割を任せられているという人も少なくありません。そんな人の場合は、本業は「CAN(できること)」「MUST(やらなければならないこと)」の要素が大きかったのではないでしょうか。パラレルキャリアでは、自分主体で仕事や業務を選べるので、本業ではなかなかできなかった「WILL(やりたいこと)」にチャレンジできます。

軽い気持ちで始められる
転職だと、簡単には辞められないので、始めるのも慎重になってしまいます。しかし、本業を持ちながらのパラレルキャリアであれば、ボランティアからでも始められるので、未経験のジャンルでも、チャレンジできます。それに、やってみたものの、自分が思い描いていた内容と違う場合は、次のやりたいことにすぐに切り替えることが可能です。やりたいという気持ちがあれば、すぐにスタートできます。

時間管理能力があがる
パラレルキャリアは、本業と両立しながら取り組むため、本業もパラレルの仕事も、どちらも効率的に行うことが求められます。そして、本業とパラレルキャリアを並行して続けられれば、知らないうちに時間管理能力が高まっているでしょう。ただし、手を抜くことだけはやらないように気をつけましょう。パラレルキャリアが忙しいからといって、本業をおろそかにすると、上司や同僚、部下などの周りから評価が下がり、パラレルキャリア自体を応援してもらえなくなります。

パラレルキャリアを始めるポイント

何から始めていいか分からない人のために、押さえておくべき3つのポイントを紹介します。

やりたいことを決める
自分がやってみたいことや興味のあることを洗い出してみます。収入や時間、経験の有無などに関係なく、一度思いつくことをリスト化してみましょう。

自分の強みを理解する
次に自分の強みを明確にします。「普段、飽きずに取り組んでいること」や「人によく褒められること」など、これまでのことを振り返ったり、周りの人に聞いてみたりして、自分の強みを書き出して、認識してみましょう。

目標と計画を立てる
「やりたいこと」と「自分の強み」を整理できれば、次は「いつまでに、何を目指すのか」、目標とスケジュールを立てましょう。目標とは、パラレルキャリアを身に付けて、将来的にはどういう自分でありたいのか、あるいはキャリアを築きたいのか。そして、それをいつまでに実現するのか。細かく目標とスケジュール(計画)を立てなければ、いつまで経っても、前には進めません。

パラレルキャリアを始める前の注意点

最後に、パラレルキャリアをスムーズに始めるための注意点を紹介します。

会社の就業規則を確認する
パラレルキャリアが認められている場合は問題ありませんが、企業によっては禁止されている場合もあるので、事前に会社の就業規則で確認しておきましょう。たとえ、パラレルキャリアの制度は認められていても、「競業により自社の利益が害される場合」や「業務上の秘密が漏洩する場合」などは、パラレルキャリアが制限されたり、禁止されたりすることがあるので注意しましょう。

本業に影響がでないようにする
パラレルキャリアが本業と同じくらいの仕事ボリュームになってしまうと、休むことなく働き詰めになってしまいます。心身ともに負担がかかり、本業にも大きな悪影響を与えてしまうことになりかねません。そうなると、会社によっては「労務上の支障がある」と見なされて、副業が取りやめになる可能性も出てきます。自身のキャリアを広げるために始めたパラレルキャリアが、本業に支障が出て、居場所がなくなっては本末転倒です。十分注意しましょう。

時間管理と収入をおろそかにしない
パラレルキャリアを始めるには、自由にできる時間を確保していく必要があるため、時間管理が大切になってきます。本業に100%力を注ぎながらも、効率化できるところは、段取りよく進めるようにしましょう。また、安定した収入を得ることで、パラレルキャリアにチャレンジできるところもあるので、本業でしっかり稼ぐことも重要です。

まとめ

これからの時代は、60年近く働き続けることになるので、1つの会社に依存するのではなく、自分でキャリアを築いていくことが大切になってきます。その1つのやり方として、複数の仕事を掛け持ちしながら、次なるキャリアを築けるパラレルキャリアという働き方があります。

なお、派遣会社には週に数日、数時間限定の仕事を扱っているところもあります。それゆえ派遣スタッフとして活動しながら、パラレルキャリアを実現することも可能です。副業やパラレルキャリアの規定については、派遣会社により異なるため、事前に確認するようにしましょう。

 



<ライタープロフィール>
西谷 忠和

新卒・中途採用、進学などのメディアにて広告制作ディレクターを経験後、2007年に独立。現在は、フリーのライターとして採用サイト、求人メディアの広告、採用のオウンドメディア、人材サービス企業のインナーコミュニケーションなどのコンテンツ制作に携わっています。またライフワークとして、20~50代のビジネスパーソンやフリーランスのキャリア支援をおこなうキャリアコンサルタントとしても活動中。