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「ダイバーシティ&インクルージョン」とは? 推進に必要なこと

「ダイバーシティ&インクルージョン」とは?              推進に必要なこと

以前は、人材の多様性といえば「ダイバーシティ」という言葉が使われていましたが、10年ほど前から「インクルージョン」という言葉も使われるようになりました。今では、この2つを組み合わせて「ダイバーシティ&インクルージョン」と表現されることが多くなっています。今回は、人材開発の新たな潮流ともいうべき「ダイバーシティ&インクルージョン」を見ていきましょう。

ダイバーシティとインクルージョン、何が違うの?

「ダイバーシティ(Diversity)」は、日本語では「多様性」と訳され、一人ひとりの“違い”を指します。多様性といってもピンとこないかもしれませんが、分かりやすい例でいえば、性別や人種、年齢、障がいの有無など外見上の“違い”のことです。ですが、“違い”は目に見えるものばかりではありません。形のないもの、例えば経験や学歴、文化、宗教なども“違い”のひとつですし、価値観やライフスタイルなども“違い”のひとつです。そうした多様性を認める考え方が「ダイバーシティ」です。
一方、「インクルージョン(Inclusion)」には、「包含」「包括」「一体性」といった意味があります。ここから、「お互いを異なる存在として受け入れ、各個人の能力や経験、スキルを活かすこと」を指すようになりました。
つまり、「ダイバーシティ」はそれぞれの差や違いを意識(認識)すること、「インクルージョン」はそれぞれの価値観や考え方を尊重することなのです。

・ダイバーシティ……一人ひとりの多様性を認める考え方
・インクルージョン……一人ひとりの個性を受容し活かす考え方

「ダイバーシティ&インクルージョン」という考え方へ

現代社会はグローバル化が加速し、経営環境や市場は劇的に変化しています。ニーズの多様化と製品ライフサイクルの短縮化によって新しい製品・サービスが次々に誕生し、消えていきます。このように目まぐるしく変わっていく経営環境や市場で生き残り、新たな価値を創出するには、従来とは異なる発想や考え方が求められます。
そのためには、「ダイバーシティ」と「インクルージョン」の両方が必要となります。なぜなら、ダイバーシティに取り組み、多様な人材を集めたとしても、その人材を受け入れ、活かすインクルージョンがなければ、その人材が辞めていってしまうからです。
一人ひとりが仕事に積極的に関わる機会を持ち、各自の経験や能力、考え方をお互いに認め合い、活かされている状態。多様性を受容することで、一人ひとりが活躍できる機会を増やすこと、それが「ダイバーシティ&インクルージョン」の考え方なのです。
つまり、ダイバーシティとインクルージョンをバランスよく両立させることが、人材の定着につながるということです。

ダイバーシティ&インクルージョンを推進する

「ダイバーシティ&インクルージョン」を推進していくうえでの最大の障壁は、組織内に存在する暗黙的な排斥や差別です。長年、同じ組織に所属し、同質の人間、同質の考え方に馴染んできた人々にとって、自分たちと異なる外見、異なる考え方をする人はまさに異分子です。鎖国を続けてきた日本が開国し、初めて外国人に接するようなものです。
それでは、どうすれば、お互いの差や違いを認識し、価値観や考え方を受容して認め合うことができるようになるのでしょうか。ここでは、ダイバーシティ、インクルージョンそれぞれのあるべき姿と施策を考えてみましょう。

ダイバーシティのあるべき姿と施策

ダイバーシティのあるべき姿は、多様性を受け入れてたくさんの人が働ける状態を創り出すことです。それには、個々人の事情やスキルに応じた労働環境を整備する必要があります。代表的な施策には次の3つが挙げられます。

・定年退職の延長
・女性、障がい者、外国人の積極採用
・時短勤務や在宅勤務など多様な働き方の整備

生き生きと働ける職場、働きやすい環境づくりがダイバーシティのあるべき姿を実現させます。そのためには、個々人の事情や持っているスキルなどだけでなく、性別や年齢、価値観などを飛び越えて、一人ひとりが尊重された働きやすい職場や環境づくりをしていくことが大切です。

インクルージョンのあるべき姿と施策

インクルージョンのあるべき姿は、ダイバーシティでの多様性を受け入れたうえで、その多様性を持つ一人ひとりの個性を活かすことです。そのためには一人ひとりを理解すること、そしてどのような業務で個性やスキルを発揮できるかマネジメントすることが重要になってきます。インクルージョンのあるべき姿を実現するには、主に次のような施策があります。

・目標設定は画一的に立てるのではなく、それぞれの強みを伸ばすような目標にする
・積極的に組織に参加できる機会をつくる
・多様性を受容する組織文化を醸成する

インクルージョンで大切なのは一人ひとりの個性を受け入れ、その人がどのようにしたら能力を十分に発揮できるかを考えることです。それには、画一的なマニュアルは適しません。Aさん用取説、Bさん用取説というように、オーダーメードのようにきめ細やかなマネジメントが必要です。そうすれば、従業員のモチベーションも上がり、離職率低下につながるでしょう。

インクルージョンで大切なのは一人ひとりの個性を受け入れ、その人がどのようにしたら能力を十分に発揮できるかを考えることです。それには、画一的なマニュアルは適しません。Aさん用取説、Bさん用取説というように、オーダーメードのようにきめ細やかなマネジメントが必要です。そうすれば、従業員のモチベーションも上がり、離職率低下につながるでしょう。

「ダイバーシティ&インクルージョン」の考え方が広まり認知されることで、一人ひとりの個性や能力が引き出される環境が整っていきます。周りに認められることで、自分の居場所があると感じられ、自信ややりがいにつながります。個人が輝けば、組織や社会全体も生き生きと活発化していくことでしょう。各自が持っている能力を最大限発揮できれば、全体の業務効率も上がり、生産性も向上していきます。