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変形労働時間制とは?メリットやデメリット・届出について解説

変形労働時間制とは?メリットやデメリット・届出について解説

日本の労働時間は労働基準法において、1週間40時間、1日8時間と定められています。それでも繁忙期にはやらなければいけない仕事が増え、止むを得ず労働時間が1日8時間を超えてしまう状況もあるでしょう。

内閣府の報告「働き方の変化と経済・国民生活への影響」によれば、1980年以降長期的な推移としてひとり当たりの労働時間は減少傾向にあるものの、日本労働組合総連合会が2015年に発表した「労働時間に関する調査」では、20歳~59歳の男女雇用労働者(正規労働者・非正規労働者)3,000名のうち、59.2%が残業を命じられたことがあると回答。

法定労働時間を月・年単位で調整し、労働時間が超過したとしても時間外労働として扱わなくても問題ないようにするのが変形労働時間制です。この制度は、一体どのような制度なのでしょうか。今回は、そんな変形労働時間制について、メリットやデメリットとともに、導入時のポイントを交えて解説します。

変形労働時間制とは?

変形労働時間制とは?メリットやデメリット・届出について解説_1

変形労働時間制とは、1ヵ月以内の一定期間を平均し、1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲内において、特定の日、もしくは週に法定労働時間を超えて労働させることができる制度のこと。

先述の通り、労働基準法によって労働時間は「原則1日8時間、1週40時間」と規定されています。しかし、長期間の夏休みがある幼稚園・学校や年度末が多忙になる建設業など、繁忙期と閑散期がある業種では、労働時間が月や週ごとにバラつきが発生します。その際に変形労働時間制を導入していれば、法定労働時間を月単位・年単位で調整できるため、繁忙期において勤務時間が1日8時間以上に増加したとしても時間外労働にはなりません。

なお、変形労働時間制は、労働日や労働時間を一度設定した後、原則として後から変更は不可となっており、突発的な残業の発生が想定される業種のための制度ではありません。

類似する制度との違い

変形労働時間制は使用者が労働時間を臨機応変に運用する制度である一方、フレックスタイム制や裁量労働制は労働者がそれぞれに合った形で労働時間をフレキシブルに運用する制度です。類似していることから、混同しやすい制度でもあります。今一度、それぞれの違いをはっきり理解しておきましょう。

フレックスタイム制

フレックスタイム制も変形労働時間制の一種ですが、フレックスタイム制は、労働者の裁量で出社時間・就業時間を決めて働くことができる制度です。一定の期間において必ず勤務が求められる時間帯(コアタイム)に勤務していれば、自由に出勤・退勤することが可能です。

裁量労働制


裁量労働制は労働時間制度のひとつであり、労働時間を実労働時間ではなく一定の時間とみなす制度を指しています。研究・開発職や新聞社の編集者など、裁量労働制は業務の性質上、明確な業務時間をあらかじめ決定することが難しい分野の業種に適用されています。フレックスタイム制のようにコアタイムもなく、日々働くべき時間帯も決められていません。

変形労働時間制とは異なり、労働基準法で定められている「1日8時間、1週40時間」のルールが適用されないため、働き手の裁量によって労働時間は変化します。自由な働き方として注目されている反面、過重労働の温床になりやすいというデメリットも存在します。

シフト制(交代勤務制)


シフト制(交代勤務制)は、24時間稼働している病院や工場、コンビニやスーパーなど年中無休の店舗などで、複数の労働時間帯で社員を交代制で勤務させる制度です。1日の稼働時間が8時間を超える場合は残業代の支給が必要になります。

変形労働時間制のメリットとデメリット

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変形労働時間制のメリットは、以下の点にあります。

【企業側のメリット】残業代の削減

変形労働時間制は閑散期の労働時間を法定労働時間より短くするかわりに、繁忙期の労働時間を法的労働時間より長くするといった調整を可能にします。

残業代はあらかじめ定められた労働時間を基準として算出されます。たとえば変形労働時間制によって繁忙期の所定労働時間を10時間と定めておくことで、通常であれば発生する2時間分の割増賃金の対象となるところ、法定時間内扱いとなるため割増賃金の対象でなくなります。

【企業側のメリット】人員リソースの最適化

変形労働時間制では閑散期と繁忙期に最適な時間で社員に働いてもらうことができるため、人員リソースの最適化が可能になります。最小限の労働力で効率的に仕事を進められるようになるでしょう。

一方で、変形労働時間制にはデメリットも存在します。

管理作業の発生

変形労働時間制は、日や週によって異なる所定労働時間を持つため、勤怠管理が非常に複雑になり、勤怠管理者にとって煩雑な作業が増えます。さらに、一部の部署にだけ変形労働時間制を適用する場合、同じ企業でありながらも就業時間が異なる状況が発生します。適用されている部署が業務を終えたとしても、他部署との連携が必要になる場面では変形労働時間制の効果が薄れてしまう可能性があります。

【タイプ別】変形労働時間制

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変形労働時間制は、労働時間を精算する単位によって種類がわかれており、「1年単位の変形労働時間制」「1カ月単位の変形労働時間制」「1週間単位の変形労働時間制」の3種類があります。

なお、厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査」によると、変形労働時間制を採用している企業は全体の60.2%で、前年よりも2.7%増加していることが明らかになっています。内訳をみてみると、1年単位の変形労働時間制を採用している企業は35.3%、1か月単位の変形労働時間制を採用している企業は22.3%となっています。

1年単位の変形労働時間制

年単位の変形労働時間制は、GWやお盆休み、年末年始に業務が忙しくなるなど、年間での繁忙期と閑散期がはっきりしている業種に導入しやすくなっています。たとえば繁忙期だけ労働時間を増やし、閑散期に労働時間を減らして年単位で調整します。

1年単位の変形労働時間制を採用するためには、年間の休日カレンダーを作成し、労使協定を締結して労働基準監督署に届出することが求められています。1ヶ月単位での変形労働時間制に比べ、導入するまでの事務手続きは複雑です。「対象期間が3カ月を超える場合、年間の労働日数の上限は280日以内」、「1日の労働時間の上限は原則10時間」、「1週間単位での労働時間の上限は原則52時間」など、細かな条件を満たしているかチェックする必要があります。

1ヶ月単位の変形労働時間制

月単位の変形労働時間制では、1ヶ月以内の一定の期間、1週間当たりの労働時間が平均40時間(特例事業の場合は44時間)を超えないという条件を満たす場合、1日8時間もしくは1週間40時間の法定労働時間を超える労働が可能になります。

月の前半が忙しく後半にはゆとりがある状況であれば、前半の就業時間を午前8時から午後7時(休憩1時間を除く10時間)、後半を午前9時から午後4時(同6時間)といったように、変則的な労働時間を定められます。また、変形する期間は「1カ月以内」であるため、1ヶ月以内であれば2週間単位、4週間単位でも設定できます。

1週間単位の変形労働時間制

1週間の中で曜日の繁閑にあわせて労働時間を調整し、期間を平均して法律の範囲(週40時間)におさまるようにする制度です。規模30人未満の小売業、旅館、料理・飲食店の事業のみが対象となっています。

変形労働時間制の届出

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変形労働時間制導入のためには、一定の条件を満たしたうえで所轄の労働基準監督署への届出が必要です。

現状の把握

変形労働時間制を導入するためには、まず勤務実態を把握するところから始めましょう。繁忙期と閑散期を具体的に知らなければ、変形労働時間制を効果的に運用することができません。

労使協定の締結

週単位、もしくは年単位の変形労働時間制を導入する場合は「労使協定」を締結する必要があります。1ヶ月単位での変形労働時間制の場合は「労使協定」か「就業規則」または「就業規則に準じたもの」に以下のような事項を定める必要があります。

・対象労働者の範囲
・対象期間と起算日
・特定期間
・労働日と労働日ごとの労働時間
・労使協定の有効期間

労働基準監督署へ届出


労使協定を締結したら、「労働基準監督署」へ届出をおこないましょう。届出には厚生労働省が指定した、「1年単位の変形労働時間制に関する協定届様式第4号(第12条の4第6項関係)」が必要になります。この書類は厚生労働省のホームページでダウンロードが可能です。

まとめ

業務の忙しさによって労働時間を変更できる変形労働時間制は、上手く活用できればメリハリのある働き方が可能となり、従業員にとっては大きなメリットとなるでしょう。企業側も残業代の削減や人員リソースの最適化などが図れます。

導入を前向きに検討する際は、社員・企業それぞれの理解を深めることも忘れてはなりません。もしも導入に向けた準備で不明点があれば、労働基準監督署に問い合わせをすると良いでしょう。