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「チャンスを。」stories

必要とされる意味を被災地で自覚、今後はデジタル活用でさらに多くの想いに応えたい

田口 歩実
田口 歩実(Ayumi Taguchi)
㈱スタッフサービス・ホールディングス 
取締役 兼 執行役員(経営企画担当)

派遣スタッフが被災地で「ありがとう」と言った意味

私は1994年12月にスタッフサービスに入社しました。
当時は大阪に本社があり、私も大阪市内で一人暮らしをして、市内の事務所に通勤していました。
それから間もない1995年1月、阪神淡路大震災が起こりました。早朝、経験したこともない揺れに飛び起き、慌ててテレビをつけたら、信じられない光景が次々と映し出され始めました。
神戸の事務所は当然クローズ。しばらくは大阪でも安否確認などの作業に追われていました。
それから1週間がたった頃、ゼネコンのお客様からご依頼があったのです。「建物の損壊状況の調査に入るので、その調査報告書をワープロで打てる人を6名派遣してほしい」。私はなかなか電話も通じない中、なんとか「行きます」と言ってくれる派遣スタッフを6人探し出しました。
そして当日。大阪から神戸に行こうとしても、電車では途中までしか行けませんし、車も道路の崩壊や陥没がひどいので無理。陸路は諦めて、大阪港で漁船を借りて、三宮まで運んでもらうことにしました。神戸では港も大方が崩落していましたが、なんとかメリケン波止場で船をつけられるところを見つけてもらって上陸。
地震の爪痕もまだ生々しい駅近くの待ち合わせ場所でタイムカードを手に待っていると、それらしい方がひとり近づいてきました。それらしいと思ったのは、その方が私の方に向かって歩いてきたからで、そうでなければわからなかったでしょう。というのは、普通にワープロ業務をするような姿や雰囲気ではなかったからです。
でも、そこではっと気づきました。その派遣スタッフも被災しているのです。水道の復旧もままならない中では身だしなみが整えられるはずはありません。ぽつりぽつりと到着した派遣スタッフは誰もが同じような様子でした。話を聞くと、崩壊した町の中、まだ埃が舞う中を「30分歩いてきました」「1時間自転車に乗ってきました」
ところが、「大変でしたね、こんな時に申し訳ありません」と言う私に、派遣スタッフはタイムカードを受け取り、一様に頭を深く下げて言うのです。「ありがとうございます」 
そこで思い知ったのは、その派遣スタッフの方々もその時、仕事を失っていたのだということです。町の様子を見るかぎり、明るい未来は簡単には思い描けない。それでもこれからも生きて、生活を再建していかなければならない。その状況で、仕事がないという不安はどれほど大きなものか――。
公的な職業紹介機関も機能しない中、私たちは、生活していくために必要な仕事を一つ作ることができました。「チャンス」を手にしてもらえたのです。
私は実は人材派遣業がどういうものかを深く知りもしないまま入社したのですが、ここで初めてこの仕事の尊さを身をもって知ることができました。

田口 歩実

制約があっても「諦めないでいい」と言えることがやりがい

阪神淡路大震災後の経験をきっかけに、私は人材派遣という仕事の意義を深く感じるようになりました。
人が生きていくためには「衣食住」が必要だと言われますが、「衣食住」を得るためにはお金が必要。お金を得るためには、働かなくてはなりません。
自分自身で仕事を探すことができ、希望の仕事を見つけ出して就職できる方ももちろんいらっしゃいます。でも、それができない方も本当に多いのです。
人材派遣に登録する方の多くは、何らかの理由を抱えています。家族のケアのために時間の制約がある、家業の関係で働ける季節が限定される、健康上の不安を抱えているなど、その理由は様々です。
そういう制約がある方々に「諦めないでいい」と言えること。「働こう」という想いをかなえる「チャンス」を提供できること。それは私のやりがいであり、この仕事を続ける原動力になっています。
「人の可能性を信じ、一人ひとりの働こうという想いと、働く機会を最も多くつなぎ続ける」が私たちの「Mission」です。価値観も生き方も働き方も多様化している今日、私たちは自らの使命がますます重要になっていることを自覚し、派遣スタッフにも企業のお客様にもさらに満足していただけるように、サービスの向上に努めています。

田口 歩実

デジタル活用で、誰もがより良い「働く」に出会える社会を目指す

現在、特に力を入れている全社的なDX(デジタルトランスフォーメーション)は、そのための取り組みの一つです。
大きく変わり続ける時代においては、求められる仕事の内容も働く人の動機や理由も加速度的に多様化しています。デジタル活用を進めることにより、私たちはより的確に、あらゆる境遇・環境の人の「働こう」という想いに応え、求められている場所に的確に結びつけることができるようになります。
派遣スタッフの方々に対しては、それぞれの経験や適性をよりきめ細かく把握して、希望に即した仕事をご紹介することができます。お取引先様に対しては、業務内容をより深く理解して、適切な人材をご案内することができます。マッチングまでの時間も短縮されます。
仕事の内容が多様化しているということは、それだけ「チャンス」も多様化しているということ。フルタイムでは働けない何らかの理由がある方や経験が少ない方でも、求められている場所、適性を発揮して輝ける場所がきっとあります。場合によっては、これまで想像もしていなかったチャレンジや新たなスキルの獲得が可能になるかもしれません。そのような機会を一つでも多く探し出し、つなぎ続けていくのが私たちの役割です。この役割を全うするうえで、デジタル活用は大きな力になると確信しています。
これからも私たちは人の可能性を信じて、誰も排除することなく、「働こう」と思うすべての人に「チャンス」を創り出してまいります。

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