派遣スタッフももらえる!? 休業手当・休業補償の条件や金額を解説!

派遣スタッフももらえる!? 休業手当・休業補償の条件や金額を解説!

派遣先企業の都合で急に自宅待機を言い渡されたり、就業中にケガをしてしまい、仕事を休まざるを得なかったり、さまざまな事情で当初予定していた収入が減額してしまうのは、大きなダメージです。そんな時、労働者の助けとなるのが、「休業手当」と「休業補償」です。もしもの時のために、「休業手当」と「休業補償」を受けられる条件や支給額について確認しておきましょう。

「休業手当」と「休業補償」はどう違う?

休業手当・休業補償とは、雇用主が労働者を休業させた場合に労働者に支払う金銭のことをいいます。言葉は似ていますが、所得としての取り扱いなどが違いますので、注意が必要です。例えば、休業手当は給与所得とみなされるため所得税が課せられますが、休業補償は労働者災害補償保険法に基づく保険給付であるため、非課税となります。それでは「休業手当」と「休業補償」について、詳しく見ていきましょう。

休業手当とは?

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休業手当とは、使用者(会社側・事業主側)の責任で労働者を休業させた場合、労働者に対して支給する手当のことを指します。この場合の休業とは、労働者が所定労働日に働く意志と能力があるにもかかわらず、労働することができない状態のことをいいます。

休業手当は、労働基準法第26条で「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。(条文の原文通り)」と定められています。

「使用者の責」とは「会社の都合で」という意味です。会社の都合で労働者を休ませる場合、一方的に賃金を支払わないと労働者の生活に支障をきたしてしまいます。派遣労働者の場合、労働者の生活を守るのは派遣元企業となりますので、休業手当の支払い義務は派遣元企業にあります。

派遣スタッフが休業手当を支給される条件とは?

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「休業」とは正確には、社員に就業義務がありながら、会社からその義務を免除されている日のことを指します。多くの場合は休業中も何らかの給付金が支払われます。

休業手当の支給理由「使用者の責に帰すべき理由」とは?
休業手当について定める労働基準法第26条では、「使用者の責に帰すべき事由」つまり、使用者の都合で労働者が就業できない理由がある場合は、休業手当を支払う義務が発生するとされています。では、「使用者の責に帰すべき事由」とはどのようなケースなのでしょうか。具体的な例を見ていきましょう。

・機械の故障、検査/原料、材料の不足/電気等の燃料の供給不足
・運転資金の不足等による操業の全部または部分的停止
・使用者が法令や就業規則等に照らし合わせて労働者を不当に解雇、出勤停止した場合

これには、経営不振や業績悪化の場合や経営、管理上の障害なども含まれます。
ただし、労働安全衛生法に基づき、労働者の健康を考慮して休業させた場合や、天災事変などの不可抗力で公共交通機関が利用できない場合などは、休業手当の対象にはなりません。次に、休業手当をもらえないケースを詳しく解説します。

派遣スタッフで休業手当がもらえないのはどんな時?

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雇用形態にかかわらず、以下のような場合においては、休業手当は支払われません。

<台風などの天災で公共交通機関が利用できない場合>
原因が、事業の外部で発生しており、事業主が最大の注意を尽くしても避けることのできない天災などの場合は、「使用者の責に帰すべき事由」にないため、使用者は休業手当を支給する義務は免れます。

<労働義務がない日(土日祝日など会社で定められた休日)>
就業規則で土日祝日が休日と定められている場合、期間中の休日分の手当は発生しません。

<労働の意思そのものがない場合>
ストライキや有給休暇中など、労働の意思がない場合は支給対象となりません。

<労働能力を喪失している場合>
ウイルスや感染症などに感染し、労働する体力等がない場合の休職・休暇についても対象外となります。

<労働者の健康を考慮して休ませた場合>
労働安全衛生法第68条では「事業者は、伝染性の疾病その他の疾病で、厚生労働省令で定めるものにかかった労働者については、厚生労働省令で定めるところにより、その就業を禁止しなければならない」と定めていて、「使用者の責に帰すべき事由」に該当しません。
ただし、在宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることなどを十分検討し、休業の回避について最善の努力を尽くしていないと認められた場合には、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当する場合があります。

休業補償とは?

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休業補償とは、労働者が業務上の負傷や療養のために休業した場合、労働者災害補償保険法に基づいて保険給付がなされることを指します。ここでいう休業とは、業務上のケガや病気によって労働者に働く能力がない状態のことをいいます。労働基準法第76条では、「使用者は、労働者の療養中平均賃金の100分の60以上の休業補償を行わなければならない」と定めています。

参考:生活を支えるための支援のご案内(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000625688.pdf

派遣スタッフが休業補償を支給される条件とは?

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仕事をする人は誰でも、労働保険(労災保険、条件を満たせば雇用保険)の加入が義務付けられており、派遣スタッフも加入は必須です。そのため、派遣スタッフも条件を満たせば休業補償を受けられます。では、休業補償はどのような場合に支給されるのでしょうか。その条件を整理してご紹介します。

<休業補償の基本条件>
休業補償は業務中や通勤中にケガをしたり病気になったりした場合、賃金を受けられなくなった4日目から受給することができる補償給付です。休業補償給付を受けるためには、次の3つの条件を満たす必要があります。

労働災害や通勤災害に遭った社員が療養していること ※医師の診断書が必要です。
その療養のために就業できないこと
休業しているため、会社から賃金を支給されていないこと ※通院などで出勤できており、平均賃金の60%以上の賃金が支払われている場合、休業補償は給付されません。
なお、休業補償は、休業によって無収入になった状態を補塡(ほてん)するために労災保険から支給されます。支払うのは派遣元企業(派遣会社)でも派遣先企業でもないため賃金ではなく、非課税となります。

> 派遣スタッフに労災が適用されるか知りたい

派遣スタッフがもらえる休業手当・休業補償の計算方法は?

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休業手当の計算方法

休業手当を正確に算出するには、まず平均賃金の算出方法を知る必要があります。休業手当の目安額は「収入の60%」ですが、正確な金額を算出するには計算式に当てはめてみます。まず、ここでいう収入とは「平均賃金」のこと。労働基準法では、人間らしい生活ができる賃金として支払うことを目的としています(実際に毎月もらっている給料と金額は異なるので注意してください)。

平均賃金の計算方法は以下の2つが定められていて、どちらか金額が高い方を採用します。

①原則【算定事由が発生した日以前の3ヶ月間の賃金の総額÷その3ヶ月間の暦日数(※)】
(※)出勤日数ではありません。

②最低保障額【算定事由が発生した日以前の3ヶ月間の賃金の総額÷その期間の実際の労働日数×60%】
「賃金の総額」には、通勤手当や残業手当、皆勤手当などが含まれます。一方で、3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賞与などは含まれません。

<時給制・日給制の場合>
時給制や日給制の場合、暦日数に対して実際の労働日数が少なくなるケースが多く、原則の計算式に当てはめると不利益が生じます。そのため、②の最低保障額の式に当てはめます。
なお、休業手当は賃金として支給されるため、社会保険料や雇用保険料、所得税が天引きされます。実際の振込金額との差が生じる場合もありますので注意しましょう。

<1日の一部だけを休業した場合>
例えば、通常は6時間勤務の派遣スタッフが、派遣先企業の都合により4時間勤務に短縮された場合などは、休業手当は支給されるのでしょうか。通常、その日に発生した賃金が平均賃金の60%以上であれば、休業手当は支払われません。逆に60%に満たない場合は、その差額が支払われます。条件によって支給の有無は異なるため、よく分からない場合は派遣元企業(派遣会社)へ問い合わせることをおすすめします。

参考:労働基準法ワンポイント解説(厚労省)
https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/var/rev0/0109/4772/280823-1.pdf

休業補償の計算方法

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休業補償は1日につき、「給付基礎日額の80%」が支給されます。厚生労働省が定めている計算方法に沿って計算してみましょう。

<1.給付基礎日額を計算する>
「給付基礎日額」は原則として、労働基準法の「平均賃金」に相当します。「平均賃金」とは、事故などの事象が発生した日の直前3ヶ月間に支払われた賃金の総額をその期間の暦日数で割った、1日あたりの賃金額のこと。式で表すと以下のようになります。

【算定事由が発生した日直前の3ヶ月間の賃金の総額÷その3ヶ月間の暦日数(※)】
(※)出勤日数ではありません。
「賃金の総額」には、通勤手当や残業手当、皆勤手当などが含まれます。一方で、3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賞与などは含まれません。

例えば、以下のケースで計算してみましょう。

3ヶ月間で支払われた賃金の総額=60万
暦日数=91日

60万÷91日=6,593.406 ※小数点第3位以下切り捨て

1円未満の端数がある場合はこれを1円に切り上げるため、このケースの場合の給付基礎日額は、6,594円となります。

<2.休業(補償)給付を計算する>
休業1~3日目は待機期間であり、休業補償は支払われません。4日目以降について、労災保険から支給される1日あたりの給付金を計算します。
休業補償80%の内訳は、①休業給付(労災保険給付)60%+②特別支給金20% となっています。
給付基礎日額が6,594円の上記の場合、以下のような計算となります。

①休業給付(労災保険給付)=6,594×60%=3,956.4
②特別支給金=6,594×20%=1,318.8

1円未満の端数がある場合はこれを1円に切り上げるため、このケースの場合の休業補償は以下のとおりです。

①3,957+②1,319=5,276円

なお、労災保険から休業補償を受けられない待機期間中(休業1~3日目)については、労働者の平均賃金の60%以上を会社が支給することになっています。
そのため、仮に就業中にケガをして7日間休業する場合の給付総額は、以下のようになります。

最初の3日間=6,594×3日=19,782円
残りの4日間=5,274×4日=21,096円
7日間の合計=19,782+21,096=40,878円

<手続きの注意点>
万が一、就業中に事故や災害などの労災が起きてしまった場合、労災保険の手続きは原則的に労災に遭った本人またはその家族がおこなうのが原則です。しかし、従業員の負担を避けるため、企業が手続きを代行する場合もあります。派遣スタッフの場合、まずは派遣元企業に相談しましょう。

参考:休業補償の計算方法を教えてください。(厚労省)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei34.html

派遣スタッフが休業手当をもらうための手順

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派遣スタッフも休業手当を受け取ることができますが、その請求相手は派遣先企業ではなく、派遣元企業(派遣会社)となります。休業手当は賃金として扱われるため、派遣スタッフ自身が特別な手続きをする必要はありませんが、手当が支給されるまでの流れをひととおり把握しておきましょう。

<手順>

  1. 休業の理由について、派遣元責任者に説明を求める
  2. 派遣労働契約書で、派遣先の都合による休業の場合、派遣元会社は派遣労働者に対してどのような補償をすることになっているのかを確認する
  3. 派遣元会社に休業手当の総額を確認する

<支給方法>
休業手当は「原則、所定の賃金支払日に支払うべき」とされています。普段の給与と同様の支払い方法で、まとめて支払われるのが一般的です。

もし休業手当が支払われない場合、事業者には30万円以下の罰則に処せられることが労働基準法に記されています。また、休業手当の支払いを求める裁判を起こされた場合、付加金の支払いが課されることもあります。

派遣スタッフも休業手当・休業補償の理解と活用を!

雇用形態にかかわらず、労働者が安全・安心して就業できるようにすることが企業と国の責務です。何らかの事情で働けない時間・期間がある場合は、休業手当や休業補償などの制度が利用できることを知っておきましょう。不安なこと、困ったことがあったら、まずは派遣元企業(派遣会社)へ相談しましょう。

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ライター:監修者
みやごかよ(コピーライター/ライター)
複数の広告制作会社にてコピーライター、プランナー、制作ディレクターを経験後に独立。現在はフリーランスとして活動中。「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく~」という井上ひさしさんの言葉を大切に日々ライティング中。猫と植物とアートをこよなく愛する一女の母。

わん(監修者)
弁護士として日々訴訟対応、法律問題問合せ対応、法務教育、契約審査などに携わる。雇用終了時のトラブルといった労働問題のほかに、債権回収やローン契約や社内法務教育に関する案件を経験。弁護士として法務教育の講師を実施していた経験を活かし、「分かりやすい」を常に意識した文章を作成するように心がけている。

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