時短勤務とは?育児・介護の短時間勤務制度について解説

時短勤務とは?育児・介護の短時間勤務制度について解説

少子高齢化が進む現代、家庭のさまざまな事情から「フルタイムでの勤務が難しい」という声が多く聞かれます。時短勤務とは、育児や介護と仕事の両立をはかるため、フルタイム勤務の方が1日の勤務時間を通常より短縮する働き方のことです。人口減少により企業の人手不足が深刻化するなか、人材確保の対策のひとつとして注目されています。

法律で内容が定められているため、対象者などの条件が設けられている制度ですが、名前は聞いたことはあっても、詳細がイメージできないという人もいるかもしれません。

そこで本記事では、時短勤務の概要やルールをはじめ、メリットやフルタイム勤務に戻す際の注意点などを解説します。時短勤務について理解を深めたい人は、ぜひ参考にしてください。

時短勤務とは

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時短勤務とは、仕事と育児・介護の両立を目指し、1日の勤務時間を短くする働き方を指します。正式には「短時間勤務制度」といい、育児介護休業法という法律によって所定労働時間が1日6時間(正確には5時間45分から6時間まで)に短縮されています。時短勤務の概略・フレックスタイム制度との違い・給与に対する内容は、以下の通りです。

育児介護休業法の制度概要

育児介護休業法とは、育児や介護をおこなう人に向けて、仕事との両立を支援するために制定された法律です。育児介護休業法の制定前は、やむなく休業や退職し育児や介護に専念するケースも珍しくありませんでした。しかし同法が制定されたことで、育児・介護をおこなう場合にも、仕事を継続しながら柔軟に働ける事例が増えました。

また令和3年1月からの改正により、育児・介護の休暇が時間単位で取得できるようになっています。

以前の取得単位は、1日や半日単位であったため、より柔軟性が増したといえます。
留意する点としては、この時間単位の取得を利用する場合に、勤務の途中で一旦退社し、育児や介護を済ませたあとに業務に戻るいわゆる「中抜け」が、適用されるというわけではないことです。

ただし、法律で中抜けそのものを禁止しているわけではないため、法を上回る制度として「企業が独自に中抜けルールを制定」することは可能です。

【参考】:厚生労働省|「子の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります!」

フレックスタイム制度との違い

時短勤務とフレックスタイム制度の違いは、日々の労働時間です。時短勤務の労働時間は、基本的に1日6時間であり、出退勤の時間も同じです。

対するフレックスタイム制度では、1ヶ月など一定の期間内で「勤務すべき総労働時間」があらかじめ定められており、総労働時間を守れば出退勤の時間は自由に決められます。

企業が「コアタイム」を設けている場合には、その時間に必ず出社していれば出退勤の時刻は柔軟に調整できます。(「コアタイム」とは、必ず出社していなければならない時間帯のことをいいます。)
また時短勤務とフレックスタイム制度は、趣旨の違う制度であるため、企業にフレックスタイム制度の導入があれば併用が可能です。両制度を併用できれば、より柔軟に働けるでしょう。

【参考】厚生労働省|フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き

短時間勤務制度が導入された理由

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短時間勤務制度が導入された理由として、急速な少子高齢化があげられます。従来の日本企業では、仕事と家庭の両立を支援する制度がほとんどありませんでした。
少子化による労働人口が減少する一方、人生100年時代とともに、要介護認定者も増加が見られている昨今、働きながら育児や介護も両立していく制度は、企業・労働者の双方にとって重要な意味をもちます。
育児や介護に関する法整備は、他の労働諸法よりも遅く、この短時間勤務制度(所定労働時間の短縮措置)も2009年に制定されたものです。以降現在にいたるまでさまざまな改正を重ね、今のかたちになりました。
企業の短時間勤務制度の導入率も上がってきており、最新の「令和4年度雇用均等基本調査」内、育児のための所定労働時間の短縮措置等の各種制度の導入状況をみると「短時間勤務制度」を導入している企業は71.6%となっています。(前年度68.9%)

 参考:厚生労働省|育児介護休業のあらまし
    厚生労働省|令和4年度雇用均等基本調査
 

時短勤務のメリット・デメリット

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時短勤務には柔軟に働けるメリットがある一方、デメリットも存在します。本章では時短勤務のメリット・デメリットを解説します。

メリット

時短勤務における最大のメリットは、仕事と家庭の両立です。法整備以前であれば、仕事を諦めて育児や介護に専念しなければならなかった人も、制度を利用することで離職せずに働き続けることができます。
また、ワークライフバランスの実現もメリットのひとつです。育児・介護を担う労働者は、プライベートでも多忙になりがちです。時短勤務によって1日の勤務時間が減り、その分を育児や介護の時間に充てられることは、心身の負担の軽減につながります。

長期的に見れば、仕事を辞めなくてよいため、育児や介護が落ち着いた際にフルタイム勤務に戻れるといった精神的な「安心材料」を得られる点も、時短勤務のメリットだといえます。

デメリット

時短勤務者は、フルタイム勤務者より労働時間が少なくなるため、収入の減少は避けられません。
また有給休暇も、勤務日数や労働時間に応じて減る可能性があります。具体的には、「週4日以下の勤務」かつ「1週間の総労働時間が30時間未満」の人が、法律的に有給休暇が減少する対象になります。(※会社独自のルールで、有給休暇を減らさない場合には対象外)賞与についても、フルタイム時より減額となるケースが多いといえます。

また、企業によっては労働時間が限定される分「責任の重い業務から外される」「昇進の機会が減る」といった可能性もあります。

フルタイムでの仕事や立場に「やりがい」を感じている人にとっては、デメリットとも言えるでしょう。

短時間勤務をおこなうには

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短時間勤務を希望する場合、ご自身が対象者に当てはまるかを確認することから始まります。条件や申請方法を確認し、勤務先へ申し出をしましょう。

育児の短時間勤務

育児における短時間勤務が認められる人は、以下の条件を満たす必要があります。

● 子どもが3歳に満たない
● 1日の勤務時間が6時間を超えている
● 日々雇用される労働者でない
● 育児休業を取得しながら勤務する者ではない
● 労使協定により適用除外となっていない

また短時間勤務を実施できる期間は、一般的に「子どもが3歳になるまで」です。(ほかに、3歳以上の兄弟姉妹が存在しても対象)

近年では、さらに両立しやすいように、企業の独自ルールによって「子どもが小学校に入学するまで」などと定めるケースも見受けられています。

介護の短時間勤務

介護における短時間勤務が認められるのは、以下の条件を満たす人です。

● 日々雇用される労働者でない
● 2週間以上「要介護状態」の対象家族(※)に対し、介護をおこなう

※対象家族とは、同居別居は問わず、以下の人を指します。
配偶者(事実婚も可)、父母・祖父母(義理も可)、兄弟姉妹、子、孫

また介護における短時間勤務では、実施期間のほかに、回数も定められています。具体的には、対象家族1人に対し、適用開始日から3年以上の期間で2回以上取得できます。年数に上限は設定されていないため、3年をこえる時短勤務も可能です。

【参考】厚生労働省|短時間勤務等の措置とは

勤務先への申請方法

育児・介護で時短勤務を希望する場合には、勤務先に申請し、承認してもらう必要があります。勤務先に対する申請の流れは、以下の通りです。

1. 勤務先に対し、時短勤務希望の申し出をする
2. 勤務先から「短時間勤務申請書」をもらう
3. 短時間勤務申請書に必要事項(開始日・期間など)を記入し、勤務先に提出する
4. 勤務先から「短時間勤務取扱通知書」を受け取る

短時間勤務取扱通知書には、時短勤務時の条件が記載されるので、内容に相違がないかチェックするとよいでしょう。

【参考】厚生労働省|育児短時間勤務申出書
      厚生労働省|介護短時間勤務申出書

短時間勤務の注意点

短時間勤務を希望する際には、適用除外者への注意も必要です。
先述で「育児・介護での時短勤務」について、それぞれの対象者を紹介しました。しかし条件を満たしても、以下のいずれかに該当するケースでは、短時間勤務の適用除外者になります。

● 雇用されて1年に満たない
● 1週間の労働日数が2日以下である
● 業務体制や仕事の性質上、時短勤務が困難である
(例:客室乗務員、タレントのマネージャーなど)

短時間勤務の適用除外者に該当する場合には、勤務先に対し、可能な限り柔軟な働き方ができるよう相談してみるとよいでしょう。

短時間勤務時の給与について

時短勤務とは?育児・介護の短時間勤務制度について解説_5

時短勤務時は、労働時間が少ない分給与も減額されます。
基本的な計算式は、以下の通りです。

基本給×(6時間÷1日における通常の労働時間)=時短勤務の給与

たとえば、フルタイム時の条件が「基本給20万円」「1日の所定労働時間8時間」という人を例にすると、時短勤務の給与は以下のように算出されます。

20万円×(6÷8)=15万円

残業代について

時短勤務の場合にも、残業をすること自体は可能です。残業代は、フルタイム勤務時と同様に、所定労働時間を超えた分に対して支給されます。たとえば、時短勤務の所定労働時間を6時間と定めている企業の場合、6時間を超えた分が残業扱いになります。

残業代は以下の2種類に分けられます。

● 法定時間内労働…1週間の超過時間が「40時間以内」に該当する残業
(時短勤務者は、1日2時間までの残業が該当)
● 法定時間外労働…上記以外の残業(休日出勤なども該当)

時短勤務者が残業をおこなうケースは、ほぼ「法定時間内労働」に該当すると考えられます。
たとえば「9時~16時(※休憩1時間)」として働く人が17時まで働けば、1時間分の残業代が支給されます。残業代の計算は、フルタイムと同様に、月収を時給換算した金額で算出する流れです。
法定時間外労働としての残業をおこなった場合には、通常時の残業代に対し、25%分が上乗せされます。

短時間勤務からフルタイム勤務へ戻す際のポイント

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時短勤務からフルタイム勤務へ戻す際には、以下の点に配慮することをおすすめします。

● 家庭環境の考慮
● ライフプランの検討
● 勤務先とのコミュニケーション


短時間勤務からフルタイム勤務へ戻す際には、家庭環境への考慮が欠かせません。

時短勤務時には、育児・介護や家事など、家族間で役割や配分が決まっていたケースも考えられます。フルタイム勤務に戻せば、他の家族への負担が増えるなど、家庭環境への影響は避けられません。
加えて、ライフプランの見直しも大切です。各々の重視する内容によって、理想とする働き方が異なるためです。たとえばキャリアアップを目指す人であれば、フルタイム勤務に戻った際、資格取得や研修の時間が発生することも想定されます。家族間で負担しきれない育児や介護は、ファミリーサポートなど外部サービスの力を借りるといった手段を視野にいれるとよいでしょう。

またフルタイム勤務に戻れば、残業などについて以前と同様の働き方を求められる可能性があります。しかし、育児や介護によって対応できない日もあると考えるのが現実的です。

フルタイム勤務に戻ったあとも仕事と家庭を両立するために、日頃から上司やチームメイトと対応について話し合い、コミュニケーションをとる姿勢が求められます。

「育児介護休業法」で定める条件に該当すれば、派遣社員として働く方も短時間勤務制度の対象です。取得を希望する場合は、派遣先ではなく派遣元の会社との手続きになります。
最近では、法律による短時間勤務制度によらず、1日4~6時間の勤務を基本とする「時短派遣」という働き方もありますので、ご自身や家族の生活スタイルにあったものを検討するとよいでしょう。

まとめ

短時間勤務制度の充実によって、仕事と育児や介護の両立がしやすくなりました。これまで「家庭か仕事か」の二者択一で仕事を諦めなければならなかった人にとっては、大きなメリットです。また、企業にとっても、優秀な社員に働き続けてもらえることは、人材難の時代的背景から考えてもメリットになります。
一方で、時短勤務にすると給与が減ってしまうなどのデメリットも存在します。ご自身や家族のライフプランと照らし合わせて、よりよいワークライフバランスが取れるよう、制度の利用を考えていくことをおすすめします。

ライター:西本 結喜(監修兼ライター)
一般企業の人事職8年目。金融業界や製造業界を経験し、業界ごとの慣習や社風の違いを目の当たりにしてきた。現場で得た知識を深めたいと社会保険労務士試験に挑戦し、令和元年度合格。2024年3月、結喜社会保険労務士を開業。

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