派遣スタッフでも部署異動はある? 希望すれば異動できるの?

派遣スタッフでも部署異動はある? 希望すれば異動できるの?

派遣スタッフとして働くにあたり、異動や転勤があるのかどうか知りたいという方も多いでしょう。原則として派遣スタッフには異動や転勤はありませんが、双方で合意がとれている場合や契約期間満了を迎えている場合には、部署異動が可能です。このコラムでは部署異動できる条件や、異動が多い時期について解説します。

派遣スタッフの部署異動(配置転換)・転勤とは?

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派遣スタッフの部署異動(配置転換)や転勤は原則禁止ですが、条件を満たせば可能となります。まずは法律上のルールから見ていきましょう。

派遣スタッフの「部署異動(配置転換)」と「転勤」の意味の違い

「部署異動(配置転換)」は、就業先の部署や仕事内容が変わることを意味します。たとえばA株式会社の人事部門から経理部門に移るといったケースが該当します。一方、転勤の場合は、同じ就業先の中で勤務地が変わることを意味します。A株式会社の東京支店から大阪支店に勤務地が変わる場合、「転勤」という言葉が用いられます。

部署異動や転勤の目的は企業によって異なりますが、一般的には人材育成や適材適所の人員配置、働く人のモチベーション向上などが挙げられます。ただし、部署異動、転勤はともに企業がいつでも自由におこなえるものではありません。労働基準法や就業規則といったルールに沿っておこなわれることになります。

派遣スタッフの部署異動(配置転換)や転勤は原則禁止

派遣スタッフの場合、労働者派遣法により、仕事内容や就業先についての取り決めがあらかじめ労働者派遣契約に記載され、契約書に基づいて業務をおこなうため、原則として部署異動や転勤はできません。これは、契約内容とは異なる仕事に従事させられないように、派遣スタッフを守る仕組みのひとつです。しかし、以下の2つの条件を満たすことで、部署異動や転勤は可能になります。

・双方合意であれば可能
派遣スタッフと派遣先の会社が互いに合意していれば、労働派遣契約の変更が可能です。この場合、部署異動や転勤ができるようになります。双方の合意がなければ、派遣先の会社が勝手に部署異動をさせることはできません。派遣スタッフの場合、正社員のような会社都合による部署異動はないことを覚えておきましょう。

・契約期間が満了していれば派遣スタッフも部署異動可能
派遣スタッフの派遣期間は原則として1ヵ月以上3年以内で労働者派遣契約により定められます。この期間を終える前に部署異動するのは、労働者派遣契約の内容を破ることになり、原則不可能です。しかし、派遣期間が満了し、新たに契約を結び直すタイミングで別の部署や勤務地で働くことはできます。必ず希望が叶うというわけではありませんが、派遣期間の更新時期は部署異動や転勤の希望を伝えるチャンスといえるでしょう。

部署異動で変わること

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ここまでに説明した条件をクリアした場合、派遣スタッフでも部署異動をする可能性があります。このとき、次の4点の変化が生じます。

就業先の部署および指揮命令者

労働者派遣契約では、派遣先の会社名はもちろん、部署名や指揮命令者の部署、役職、氏名を細かく記載する必要があり、異動前と同じ内容では契約できません。部署異動がおこなわれる場合、就業先の部署とともに、指揮命令者も変わるのが一般的です。指揮命令者は、新たな部署で仕事の指示をする役割があり、直属の上司として関わることになるため、部署異動の際は指揮命令者が誰になるのかを確認しておきましょう。

仕事内容

部署異動すると仕事内容も変わります。たとえ入力作業やオペレーターなど、従事する作業のカテゴリー自体が変わらないとしても、異動先の部署の業務に仕事内容を合わせる必要があります。部署異動にあたって労働者派遣契約を結び直すときは、異動後の仕事内容として、あらためて「業務の内容」や「責任の程度」を記載しますので、「思っていた仕事内容と違った」とならないように記載内容を確認することが大切です。

なお、同一の派遣スタッフが複数の業務に従事する場合も、それぞれの業務について労働者派遣契約に記載されます。契約にないと思われる業務を指示された場合は、労働者派遣契約と相違がないか確認をするといいでしょう。

勤務・休憩時間

部署異動にともない、勤務時間や休憩時間が変わる可能性があります。労働者派遣契約の記載事項には始業・終業時刻や休憩時間も含まれるため、異動前との変化の有無を確認できます。なお、契約で定められる勤務時間や休憩時間は、労働基準法や派遣元企業と派遣先企業の労働契約の枠内で設定されます。

抵触日

平成27年9月30日以降に労働者派遣契約を締結した場合、同一の派遣先の事業者において、派遣可能期間を超えて派遣就業することはできません。この派遣可能期間の上限は原則として3年と定められています。この派遣可能期間が経過した翌日のことを「抵触日」といいます。

派遣可能期間は、派遣先の事業所の労働組合等の意見聴取を経たうえで、さらに3年を限度として延長される場合がありますが、この場合も同じ部署で勤務を続けることはできません。たとえば、派遣先の総務課で3年間就業し、労働組合等の意見聴取により派遣可能期間が延長されたとしても、次は総務課以外の部署で就業する必要があります。

時給

部署異動により業務内容が変わると、時給に影響する可能性もあります。2020年4月1日から、派遣スタッフの同一労働同一賃金の実現に向けた改正労働者派遣法が施行され、職務内容などに応じた均等待遇が求められています。労働者派遣契約の記載事項には「賃金」の項目もあり、基本賃金や手当、所定時間外の割増賃金率などが記載されますので、契約書は確認しておくようにしましょう。

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一般的な異動時期はいつ?

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多くの企業で、部署異動や転勤といった人事異動は3月に実施されています。これは、3月末を決算期にしている企業が多いことに関連していると考えられます。ただし、決算期をいつにするかは企業の任意です。決算期の違いや、半期決算の状況などによって、3月以外の時期に人事異動が実施されることもありえます。

たとえば鉄道業界では、新年度の混雑が落ち着きをみせる7月頃に人事異動が実施されることが多く、アパレル業界の場合は、セールの時期を外して2月と8月に人事異動を実施するのが一般的です。派遣先の業態によっても人事異動の時期は異なるため、気になる場合は確認しておきましょう。

なお、派遣スタッフの人事異動は労働者派遣契約法に基づきおこなわれますが、正社員は会社の方針で人事異動の辞令が出ます。たとえば幅広い業務経験を積むために、「ジョブローテーション」として1~3年周期で異動が実施されることもあります。派遣スタッフと正社員の部署異動のサイクルが異なる場合、派遣スタッフとして勤務をしている期間中に、正社員の上司などが異動する可能性もあります。

派遣スタッフの働き方は、労働者派遣契約による合意がポイント

派遣スタッフは仕事内容が厳密に契約で定められているため、契約満了までに合意なく部署異動や転勤をすることはありません。派遣先企業から人事異動の提案があった場合は、その内容をきちんと確認し、希望に合えば新たな部署で勤務することができます。自ら部署異動を希望する際は、最初に締結した派遣契約が満了するタイミングで、申し出るといいでしょう。

ライター:小林義崇(ライター/元国税専門官)
2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、相続税調査や確定申告対応などに従事。2017年にフリーライターに転身。著書に「すみません、金利ってなんですか?」(サンマーク出版)、「確定申告 得なのはどっち?」(河出書房新社)がある。

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